クリスタル・ロード 0033 災いへの遭遇
引き続き、災い感知器のチェックを行う。
ギルドを出て、通りをあてどもなく歩いていく。
これ、もしかして歩く必要無いかと思うが、首飾りを見ながら座っているだけというのも暇だし、体を鍛えるためにも歩いていようと思う。
通りではいつものように店先を掃除する人や買い物で行き来する人、外で遊ぶ子供、荷物を運んでる人などがいて、小さめの馬車がカラカラと音を立ててゆっくりと走っていく。
この街は防犯、防災の意味もあって路地裏も比較的片づけられ、掃除が行き届いていて、領主が良いのだろうと感じさせる。
表通りだけでなく、路地も歩いてみるかと少し狭いが歩いていく。
脇から黒猫が出て、足を止めこちらをじっと見るのが、「誰だ、オマエ」と言ってるようで、あの猫のナワバリなのだろうか?
「ごめんよ、通してくれ」と言って通り過ぎると、目で追ってくる。
塀の上にももう一匹、赤茶の猫が座ってこちらを見下ろす。
「お邪魔するよ」
声をかけると、頷きつつ ニャアと鳴く。
こちらは愛想が良い。
もうすぐ裏通りに出るというところで、手がほんのりと温まっている。
首飾りを握っていたのを思い出して開くと、少し光っていた。
反応か! と方向を確かめる。
斜め後ろか、 表通りだろうかと急いで戻ると、表に出ないうちに方向が変わっている。
首飾りの光が、逆の斜め後ろだ。
光を見ながらまた戻ると猫のいるあたりで、この家かと近づくと猫が驚いて逃げた。
ここか? でも距離がわからないから、この家のずっとむこうかもしれない。
少し考える。
この家に入って聞こうかと思ったが、何て言えばいいのか?
・・・・・・・・・・・・ うーむ ???
そうか、方向はわかるのだから、なるべく大きく回れば場所が絞れるのでは?
そう考え一度裏通りに出て大きく迂回しようと走り出し、出てすぐ曲がって更に走る。
でもまた方向が変わった つまり近くだ。
もう少し行くとまた路地が有るので入ると、あの家の反対側に出た。
光はこの家を指している。
この家に何かあるのか?
でも、知らないお宅にいきなり押しかけるのも・・・。
躊躇して立ち尽くしていたら、首飾りの光が強くなった。
いよいよ悪い事態がと、決意して声を掛けようとすると窓から煙が出て来た。
確かに煙・・だよな、 見つめていると煙が濃くなり、ほぼ黒だ。
火事?! 火事か?!
「か、火事だー‼、 火事だぞー!」
気付くと大声を出していた 躊躇してられない!
「火事だー!!」
更に叫んでいると、隣の家から人が出て来た。
「ほんとだ、おい! 火事だぞー!」
その人も叫ぶ。
表通りも裏通りからも、なんだなんだと人がのぞき込んで火事だ火事だ! と騒ぎが大きくなっていく。
隣から来た人がその家へ飛び込んでいく。
誰かいないかーと叫ぶ声が聞こえるが、大丈夫だろうか?
更に人が入って騒がしくなっているが、その他の人は周りで恐々(こわごわ)見つめている。
自分も行くべきか? と入り口に向かうと後ろから止められた。
「おい、子供はやめとけ、危ないから」
「でも・・」
そう言ったところで、窓から人が顔を出した。
「消したぞー、 ふう、やばかった」
入り口からもう一人が出て来た お年寄りを支えながら。
ケホケホと二人とも咳をしているが、無事である。
おおー と周りから安堵の声が上がる。
ご近所の人だろうか、大丈夫かいと数人がお年寄りの元に集まっていく。
その頃には騒ぎを聞きつけた衛士がやって来た。
事故として調査が始まるだろう が、自分も調べられるかな?
第一発見者? なんとなく嫌な響きだな。
首飾りの事は、伏せておこう。
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