クリスタル・ロード 0040 上級の戦い (2)
町外れとはいえ近くに家もあり、さほど広くもない場所でこれから荒っぽい事が起きるんだが、被害が及ばないだろうか心配になる。
たぶん先生とフレアが防御魔法で何とかするのだろうが、音まで防げるかな?
二人の対戦者は、杖を振り上げ呪文を唱え念を込めると木偶のそれぞれは力を注がれ、さらに強くなった。
土のゴーレムは腕を振り回し、大きな石を投げ始めたが、あんなのは用意してあっただろうか? 見覚えが無いんだが・・・。
石と言うより尖った岩だ あれは魔法で造った物だろうか?
木のゴーレムは身軽さで石を躱しながら樽を投げると、当たった瞬間爆発し炎と蒸気が噴き出し土のゴーレムの体を崩す。
土の方が強そうだが今のところ押されているか?
「なかなかやるではないか」
男性魔法使いが胸を張り、自信ありげに言う まだまだ余裕を感じられる。
「ほほ、相手が女だからと遠慮してるとすぐ終わりますよ、よろしいのかしら?」
微笑みながら挑発している。
こちらも序の口か?
「仕方ないな、ちと痛い目に合ってもらうかな!」
杖を指揮者のように振るって呪文を唱えた
「アトラス・エッジ!」
すると地面が盛り上がり、ひねり出すように棒状になり伸びていく。
長さ5mほどになった所で止まるが、いつの間にか端の形が変わり一方はハンマーにもう一方は角のようになっている。
足が遅い分をリーチでカバーする様だが、あれは用意された物じゃないがいいんだろうか? 他の物を使うのはダメとは言ってないが・・。
先生は黙って見ているのでOKか、 試合続行のようだ。
その時「お茶、飲む?」
と、隣で声が聞こえた ああ、リーシャか。
ありがたくいただいて飲むが、この子は目の前の事に動じていない。
だいぶ荒っぽい事になりそうだが、平気で自分の分のお茶を飲んでいる。
目は興味深げだが、やはりあの母で慣れているという事か。
ドドンと、音がして試合に目を戻すと、ハンマーを地面に叩きつけて穴を開けたところで相手は辛くも躱していた。
先ほどまでは逃げ回っていたが、あの棒で状況が変わったようだ。
木のゴーレムが離れようとすると、石を前方へ撃たれ、足が止まればあの棒で打たれ、突かれ、なんとか避けるが少しずつ削られていく。
立場が逆転しているようだ。
それにしても先ほどからズシン、ドスッ、ドン とばかりに騒々しい。
ご近所迷惑にならないだろうかと思ったら、案の定で人が集まってきている。
そのうち衛士まで来るのでないだろうか?
「ふふん! そろそろ限界かな? 降参でもよろしいぞ」
男の方が自信たっぷりで笑いながら言う。
「ふっ、 これで勝ったつもりかしら? しょうがない人ね・・」
こちらも自信満々だ。
そして更に呪文を唱える 次は何が出て来るのだろう?
呪文の間にも相手の攻撃が来るので、それをかわしながらの詠唱である。
二重の魔法とは、さすがは上級者!
だがゴーレムの木の腕が吹き飛んだ やはり両方はきついようだ。
遂に攻撃がまともに当たった。
「まだまだよ! 」
詠唱が終わり杖を伸ばす
「ウッディ・プリズン!」
すると相手の足元にツタが現れ、どんどん伸びて囲むようになるとゴーレムの体を伝いながら今度は上へと成長する。
これは自分もアイテムで使ったことがある、捕獲する技だが、あれより太く、早く、そして大きくなる、 さすがは上級魔法だ。
土のゴーレムは逃げようとするが動作が遅いのでどんどん絡まれていき、棒で払い、つぶしても、さらに伸びて絡まっていく。
武器が刃物でないのが、失策だったか?
「うーん、 あれ燃やすのはダメかな? それとも剣を出して切るとか」
リーシャがそんなことを言い出した、 戦闘に興味があったのかな?
「たぶん燃えにくいツタじゃないかな、想定してあるはずだし、これから剣を造るのは間に合うかどうか・・」
すると土ゴーレムが、石を数十個一斉に発射して木の方の足を砕いた。
「しまっ !」 女性が言う。
勝ったと油断して足を止めていたようだ、 両足をやられてほぼ動けない。
「「あ~」」 二人して声を上げてしまう。
どっちの味方というわけではないが、つい熱が入る。
集まって来たご近所さん達もそのようで、声に出ている。
ここはファイヤーボールだとか槍で串刺しとか、水攻めだとかいろいろ言っている。
近所迷惑と言う人はいないようで、みなノリノリなのか?
ただ 頑張れー と叫ぶ人もいる。
「おおー、やってるやってる」
「うわー、魔法戦かあ、 ゴーレムどうし? 難しいんだよね」
近くで声がしたので誰だと思ったら、レフとジョーイだ。
畑で働いているはずの4人組のうちの二人。
「お二人とも仕事中では?」 サボり?
「なんか賑やかだから、少し抜けさせてもらった」
「だって気になるんだもん」
もん、 じゃないでしょが。
「この後、フレアの試合もあるんだろ?」
「そりゃ、ありますよ」
「見たい 見たい!」
この人たちは・・・・ 仕事をしましょう、仕事を。
観客たちから更に声が上がり、盛り上がっている。
石による弾幕をツタの壁で斜めにはじきながら、取り囲んだツタで締めつけ抑え込んでいき、土のゴーレムは動けなくなっていくが、木の方は石にやられてだいぶ崩れている。
これは力押し同士か、どちらが先に参るのか?
観客にも力が入っている、 そして自分たちも。
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