クリスタル・ロード 0196 魔王の牙
「小僧よ、こいつは弟の使ったアクセサリーとはわけが違うぞ! 真の魔剣、魔王の牙だ、お前の竜殺しと勝負だ」
その剣からは稲光が走り床へびりびりと雷鳴が響く、見た目だけなら向こうの方が華々しく迫力があるほどだが、どれほどの力を秘めているのか。
しかしこちらの剣も風が強さを増して刀身に熱を持ち始め、赤みを帯びてくる。
そして炎を纏うとそれが風にあおられ勢いを増して伸びていく。
剣を持っている自分も熱いが炎の伸びによって相手はなお熱いはず、だが王子は不敵な笑みを益々強め闘志はさらに強まっていそうだ。
これは弟以上に血の気の多い相手らしい。
執事さん達は避難したかとチラリと見ると柱の陰に隠れて待機している。
おそらくあの柱が防御の結界となっているのだろう。
ならばあの人達を巻き込まないで済む。
あの王族達のわがままに付き合わされるのはいつも大変だろうし、そのうえケガまでさせるのは実に気の毒なのでこれなら安心だ。
「さあ来い、そちらから打ち込ませてやろう、いつでもいいぞ!」
この兄も偉そうな奴だ、ここの兄弟は皆こうなのか父親も偉そうらしいしやはり痛い目に合わせてやろう、こっちの事は小僧とか言ってるしケガしても死なんとか言ってるのだから遠慮なくできるよな、そうしよう。
「それではそのように・・・・ 、行かせて戴こう」
剣の柄を握りしめ気を最大に込めて命ずる。
「激震剣・改・竜震剣、わが技に応えよ、初激半身斬!」
上段右の構えから瞬時に飛び出し間合いを一気に詰めて右袈裟から斬り下ろし脇まで分断する技だが、この王子に受けられるか。
王子の顔が既に目の前にあり驚きで目を剥いて剣で受けようとしているが、並みの剣では折れてしまう技である。
「ぐっ」
打ち合わせた瞬間、雷が落ちるごとき音と光が満ちて炎が飛び散った。
全身が痺れて熱い、向こうもそうだろうが体が焼けるような気がするがそれどころではない・辺りが眩しく相手が良く見えない。
ほぼ真っ白な世界、目が焼けてしまうかと思うような眩しさだが徐々に前が見えて来た。
王子が立っている、が、剣を少し下げて息を切らしているが体はつながっている。
真っ二つとはいかなかったらしい。
「なんと、これが小僧ごときの剣技か? 信じられん、まるで叔父か父上のような・・ いや、これはドラゴンソードのおかげだな、そうに違いない!!」
一人で納得しているようだがホントにそう思うのか、まだこの剣は大した力を出していないがわかっていないか、そちらこそその剣でなければ斬られていたぞ。
煙が漂い肉の焼ける匂いに気が付いた。
どうもお互いの体が焼けているらしいし、髪や服もそうなので香ばしい匂いと言うには今一つである。
死にはしないそうだが髪が焼けるし坊主頭で裸になってしまうのだろうか。
メイドさんにも見られるのは避けたいところだが、王子は平気なのか?
しかし王族ともなればメイドさんに風呂(湯あみ)の手伝いもさせるのか、着替えの手伝いもなのか、自分はそんな事一度もしていないが他の国では聞いたことがある。
メイドさんも・・・で、何人もが・・・など、あるとかなんとか、噂だが。
なんだか腹が立って来たぞ、この王子はそうに違いない。
この偉そうな態度で遠慮するとは思えないし、メイドさん達が逆らえないのをいいことにさぞ理不尽な行いに終始するのだろう、よし、天誅を下そう。
「激震剣・ 二の段、多重震!」
重い連撃を肩,横腹、頭に打ち込む、それもドラゴンソードの力でだ。
また強い炎と共にで、王子は剣で受けるが腕や頭が焼けるのが見える・・それも今度は煙どころか所々が焦げてさえいて、そのたびにジュッと音が出る。
「ぐおおっ」
傲慢な王子でも熱さは感じるようで実にいい気味である。
メイドさん達その他の虐げられた人々の無念と怒りを思う存分受けるがいい、自分はこの機会に彼女らに代わり剣を振るってあげよう。
連撃×3度の所で王子は後ろに飛び退った。
「くっ 、なかなかやるな、龍の剣に見込まれるのは伊達ではないか、これは期待以上である、褒めて遣わす・小僧とは思えん!」
息を切らしながら言われてもありがたみが無いが、まあいいだろう。
それはそれで気分が良い、今度は話せないほど打ち込んでやろう、そうしよう。
「だが今度は我の番だ、行くぞ小僧、『毒の二歯!』 」
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