クリスタル・ロード 0035 訓練の成果
ここで一体何が有るのか?
また火事か? でも立て続けにそんなことがあるだろうか。
広めの庭の、何事もなさそうな所で、ニワトリが草をついばんでいるだけだ。
その周りにも別に・・・問題・・・ん?
茂みに・・何か?・・・あれは何だ? よーく見ると・・・動物?
じっと見ていると、わずかに動く。
鼻先? なんの? 顔を出した! 犬か?
茂みの下から顔を出し、ニワトリを見つめている。
狙っているのか? それに犬にしては顔が・・険しいか? 狼のような?
じりじりと顔を出し、歯をむき出してニワトリに近づく。
これは、いたずら程度ではなさそうだ 襲いにきたか。
声を出すと逃げてしまうか?
逃がすとまた来て狙うのではと思い、懐から武器を取り出す。
狼程度のサイズと力、牙と爪に対抗するためには、リーチと速さ、丈夫さで選ぶ。
それは鎖のムチのような物、手元と先には金属棒で途中にも棒や鉄球を付けられる。
敵により、効果を変えられる武器である。
もちろん練習してあるので、命中率は・・そこそこ。
百発百中とはいかないが、相手は一頭、何とかなるだろう。
両手で鎖を持って、準備完了。
さあ来い! と深呼吸して構えは前傾姿勢だ。
すると気迫が伝わったか、狼?の視線がこちらへ向く 望むところだ。
姿勢を低く、じりじりと藪から出て来る獣!
こちらも構えたまま、ゆっくりと間合いを詰め、鞭を小さく振りかぶる。
と、その時敵の後ろにもう一頭見えた。
少し大きめのが控えている。
2頭か、そりゃそうか、狼などは普通群れで行動し、獲物を狙う時も単体ではない。
でも大丈夫、その程度は想定して訓練している、2頭なら・・・。
本当に2頭? 普通 「群れで行動」 するのだ。
背中に嫌な感じがする、もしかして・・と、ゆっくり後ろを確認。
前を警戒しながら・・・・・・・・ いますか、やっぱり。
いつの間にか、後ろにもう一頭、群れの狩の鉄則ですね。
回り込んで挟み撃ちか、取り囲んで攻撃。
それではと、背中から別の武器を取り出し、左手に持って備える。
こちらは折り畳みの金属棒、接近戦用なのでやや重い。
狼程度なら一撃で骨折させられるだろう。
前の一頭が飛び出し真っすぐに向かって来る。
こちらは鞭を振るうべく体が動き、伸びた先が敵の頭へ飛ぶ。
後ろの敵が、向かって来る気配がする。
その時、前方にもう一頭が出て来るのが見えた。
あー やっぱり? 4頭以上ですか?
父さんの訓練が生きるかなあ・・・。
鎖の先、金属棒が敵の頭に当たり、ギャン と鳴き声が出る。
すぐ引き戻すが後ろの敵が迫っていると感じ、振り向きざま左手の棒で薙ぎ払う。
目の前まで来ていた狼の頭付け根辺りにヒットする。
狼程度の相手は大抵こちらの喉に噛みつこうとするので、高さが決まってくる。
そこを狙うと大体当たるのだ、あとはタイミング次第。
次は前の相手、2頭目が突っ込んでくるので鎖を縦にして構える。
これに噛みつかせて、棒で頭を一撃、ひるんだところをもう一発。
もちろん左手でも威力が出るよう練習してある。
父さんは 「全身を武器にしろ」が口癖なのだ。
敵はまた ギャンッ と鳴いて倒れる。
この時には驚いたニワトリが逃げ回り、コケッツ コケッ と鳴きながらバタバタと羽ばたいてパニック状態のが10羽ほどで騒がしくなっていた。
敵の攻撃の間が一瞬空いたので、靴の仕掛けを動かしつま先とかかとに刃物を出す。
こちらはめったに使わないけど、緊急事態だし。
だってまだ敵が出て来るのだ、何頭いるんですか?
そこからはもう夢中で、手加減してる余裕などない。
「おおおおお」と声が出ていて、鎖と棒を振り回し骨の折れる音や感触を受けながら、刃を突き刺して蹴飛ばすなど、暴走状態で体が熱くなっていく。
ようやく敵が動かなくなったとき、自分は髪を振り乱して返り血を浴び、目はぎらついてひどい状態だったと思う。
だって騒ぎを聞いて出て来た家主のご婦人が、「ヒャッ」と声をあげて腰を抜かし?あとずさって行ったので。
自分は善良な市民なんですよ、悪いのは凶暴な狼なんですからね。
本当ですよ。
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