クリスタル・ロード 0048 魂の、ずれ?
母さんやリーシャたちへのお土産と言っても、何が良いんだろう?
食べ物か、装飾品か? 好きな物かな。
「何が良いんだろう? 母さんの好きな物ってなんでしたっけ?」
「お前からなら何でもいいと思うぞ」
などと父さんは適当な事を言う。
「え~~~~?」
「この街なら少し珍しい物も有るしな、いろいろ見て回るか」
自分たちの町は実用本位の物が多く、安くて丈夫な物、質は良いが地味な物がメインだがこちらは色合いが豊富で、装飾的な物が色々ある、お土産には良さそうだ。
でも何を選んだらと思うと、迷う 自分にセンスなど無いしと。
カップやら花瓶、クッション、ブラシやアクセサリーなどあるにはある。
でもどれが良いやらさっぱりわからない、自分がもらうとしても何でもいいかなと思ってしまうから、決めようがない。
悩みつつ歩いていると、隣の店の前に服が飾ってあって、ピンクなど華やかでおしゃれな物でレースなど付いた、向こうではあまりない品だ。
エプロンも、スカーフなども同様で、ヘアブラシなども上品で繊細、貴族的だが値段はそれほどでない。
「贈り物ですか? どのような品をお探しで?」
いきなり聞かれるが、何と言ったらいいのか。
「これの母親への物なんですがね」 父さんが代わりに答える。
「お母様へですと、服ならこちらはどうですか?」
薄いピンクで裾に少しレースがあり、腰には薄めの赤のベルト? 他は刺繍ありか。
「エプロンもセットならお安くなりますし、こちらなどは?」
それは赤い厚手で、胸当て、ポケット付き、こちらも華やかだ。
「母さんはこの色、嫌いですかね?」
「嫌いとは聞いたことが無いぞ、向こうの服は大体地味だからな、いいんじゃないか? たまには明るい色で」
それならと両方買うことに、サイズは父さんが確認済みだし、まかせた。
他にヘアブラシとカップも、どれか気に入らなくても他でカバーをと、ついでに自分達用のカップをデザインの近い物で、お揃いのように。
他はリーシャ達の・・ 鉢植えの青や赤の花とその種や、スカーフ、アクセサリーなど、思ったより早く決まって、包んでもらった。
「よっしゃー、 お土産は決まったな、さて美味い物を探すか~」
「まだ夕食には早いですって、昼から飲む気で?」
「そういや宿を決めて無かったな、あのへんでいいか」
近くにいくつか宿があるので、すぐ決めてしまおうと父さんが入っていく。
後は料理・・・プラス酒だな。
荷物を抱えてついていくと、カウンター前に父さんがいて、脇の階段にはお年寄りが重そうな荷物を持って上がろうとして、難儀している。
「部屋有ったぞ、決まりだ」
「父さんこっちの荷物も頼みます」
と自分の荷を渡し、自分は階段のおばあさんの方を手伝う事にする。
「あの、持ちますよ」
「おや、すまんねえ助かるよ、坊や」
割と重い荷物でこれはお年寄りにはきつそう、両手で抱えて階段を登っていき、部屋まで運び、ふうと息をつく。
「ありがとうよ」
懐から財布を出そうとしているので、断ろうとすると手が止まる。
「ん? んん? 坊や・・・」
じっとこちらを見ている。
両手を伸ばして頬にあてると、顔を近づけた。
「あんた、魂がずれとるね、しかも体からはみ出とる?、ん?」
は? この人なんかとんでもないことを言い出したぞ。
「んん? しかも魂がもう一つ、ずいぶん小さく弱い? ん?」
「は? あの~」
「坊や、この頃忘れっぽくなったり、思い出せない事無いかい? 道に迷ったりは?」
思い出せない? そう言われると・・そんな気が 何かしなけりゃならないような
「そ・う ですね、 なんだかそんな・・感じが・・?」
「やっぱりかい、何でこんな小さい子が・・」
そんなに小さいかな、それほどでもと思うが、
「治してあげようね、じっとしてな」
手で顔を挟んだまま、額を付けてくると、目をつぶって、小さな声で唱え始める。
「あ、あの~」
「しっ 、じっとしてな 私は元呪術師でな、魂を扱ってたからね」
また呪文を唱えだすと、なんだか頭の中が冷えて来るような気がして、霧が晴れていくような空気が澄んでいくイメージが広がって行く。
絡まった頭の中がほぐれて、まとまっておさまり、体になじんで・・静まった。
「魂・身・同・波・・・・一」
一瞬頭の中が光って、収まった。
「ふう」
額を離して息をつく、 なんだかくらくらするが、すっきりした気分だ。
「これでいいだろ、今晩は怖い夢を見るかもしれんが、受け入れるんだよ、そうすりゃ坊やの為になる、・・どうしても不安なら私の所に来な、あと3日はここにいるから」
そう言って財布から取り出した小銭をくれる。
「これはさっきのお礼だよ、わたしゃ疲れたから寝るよ」
と、すぐ部屋に入ってしまったので、お金を返せなかった。
ま、いいか、 しかし魂がずれてた・・とは? ?? もう一つの魂?
明日、聞くとするか。
その晩はやはり予想通り、父さんは『祝勝会と依頼達成祝い』と称して酒を浴びるように飲み、自分は苦しくなるほど食べることになった。
そしてその晩、夢を見ることに。




