クリスタル・ロード 0179 覚醒したらしたで心配が
「よお、ネビィ 久しぶりだな」
考え事をしながら通りを歩いていたら急に声を掛けられた。
我に返ってみると、この人は・・ 獣魔使いの・・・名前なんだっけ?
「名前思い出せないだろ、俺の名前長くてなかなか覚えてもらえないんだ、だからジューマと覚えてくれ、通称だ!」
獣魔使いだからジューマ? それでいいんか?
「最近ネビィ、顔見せなかったろ? どうしてたのかと思ってな」
そうだ、この人から獣魔の扱いを習ってたっけ・ しばらく行ってなかった。
「すみません、領主様から色々仕事を仰せつかって掛かりっきりになっていて」
「おお、若いのに要職らしいな! 出世しそうじゃないか」
「ようやく一段落なので近いうちにまた教わりに行きます」
「おう、レックスって若いのも来て張り切ってるぞ! あいつ素質有りそうだ」
ん? なんか嫌な名前を聞いたような、誰だったか・・思い出したくない名だ。
レックス?
「おっと、買い物せにゃならんかったんだ、それじゃまたな~」
おじさんはそそくさと商店街へと消えていった。
夕食の買い出しだろうか。
自分も寄るとしよう、果物でも買って帰るか? 最近は隣町からの珍しい物が色々入っているそうだ。
外国からの物も増えて来たし、国交が盛んになってきたのだろう。
この国が大きくなりそうなので接近してくる国が徐々に出てきている。
その分もめ事も起きそうで頭が痛くなりそうだが領主は平気なのだろうか、自分は政治的な事は苦手なので見習いたい。
ドラゴンソードの事もだが、武力は遺跡で見つかった兵器もあり運よく手に入ってきた。
剣術だけでは心もとないのが国家だから。
経済やら武力や農業や医療など領主から教わったことは、凄く参考になる。
あの人はお気楽なようでよく考えてあるから・・ 多分名君なんだろう。
獣魔部隊の創設もあっさりと認めた。
前例無い事で成功の見込みは不明なのにだ、先を見越しての事だろうが。
獣魔部隊・・・ またなにか嫌な感じがしたが・・ レックス? 誰だっけ?
「あ~~~~~~~っつ !!」
つい大声を出してしまい通りにいる人々から注目を浴びたので、口を閉じて足早に通り過ぎる・・・・・・ 赤面してしまいそうだ。
アイツだ、あのうるさい熱血やろう、レックス。
前に試合であいつの剣を折ってやったが、あれからもうっとおしく絡んでくる奴。
アイツが獣魔部隊に入ったと? 素質有りそうだと? 嫌な知らせだな。
習いに行くとあいつと顔を合わせてしまうのか、さりとて行かずにあいつに差を付けられるのはなお気分が悪い。
どうしてやろうか、獣魔レースでも持ち掛けて負かしてやろうか。
しかし素質有りそうというのも引っかかる、剣術よりはできるのか?
獣魔を騎馬としての剣術試合はどうだろうか・・・いけるのでは?
待てよ、最近あいつと似たタイプをどこかで見たような気が、 どこだっけ?
・・・・・・・・ う~~~ん、どこだ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ え~~と
・・・・・・・ ああ、あの隣国の外務大臣の娘・・・の、兄? そうだ、兄だ。
名前は何だっけ、レックスより腕の立つ・・・ ん~~ 何だっけ。
名前はまあいいか、とにかくあいつをレックスにけしかけるのはどうだ?
似たタイプだから張り合って 良さそうだし、あいつらが友達になるとは思えないし、挑発して争うように誘導しては? うん、名案じゃないか?
そうなるよう妹の方にも動いてもらうか。
お騒がせ娘は、喜んで関わってきそうだから役に立つだろう。
兄をからかっていたようだし、その辺で誘導するか・・・ 獣魔部隊の件で協力を仰ぐとの名目でいいだろうと思う、親睦会を兼ねて相談とパーティではどうか。
領主にも話すか? それに父さんにも。
そして夕食後、家庭にて。
「ドラゴン・ソードが覚醒したって?」
「父さん、声が大きい!」
それは国家機密なんだから世間話のように思わんで欲しい。
「本当にあなったって無頓着だから」
母さんが呆れたように言うが本当にそうなのだ。
今までは小さな領地の隊長程度だったがこれからは違うのに、まったく。
「本物とわかったら何が起こるかわからないから、領主だって極秘にしたんですよ」
「そうか、しかしお前に管理できるのか」
むむ、痛い所を突いて来る。
家に国宝級の物を置いて良いのかと自分でも思うが、信頼された以上は応えねばと。
「腕を見込んでと領主に言われたら断れますか? 父さんはできるんで?」
「あの人、おだてるのが上手いからな」
「そうねえ」
おだてかい、おだてなのかい、それでもドラゴンソードの解明は魅力的だしね、やめるとは言いがたいよ。
父さん達は果実酒を飲んで寛いでいるがこちらは肩に荷が乗っている。
「はいこれ、あなたが買って来た果物で作ったシャーベットよ、リーシャが考えたんですって」
あの果物の他にイチゴやブドウを少し入れてあるしミルクと蜂蜜入りか。
だんだん凝ってきたようだ、子供向けの甘さだけど。
「うん、美味しいよ」
「リーシャに言ってあげなさいな」
そういうのは照れるんだけどしょうがないか、気を使われる分は応えないと。
自分はぶっきらぼうだからなおさらだ。
「それにしてもドラゴン・ソードか、これがばれたら龍王国が黙っていないな」
父さんが酒のグラスを見つめながらそんな事を言う。
龍王国、以前のドラゴン襲来となった件の被疑国。
国力の半分以上がドラゴンによるとのドラゴン大国で、歴史と伝統の重い国。
一番ケンカを売ってきそうな国だ。
ブックマークや評価をありがとうございます。
大変励みになります。




