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クリスタル・ロード ~失われない大国の王を目指して~ 【22000PVを感謝します】  作者: 前田  裕也
1 迷いの章

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クリスタル・ロード 0044  上級の戦い (終)

 観客がまた騒ぎ出すが、今度は意味が違う。


自分たちが巻き込まれそうなのだ、そりゃ騒ぐだろう。

でも観客は先生が守るから大丈夫だろうし、こちらも何とかしてくれるかもと思うが、余裕ないかな? 


 「やっぱりこうなったか、シールドだ!」

「はいな!」


レフが言ってジョーイが応じる、懐から何か取り出しているが、アイテムか?

四角く短い棒を二人が地面に叩き付けると光るモヤが広がる。

すぐに4人が覆われていき、今度はぬれずに済みそうで良かった。

   

 Bランクの彼はゴーレムの陰に隠れているが、フレアはお構いなしに波を向ける。

諸共(もろとも)で流してしまう気だ。

波はもう高さ10mほどもあるし、逃げ場はないだろう。


 どっと波が被りゴーレムの頭以外が見えなくなるほどの水が押し寄せ、流されるほどだが土と石で造られた重さで、ぐらつきはしたが倒れずに滑っていく。

観客は大きなシールドで守られているので平気なようだが、対戦相手はどうだろう?


 相手が見えない。

水が流れ、広がって行くがあの人がいない? 流されてしまったのか姿が見えないのだ 水の流れる先を見たがどこにもいない。

観客も戸惑っているようで、どこだどこだと騒いでいる。    


 これはどちらが勝ったんだろう? フレアか? ゴーレムは残っているが、よく見ると下の方が痛んでいて、穴があるしそこからひびが入っている。

辺りは凍っていてまだ寒く、モヤがかかっている。

水が流れたところがすぐ凍っていき、地面がまた氷におおわれていく。


「え、え?  なに?」

フレアの様子が変だ、  驚いているようだが、何に?


「あら」

先生も反応しているが、何かあったんだろうか?


「氷魔法はもう使っていないよね?」

「そのはずだが」

    

ジョーイとフレアが言い出したが、使っていないとは? 地面もゴーレムも氷におおわれてきているし、フレアでないならいったい誰が?


「さっき使った魔法が残っているからでは?」

波を出す前にさんざん使ったし、まだ凍るんじゃないかなと思うけど。


「水にあれほどの魔力を使えば、氷の維持は無理なんだ 自然の氷とは違う」

「じゃあ、あの氷は?」


 そう言っている間にも氷は広がり、ゴーレム全身がみるみる覆われていく。

遂には氷像のようになってしまった。

観客はよくわからずざわついている。

    

 そして次の瞬間、その氷像は大きな音とともにはじけるように砕け散ったのだ。


えええ?! なんで? 

攻撃されてないのに、砕けた? なぜ?     ???


「こ、これは?」

フレアも驚いている、そりゃそうだ なぜ砕けた? 


「勝負あり! 勝者、ラシーン・クリーグ !」

先生が言う、 ラシーンって?  Bランクさんの名か、初めて知った!


すると氷の破片の一つが溶けて彼が姿を現した。


「ふう」

相変わらず涼しい顔だ。


「な、なん・ですって・」

    

フレアはショックを受けているようだ。


観客は大騒ぎで、また悲喜こもごもの人達が混ざる。

塾の授業で賭けをしないでほしい。


「え~、今どうしてあれが砕けたの?」

リーシャが聞くが自分もわからない、あれは相手の魔法なのか?


「たぶんあいつが事前に魔法をかけていたんだな、氷魔法を」

代わりにレフが答えているが、氷で砕けるのかな? 攻撃が見えなかったが。


「お見事でした、 木偶(でく)にしみ込んだ水を凍らせて破壊ね、地味だけど効果的、いい方法です」

「どうも」

ラシーンさんが言う、寡黙な人だ。    


「く、~~~~~~~~~~~~~~~~~」

フレアが凄く悔しそうで気の毒だがこれはしょうがないか。


 観客は更に騒ぎ、勝者を讃えるのかただのお祭り騒ぎなのか大盛り上がりだが、そこへまた一人来た。


「おいおい、何の騒ぎだこりゃ?」

「父さん」 

衛士隊長の父さんである。


「町外れで騒ぎが起きてると聞いて来てみたら、ここかよ なんのお祭りだ?」


 レフとフレアはすでに後ろ姿で、遠ざかっているところだ。

仕事中のはずの二人だからな、逃げ足が速い。  



 この後少し説明があったが、あれが砕けたのはヒビや穴に入った水を凍らせることで氷が膨張して砕いたという事だった。

だから彼は事前に穴をあけていたんだろう、 そして自分は隠れていた。


 先生の説明によるとフレアはかなり魔力量が大きいんだそうだが、制御がおろそかで力任せだと、そして彼は魔力効率を求めているとかなんとか。

魔法使いにもタイプがあるらしい。



 色々あったが、こうして試合は終了した。

賭けをしていた人達はさっさと逃げたし、父さんから少し注意を受けた程度で済み皆家へと帰って行った。

次回からは通常授業だろう。    

フレアは今度こそ勝つと息巻いているが、まだ試合があるんだろうか?

    

       -------------------------

 

 その日の夜、父さんが帰宅すると革袋を渡された。


「狼の討伐(とうばつ)報酬だ、調査があって少し遅くなったがな」

銀貨が30枚ほど入っているが、自分に? 冒険者じゃないのに?


「一般市民でも討伐すればもらえるんだぞ、ギルドとは別だしな」

それは知らなかった。


「言うのが遅れたが、よくやった! それはお前の好きなように使え」


あれは夢中でやっただけなんだけど、報酬があるとは・・・。


「それとな、これは父さんからだ」

と、剣を渡される 短めだが質の良さそうなものだ、輝きが違う。    


「練習用とは違うぞ、有名な刀工(とうこう)の作だ」

「あら、少し早いんじゃない?」母さんが言う


「いいさ、息子が初陣で手柄を挙げた祝いだ! 今日は飲むぞ、酒もある!」


料理まで手配していたようで、その後次々に運ばれてきた。

 二人は大いに飲んで、自分はずいぶん食べることになった。


腹が苦しくてその夜、なかなか眠れなかったのだが、良しとしよう。





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