クリスタル・ロード 0045 妙な依頼が・・・
父さんがくれた剣をよく見ると、やはり妙なからくりがあった。
良い剣ではあるが、父さんが普通の物をくれるわけがない、ないのだ。
しかしこれも好意と思って、大切にしまっておこう。
当面使う予定は無いし。
魔法塾で上級者の見せてくれた技を思い起こして考えると、ワクワクしてくる。
何で今まで魔法を仕込んでくれなかったのかと、つくづく思うのだ、幼い時からしていたら今頃だいぶ使えるようになっていたはずだが、むむむ( ~ωー)・・・
リーシャだってそうだろうし。
むくれていてもしょうがないし、自分の部屋でテキストを見ながら練習しているが、ローソクの炎程度でもさっぱり出てこないが、どうなっているのだ?
もう2時間近くしているのだぞ、早よ出ろ!
そういえば、必要性がどうとか言ってたか?
火を使う必要が無ければ、出にくいのか? 心から望んでいないと?
では自分が望んでる魔法とは? 火じゃなく、・・水? 火を消す?火事じゃないし、ここは火の気無いし、土? 、剣術で考えると・・防御? 懐から武器を取り出し、構えて考えると・・むむむ
「目つぶし!」
そう叫んで左手を飛ばし気合を入れると、一瞬パラッ と音がした。
「?」
今のは・・? 壁や床をよく見ると、砂粒が少し付いている。
床に触れると、ざらついた感触がする、 これはもしかして・・?
魔法、発動した? 砂が出たか?
またやってみる と、3度に一度ほど、パラパラと音がする。
袖についてる砂が飛んだわけじゃないよなと、袖に触るが砂は無い。
これはもしかして、いけるかな? 見込み有り, かな?
その後数十回やってみるとだんだんと音が大きく、砂粒が見えるほどになってきた。
出てる、確かに出ている! いけてるじゃないか!
更に1時間ほどひたすら念じて続けると、だんだん腕が痛くなってきたが砂の量が増えて床に溜まって砂山になっている。
砂をすくってみると、確かに砂で、重みがあり自然の砂のようだ。
この砂はいったいどこから来るのだろうと思ったが、体が減るわけじゃないよな?
フレアだってあれほどの水を出していたし、体が無くなってしまう。
その辺は魔法の原理だし、考えても仕方ないので学者に任せるとしてひたすら続け砂から小石、小石から手の平サイズと徐々に作れるようになっていく。
剣術で鍛えた体で、体力なら自信あるのが幸いして夜中まで続けられた。
朝、部屋には砂と砂利の山ができている。
見つからないうちに麻袋に入れて、窓から運び出し畑の脇に撒いておく。
毒性はないよな? 念のため少し離しておいたけど。
リーシャと会って魔法の事を話すと、「自分も進歩した~」と手から大きな炎を出した。
料理で少し加熱するとか、焦げ目をつけるとか重宝するそうだ。
やっぱり戦い用じゃないんだな、リーシャらしいけど。
先生によると初めはひたすら好きなように使って経験を積んで威力を付けるのが良い、下手に考えない方がいいとか、制御は後で身に付けろとのことだ。
フレアは貴族だった時、幼少から習っていて魔力を強くできたが冒険者になってからは学ぶ機会が無く、力任せのままになっているんだそうだ。
これからは制御を学べるわけか、自分はまだまだだけどね。
そして魔法の練習を終え、リーシャと共にパン屋の手伝いやポーション等の納入の為街へ向かい、ギルドにも行くと掲示板の前で何やら困っているような人がいる。
「私、先にアイリスちゃんに会って来るね」
リーシャはすぐに階段を上がっていく。
掲示板に近づくと、60代のおじさんが眉間にしわを寄せて悩んでいる?
「あの、どうしましたか?」
つい聞いてしまった。
「ああ、俺の依頼がな誰も受けてくれんでなあ、無理もないが・・」
掲示板には隣町に行って、仕事の不備を説明? となっているが、隣町ならさほどの距離ではなく、危険も低いが・・はて? 報酬は?・・・・少ないか。
これでは冒険者は嫌がるかな?
でもこれを見て、なにか心に引っ掛かった。
なぜか気になる このまま帰ってはいけないような妙な感じが強くなっていくのだ。
「あの~ 良ければ自分が行きましょうか?」
そう言っていた。
仕事の不備を説明とは、何をするのか今一つわからないが。
「え? ホントにかい? ああ、でも子供ではなあ」と、渋い顔だ。
仕方ない、あれを話すとするか。
「最近の狼の群れを始末したのは、自分ですよ」
耳のそばで囁くと、相手の顔つきが変わる。
「ええ? そういえば子供が皆殺しにしたとか・・・あれがキミかい?」
皆殺しではないけどね。
黙ってうなずく、 下手に飾らない方がホントらしいだろう、だよね?
そして懐からいつもの武器をちらりと見せる 使い込んでるのは素人目でもわかるだろう、フッ。
「う、うーん 強そうではあるが、ちと厄介な仕事なんだがいいのかい?」
「ちと」程度なら、受けましょう 受けなければならないのだ、なぜか。
「構いませんよ」
決め顔だ、精一杯の大人びた態度で・・・さあ依頼しろ!
「それじゃ頼むか、しかし冒険者登録は・・?」
「自分は登録していないので直接の依頼になるけど、問題なしです」
「まあいいか、どうせ誰も受けてくれんしな、頼むとするか」
よっしゃっ 。
他の用事を済ませて、外で依頼料を半分受け取り、残りは達成したらだ。
仕事の内容は少し変わっているが、できなくはない。
後は両親にどう話すかだな、ダメだと言われなけりゃ良いが・・・・。
行くのは明後日の早朝だ それまで説得をしないと。
リーシャが少しして出てきて、アイリスにあったとニコニコだ。
「お菓子美味しいって~ また持って来よう! 今度ケーキにしようかな」
そのアイリスが二階の窓から手を振っているので二人で振り返す。
「またね~」
夜、父さんが帰って来てから依頼の話をすると、母さんは少し驚いたようだが、父さんの返事は予想と違った。
「そうか、良しわかった! 明後日だな、すぐに準備しろ、ぬかるなよ」
え?いいの?
「気を付けてね」
母さんが言う。
なんか妙にあっさりしてるし、父さんが嬉しそうなのが変な感じだが・・・?
反対されなかったのは助かったけど、何やら胸騒ぎ? が、
そして当日の朝、馬に鞍を付け荷物を積んで隣町に出発となったが、・・・・
なぜか父さんも準備している、馬に乗って。
「あの、父さん仕事では?」
「休んだ! 念のため、明日もな!」
「いいんですか? 怒られませんか?」
隊長なのに、息子の用事に同伴て・・。
「息子への初めての依頼だからよく見ておかんとな、失敗は許されん!」
監視付きですか、うわ~~ どうりであっさり許されたと思った。
「安心せい、緊急時以外は手を貸さん! お前がやり遂げろ、いいな!」
「はいはい」
「へまをしたら鍛えなおすぞ、気合を入れろ!」
「はい!」
「行ってらっしゃい」
笑って見送る母さんに手を振って出発する。
母さんは予想していたようだ、さすがにわかっているか。
そしてこの妙な依頼から、何かが始まった気がした。




