クリスタル・ロード 0029 クリスマス・ツリー ?
小さい体に大きな杖、たどたどしい歩き方に真剣なまなざしで、詠唱するのは
何やら神々(こうごう)しくも感じて来た。
回りもそう思っているのか静かになっているし、隣のリーシャも同様だ。
フレアとリーシャ母さんも黙って見守っている。
詠唱はまだ続き、少し長めかと思っていたら、あの子の前の箱から何かがゆっくりと
出てきていた。
小さなものが続けて出てくるが、あれは・・・なんだ?
小石か? おはじき だろうか? その後には、葉っぱ? 落ち葉か?
まだ、出て来る? ・・・・あれは花? 野の花か。
まだ続く? コルク栓? コルク栓がいっぱいだ。
あの箱の中身はどんな基準で決めているのだろう? ただの寄せ集めだろうか。
箱からたくさんの物が、ゆっくりふわふわと上がっていく。
単純ではあるが、なんとなく見とれてしまう動きだ。
みんな黙って見つめている。
隣を見るとリーシャも口を少し開けて見入っている。
会場が静まり返って、妙な感じだ。
それでもまだ流れが途切れない。
次々にふわふわと上がっていくのだ。
いったいどこまで? これは魔力のパワーが凄いのか? 制御なのか?
先頭は30m? まだ上がる、 50mか?
「すごーい、ねー? ホントにあの子がしてるのかな?」
ようやくリーシャが声を出す 小さな声だが、会場が静かなので良く聞こえる。
「そう、だろうね」
ようやくこちらも声を出せる 喉が渇いた感じがする。
Dランクの、他3人とCランク以上の人達まで驚いているようだ。
リーシャ母さんまで驚きつつ、ニコニコと見つめている。
高さは100m近くだろうか、幅は30m少しか? 円筒状に回りながら上がって
渦巻きとなっている。
先ほど割られたマキなど大きめの物も混じって来た。
大きなものは下の方になって、上の方は小さな物で空に溶け込んでいく。
そろそろ回りが落ち着いてきたのか、声が出てきてざわついてきたが、総じて好意的でいい反応だ。
しかしこれで終わりでは無かった。
下の方のマキに火が点いたのだ。
始めは1本に、次は両隣の2本、そこからそれぞれの隣へと両側から回り込むように
火が点いていくのが、ろうそくに火を灯すようにだ。
「おおおーっ」 と声が上がった。
「ええーっ」
リーシャもたまらず声を出す 自分は出遅れた。
何かきれいなのだ、下から見るとライトアップされたクリスマスツリーのようだ。
少し曇り空だが光が差し込んでツリーの先が照らされている。
下からはマキの日で、オレンジ色なのだ。
その時、太陽が隠れて少し暗くなった。
厚めの雲が出て、周りが更に暗くなっていく。
「あ~っ」
リーシャが残念そうな声を上げる。
確かに少し演出にマイナスだ 神様!。
そう思ったのは自分だけじゃなかった。
ざわつきがおおきくなり、「あー、 惜しい!」などと声が聞こえる。
だがそうではなかった。
光が灯った。
星のように。
ツリーの先端に強い白い光が星のように見える 光魔法だろうか。
空が暗いせいで、なお明るく見えるのだ。
また少しざわつきが大きくなった。
と、先端の少し下に、やや弱い光が灯る よく見ると青い光だ。
そしてそこから
隣へ、また隣へと弱い光が付いていく。
渦を巻くように上から下へと次々と光が続いていくし、中には赤いのもある。
本当にクリスマスツリーのようにだ。
ここで会場から大きな声が出た。
おおおー とどよめきが広がって行く。
これは綺麗だ、日が隠れたのが幸いして、ベストなタイミングだ。
拍手が上がる。
一人からどんどん増え、満場の喝采となった。
リーシャも隣で力一杯拍手している もちろん自分もだ。
その時あの女の子が杖を持ったまま両手を挙げて、空を見上げた。
まるで神を讃えるように。
それまで無表情だったのが、今は満面の笑みだ。
拍手はますます大きくなり、まだ続いている。
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