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クリスタル・ロード ~失われない大国の王を目指して~ 【22000PVを感謝します】  作者: 前田  裕也
2 目覚めの章

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クリスタル・ロード 0187   嵐が去って

鉤爪はいつの間にか外れていた。


爪の傷が痛い、あいつも火傷がひどいはずだがもっと焼いてやれば良かった。

出来ればローストビーフのようにこんがりとだが。

今回はここまでにしておいてやろう、これ以上は対外的にまずいらしいし、まだ閣僚たちが睨んでいるので落ち着かない・・・ 向こうが悪いのに。


館の庭がずいぶん荒れてしまい、木々が折れ花が散って落ち葉のように溜まっているのがいつも手入れが行き届いているだけに、非常に惜しい。

礼装の閣僚たちも汚れてしまって・・そちらは別に構わないが。


「ネビィさま、凄かったですね~あの王子がたじたじでしたよ、さすがはドラゴンソードの選んだ方ですよね、私の思った通りでしたわ!」  


いきなりお騒がせの外務娘が迫ってきた、まだ帰ってなかったとは。

この子も服が汚れ髪が乱れているのに動じていない、いつも通りの図太さだな、この娘は。


「あれほど竜殺しにこだわるのなら、あの王子にあげた方が良かったのでは? なぜこちらになんですか?」

「あら? あの王子に・・ですか?!」


何を言うのかと目を丸くしてこちらを見る。


「そうはいきませんわ、あちらは大国で力がありますもの、外交は力のバランスですからこちらに力を付けて戴かないと、ね」


満面の笑顔で言う、愛想は良いが中身が嫌な話だ。

さすがは外交担当だが近づきたくない。   


「クランバリウス嬢、お送りいたします」


父さんがやって来て話しかけて来た。

助かった早く連れて行ってくれ、このお騒がせ娘。


「あら、私はネビィ様と今後の事をお話ししたいですから、ゆっくりと」

「竜王国の王子をお連れしたのに、一人で帰すのは対外的にまずいのでは?」

「う、それもそうですね・・ では残念ですが今日の所はこれで」


渋い顔でお騒がせ・クラン嬢はお付きの者達と王子を追うように帰って行った。

父さんが淡々とだが釘を刺してくれたおかげで助かった。

つい長い溜息をついてしまう。


「よう、お疲れさん・だな」  


にやけながらの父さんにそう言われるとなおさら疲れる。


「自分に関係ないからとお気楽ですね、こちらの気も知らずに」

「関係はあるさ、自分の息子が竜王国の王子を殺したら大変だな、どうしようかな~とハラハラしていたぞ、まったくな」

「嘘くさいです、凄く!」


そんな事を言っているとこちらの職員がそそくさと何かを持ってやってきた。


「領主代理、こちらの物はいかがいたしますか・まだあると思いますが、王子の装飾品の一部と思われます」


その手には様々な宝石と、金銀の飾り細工があった。

アイツから剣でさんざんはぎとってやった物だが、置いていったのかい、それどころではなかったとは思うが成金野郎め。


「よく探したうえで纏めてお送りしますと連絡しておけ、多分要らんと言って来るだろうがその時は貰っておけばいい、また来るだろうから来客用の部屋を豪華にするかな」


笑いながら父さんが言うと職員は複雑な顔で戻って行った。


「また来る? あいつが? 嫌な事を・・・・・」

「来るさ、あのまま引っ込んでくれるとは思えんぞ、そん時はよろしくな剣士様」

「うええ」


アイツがまた来るなんて、しかもあの娘クラン嬢と共にダブル攻撃とは、おお嫌だ、誰か代わりに相手してくれ、こちらの外高官はどうしたんだ。   


「外交を嫌がるようじゃ出世できんぞ、どんな相手でもあしらえないとな~ あの娘を見習うのだな」


確かに外交は苦手で失敗しそうだ、遠い昔それで大失敗をした気がする、ずうっと遠い記憶ではあるが外交など考えたくなかったから。

嫌だからと避けては通れないか、父さんの言う通りだ。


「ちなみにあの王子は継承権第4位だが、上の王子たちはもっと難物らしいぞ、そっちは領主が扱うそうだが少しは手伝ってやれ」

「そういう父さんは高みの見物とはずいぶん薄情なのでは?」

「見物では無いぞ人聞きの悪い、これでも領主代理だ色々考えているぞ」


こういうことをしれッと言っておいてあっさりとやり過ごすのが父さんの図太さなのだ、あの娘といい勝負だから信用できない。


「それにしてもこれでドラゴンソードが本物と竜王国に知られた故、どうするかだな、あの娘の思惑通りこちらが矢面に立ったわけだ」

「やっぱりそうですか、その為に連れて来たとは何て奴だ」

「あの国だって生き残りに必死だからな、あの娘の独断のようだが本当の所はわからんぞ、あそこの国王とてバカではない」


いざとなればあの子を切り捨てて手のひら返しか、それも外交という事か。


「竜王国が狙うのはわが国だけではない、あの国もだ」


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