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クリスタル・ロード ~失われない大国の王を目指して~ 【22000PVを感謝します】  作者: 前田  裕也
2 目覚めの章

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クリスタル・ロード 0200  勝利の余韻か?

拍手の音がする。


離れた所から一人分の音だが、二人、三人と音がしている。

誰だ、王子が化け物になって切り捨てられたのにめでたい事か?


見回すと執事やメイドさん達が柱の陰から拍手をしている。

いいのか、自分等の主が切り身になって転がっているのに、怒られないか。


「お見事でございます、お客様」

「「おめでとうございます」」


メイドさん達まで讃えてくれているのは良いのだが、主をほっておくのか。

ひどい状態で転がっているのが見えるのに、彼らは見向きもしていないようだ。


などと思っているとその時奥の壁のドアが勢いよく開いて、人が入って来た。  


「あら、終わっちゃった? あらあら、急いだのに間に合わなかったかしら」


何やらにぎやかなご婦人が、せかせかと向かって来た。

服装やしぐさからするとこの人も王族だろうと思うが、誰だ?


「どうして誰も私に教えてくれないのかしら、見逃しちゃったじゃない、もう!」


一人で怒っているご婦人に執事さん達は恭しく頭を下げるが何も言わない。

もしかしてこの人が来ないようにしていたのだろうか、お家の事情という奴だろうか、自分が口出すことではないが。


「それで、この子が竜の剣を授かったというお客様ね、勝ったのね、すご~~い、小さいのにね、やるじゃな~い」


と言いながらどんどん迫って来る。  

こちらは血まみれでひどい形相のはずだがまるで動じていないようだ。

上品なご婦人のようだがこの手の事に慣れているのだろうか?


「あなたお名前は? 可愛いのに強いのね、さすがは竜剣使い!! ねえ」


更に迫って顔をくっつけてきそうだ。


「その、自分はネビィ と・・」

「お妃様、そろそろ王子の治癒を致しませんと」


執事さんが割り込むように近づいて来て言った。

これはさりげなく接近を止めているのだろう、気の利く執事さんである、ついでに離してほしい。


「あら、いいのよ少しほっとけば。 いつもここなら誰も死なないとか、手加減が要らないとか威勢のいいこと言ってるんだから、構う事無いわ!」


そんな事を言われている化け物王子は徐々に様子が変わり、黒さが薄れ人の姿へと戻りつつある。

墨の様だった血もだんだん赤くなり、床が血に塗れているのが際立っていく。

これでもあの人は平気なのか。

息子が・・バラバラになっているのだが、気に留めていない?


「しかし痛みはあるはずですので、そろそろ治癒を始めませんと」

「もう、あなたはホント甘いわねえ、 だからわがままになるのよ、しょうがないわねぇ・・ じゃあ始めなさいな」


執事がお辞儀をするとすぐに合図を出し、メイドさんが別の人を奥から連れて来た。

フード付きのローブで顔が見えないが、あれが治癒士らしい。

彼?が近づく頃には王子はだいぶ人に近い外見に戻って、バラバラ死体のような悲惨な状況なのだが治癒師もメイドさんも淡々と対処しているので、慣れているのか?


治癒が始まると王子のうめき声がし始め、まるで生き返ったかのようだが死んでいないだけとは妙な結界である。


「母上~~」


その王子からうめき声のような言葉が出始めた。


「あの、呼んでますが・・?」

「いいのよ、ほっといて、威勢良いのに甘えるんだから・まったくねぇ」


王子を指さして言ったが、お妃様は手を振って気に留めていない。  


「いえ奥様、王子はですね、こんな所へいらしては服が汚れますとおっしゃっております」


執事さんが言葉を伝えるが、奥方様は呆れた顔で王子を見つめている。


「自分が汚しておいて良く言うわね、掃除する人の事も考えずに・・」


あんな体になって痛みはあるはずだが服が汚れる心配とは王子もアレだが、気に留めないこの母もアレだな、うん。

なんなのだろう、この人達は。


「そんな事よりこの子をお風呂に入れて綺麗にして、その後お茶にしましょ、ね」

「かしこまりました」


涼しい顔で従う執事さん達も・だな。  




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