クリスタル・ロード 0046 またもやトラブル?
やっと他の街が出てきます。
主役の 初めてのお使い のようです。
街から出る定期便の馬車と一緒に行くことにする。
魔物や盗賊などの危険を考えるとなるべく固まっていくのが普通で、馬車には護衛が付いているし協力し合うのが良いので。
馬に乗って遠出は久しぶり、この馬は気性が荒く遠乗りには向かなかったがフレアが来てからはずいぶん落ち着いて良い馬になっている。
もともと体格が良く、スタミナもスピードも有るから落ち着きがあれば優秀なのだ。
半日は走り続けられるが今は歩いているので、隣町程度余裕で行ける。
夕方までには着くだろうし、急げば日帰りも可能だろうが依頼の結果次第か? 遅くなったら泊まることになるだろうな。
街の近くは緑も多くのどかな様子で、魔物などの危険は少なく問題ないだろう。
「そうだ父さん、あの魔物襲来の件はどうなりました?」
「ん? あれか~」
渋い顔をしている、やはり捜査は進展せずかな?
「あの4人パーティ、グレングリフだったか彼らの疑いはほぼ晴れたが、襲来の原因はさっぱりわからん、陰謀なのか自然発生かどうかも、な、」
やはりそうなるか、自分もあの後何度かこっそり見に行ったけど、変わったところは何もなかったと思う、沢を少し降りては見たがいつもと変わらないと感じた。
「ただな、あの魔獣たちに妙なところがあったのはわかった」
顔を近づけ、声を小さくしている、 機密事項だろうか?
「あいつらは街に入り、襲撃が終わると街を抜けて反対の門から出た、門は閉めてあったが獣を出すため衛士達は仕方なく開けることになった、しかし野生ではこれは妙な動きだ、普通、退却の際は入ったところから戻ろうとする」
そうか、街を突き抜けたって出られるとは限らない?
「前方には何があるか不明だろ? 入ったところは一度見ている、少しでもわかるところを選ぶのが本能的に正しいはずだな? 人間の住処ならなおさらだ、なぜあいつらは本能に逆らったか? これではまるで作戦行動だ」
作戦? 意図があるのか? でもボスをやられて指揮が無くなったはずの後、街を突っ切った? まだ指揮官がいたのか?
「不思議だろ? だからわからん! お前の仕留めた狼たちもだ、どこから入ったのか、なぜあれほどの数が他の人に見られなかった? いつからいたのか?」
「ニワトリが狙われていたけど、他の被害は?」
「他に被害報告は無い! それにニワトリもお前が感じただけで、実害は無いしな」
う、う~ん ?
「まあそれは、お前が守ったことにしておこう、しかしあの狼は飢えてる様子はなかったんだ、解剖したがな、肉も内臓もまともで、すこし食物が腸にあった」
飢えていない獣が、突然街中に現れた? 街の外に獲物があるのに?
「だからわからん、陰謀ならなぜ敵が見えない? なぜ、ほったらかしなのか? 狼達は街中で放された程度で、あれは作戦なのか? 何をさせる気だったのか?」
「ニワトリを狙っていたとは限らないと・・・」
あの時は、ついそう思ったけど。
「しかしほっとくわけにはいかんしな、お前が倒したのは正しい!」
父さんはそう言ってくれるが、一匹でも残して様子を見るべきだったか? でも見失って被害が出るとまずいし・・・・。
「お前は気にするな、本来は衛士の仕事だ」
でも気になる、自分が関わったことだし、この街が危険なことになるのは避けたい。
そんなことを考えていると、後ろからひずめの音がした。
「東区衛士隊長の方ですね、俺は馬車の護衛のルドルフって者です、噂の隊長さんとご一緒できるとは光栄ですよ」
この人は雇われた冒険者のようだ、中背だが経験豊富そうで逞しい。
「やあどうも、今日は休暇でね、買い物に行く程度だが」
「そちらが噂のお子さんで? 狼の群れを皆殺しとか」
皆殺しじゃないけど、噂ってのはなぜこうなんだ?
「少し鍛えておいたんで、何とかね」
父さんはそんなことを言う。
「俺だって一人ではきついのに、凄いな坊や」
「いえ、すぐ衛士が来てくれたので」
苦笑いだ。
護衛はすぐに後ろに戻っていき、しばらくは無言でそのまま進むことに。
景色は徐々に緑が少なくなり、荒れ地や岩場が増えてきて殺風景となっていて、魔物などの危険が増すことになる領域に入った。
「ネビィ、剣は持ってきたか?」
唐突に父さんからそんなことを聞かれた。
「はい、使わないかなと思ったけど、一応」
良い剣だしもったいない気もする。
「用意しとけ、必要になりそうだぞ」
ニヤリとしてそう言う。
「?」
父さんは戦いに関してカンが働くとは聞いたことがあるが、今がそうなのか? でも災い感知器は反応してないよな?
懐から取り出して確認するが問題なさそうだが?
その時、馬車の前方から「とまれー」 と、声がして一行が歩を緩めた。
休憩時間だろう。
馬車から人が降りてきて、疲れたーと伸びをする人がいて、お茶菓子を出す人も
花を摘みに行く人もいるが、馬車からなるべく離れないようにと父さんが忠告している。
護衛の人達とも何やら小さい声で話しているようだ。
しかし今のところ問題無いようで、地平線まで何も変わったことはなさそうである。
自分達の分のお菓子など出して、シートを敷き、馬に水をあげる。
少しお菓子をかじったところで父さんが来た。
「食べすぎるなよ、動きが悪くなる」
やっぱり何かあるんだろうか? せっかくの休憩なのにと思うが、父さんは馬から自分の武器を下ろし、準備している。
それは大きな刃の付いた槍のようなもので、馬上用の武器らしい。
機嫌がよさそうにしているのが不気味だ。
護衛の人等も少し緊張しているようだし、お客たちもそわそわしているようで休憩中な割には落ち着かない。
父さんもお茶を飲んで一休みし、ようやく皆落ち着いたところで見張りの人から合図があって、護衛達が立ち上がった。
「お客さん達、馬車に乗ってください、急いで」
静かながら、有無を言わせない口調だ。
その時、感知器が熱くなっていたし、取り出すと光っている。
やっぱり当たったのか、何かが来るようだ。
護衛の一人が駆けてきて父さんに言う。
「たぶん盗賊です! ご協力願います」
「いいとも!」
ずいぶん嬉しそうだ、相変わらずだなあ・・・。
「お前はお客を守っていろ、さーて行くぞ」
馬に乗り、前へ出ていく。
馬車からは「歩く凶器が行くぞ」と声が聞こえる、皆知っているのかい?
父さん控えめにしてくれと願う、悪いうわさが強まりそうだから。
盗賊達? が近づいてくる、総勢20人か?
でも、それじゃ足りないよ多分、通常ならともかく・・・・。
こちらは10人ほどだけど。
何も知らないだろう盗賊が近づいてくる、金品目当てか、誘拐だろうか?




