クリスタル・ロード 0189 閑話休題: 恋占い
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しばらく来ていなかった、ミミー・ムーアさんがうちの畑で働いている。
作業着にエプロン、大きな麦わら帽子に長靴でせっせと収獲や何やらだ。
ムーアさんは呪術師で占いや呪術が専門であるが自分に向いていないからと師匠の元を飛び出し露天商を始め、珍しい物を商っていたそうだがたまたま?師匠に見つかって連れ戻されたとのことである。
その彼女は師匠の指示で遺跡の調査をしながらうちの畑で働いているが、しばらく顔を見せていなかったのだが、遺跡の方が忙しかったのかな?
「調査もあるけど珍しい物が色々あってね、つい夢中になって見て回ってたらいつの間にか時間が経ってて、何日泊まったのかも分からないぐらい、あははは」
寝食を忘れて? 大丈夫かな、ご飯は食べてるか?
「保存食をたっぷり持っていったし、遺跡にも食べ物や水は有るしで食べてはいるけど忘れた事もあったみたいで少しやせたかな、でも問題なしだよ」
「保存食は栄養が偏りそうだな、うちの果物や野菜をたっぷりあげよう、食べて食べて遠慮なく」
大きくてよく熟れた所をもいでカゴに山盛りで渡しておく。
「え~~、こんなにいいの~?」
「どうぞどうぞ、お師匠さんと一緒に食べてください、野菜は軽く炒める程度でも美味いけどスープにするとなお良いよ」
「うん、その程度なら私も出来る、スープの素やダシを買ってあるし、これだけあれば3日分にはなるな」
「無くなったらまたあげるから、その時は言ってよ」
「え~、ありがとう、じゃあお礼に占いでもしようか、恋占いでも将来でも」
将来と聞いてなぜかドキリとする。
自分の将来は知られない方が良い気がするのだが、それは何と言ったらいいのか説明のしようがない・よな。
「それじゃあ恋占いにしようか、恋・占・い!」
「え! 何々、恋占い? 誰の?!」
ジョーイが話に食いついてニコニコと寄って来て興味深々の様子である。
彼女も冒険者業の傍らうちの畑で働き、報酬に果物や薬草を受け取っていき風呂に入るのを楽しみにしている。
ほぼ家への住み込みでしばらく働いて、冒険業はご無沙汰になっている。
だから少し退屈しているのだろうか?
「恋占い? ネビィの? 私のも私のも」
ジョーイがいそいそと寄って来る・・ 仕事は良いのかと思ってもこちらが話を始めたから仕方ないか、うん、などと思っているとフレアまで横目で見ながらだんだん近づいて来た。
フレアはジョーイの冒険業仲間であり、女性コンビで性格や出自が違うがなぜか気の合う様子の二人である。
それはともかく女性は恋話が好きなようで恋占いも同様、花や星、カードや小石まで様々な方法で占いをするのだ、素人だろうが単純な方法だろうが、怪しげな事だろうがお構いなしに行うのが女性であり、そのバイタリティは凄いし掛ける時間もそれなりらしい。
「あら、占いですの? じゃあちょうど良いから休憩にしましょうか、飲み物でも用意しますわね」
何がちょうど良いのか不明ではあるが口出しはすまい。
女性の興味に横やりは入れない方が良い、ぶっきらぼうな自分でもその程度は心得ているつもりである。
そこへなぜかリーシャがアイリスを連れてこちらに向かって来るのが見えた。
リーシャはお隣に住む幼馴染であり、ギルド長の姪アイリスと共に魔法を学んでいるので一緒にいる事がよくあり、うちに来るのもたびたびなのだが、これは偶然だろうか恋占いの予感なのか・・・ 。
「へ~ 恋占いするんだ、ミミーさんが? アイリスも占ってもらう?」
「うん、 いい?」
耳ざといと言うのか、ろくに聞いていないはずだがリーシャは知っていた。
カンなのか? それとも離れていて聞こえたのか? なぜなんだ?
「そっちの二人も占いたいんだ~、良いよいいよ幼い恋心、可愛いね~」
「私はそんなに幼くないんだけど・・」
リーシャは自分より少し下程度だが、見た目は子供っぽくアイリスと居ると幼い姉妹の様ではあるが彼女はご不満の様子だ。
中身は大人で、母親似でしっかりしているからなおさらだと思う。
「ネビィ君、どこ行くのかな?」
そろそろと離れようとしているとミミー・ムーアさんに呼び止められた。
「え? 邪魔しちゃ悪いから畑仕事に戻ろうかなー と思っていますが、何か?」
皆の視線が集まる中、やや緊張しながらも平静を装う自分、問題無いよね。
この程度の気を遣うのはマナーだよね、常識だと思う、うん。
「何言ってるの? 元はと言えばネビィへの御礼なんだから行っちゃダメでしょ、真っ先に占ってあげるから、ね」
「え? いえ自分は後回しにして皆を先にしてくれますか、自分のは明日にでも・急ぎませんから本当に、構いませんよ」
「でもネビィが先約ならしょうがないよね、みんな」
ジョーイが言うと皆素直にうんうんと頷く、なんでこんな時に意気投合?
女性に囲まれて恋占いて、凄く居心地悪いんだけどそう思うのは自分だけ? ただの遊びと割り切るべきなのかここは。
そんなふうに思っているとムーアさんの占い準備が始まった。
地面にやや大きめの図を描いたり、石を並べたり枯れ枝を地面に刺したりと少しばかり時間のかかりそうな様子で皆興味深げに見つめていると、そこへ母さんがやってきた。
「あらなに、占い? え!、恋占い? あらあら、私も入れてもらおうかしら」
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あんたもう結婚してるだろ、父さんに言いつけたるぞ!




