クリスタル・ロード 0178 ドラゴンの余韻
アイリスの掘った穴は深さ1m以上になっていた。
安全と言うほどではないが破片を防ぐ程度はできたろう。
先生の障壁のおかげもあり、皆怪我無く済んでよかった。
「でもドラゴンは襲ってこなかったのか」
「うん、あの後すぐに飛び立っていったよ」
リーシャが肉をかじりながら言うとアイリスがシチューを食べながら頷く。
レフ達も同様だ。
「ドラゴンソードがあると気付いたんじゃないか? 自分の天敵ぐらい察するのが本能ってもんだろ」
「そうだな、あの威力は嫌でもわかると思うぞ、ドラゴンでも無傷では済まんだろ」
確かに体が消し飛びそうな威力ではあったが、あっさりと逃げた?
それは信じられないが・・・・ 無駄な争いはしないから、だろうか。
「でも、やったな! 本物のドラゴン・ソードだぞ、伝説級だろ、それ」
「本物とは驚きましたね、ドラゴンが来たから覚醒した・とかでしょうか」
「領主様が喜びそう、また良い物が手に入ったと」
「でもあの国が返せと言ってこないかな・・ 偽物と思ったからくれたんじゃ?」
リーシャの言う事はもっともだ。
本物なら自分達が持ってる方が良いと思うだろう、使い手がいないとしても。
「だからこの事は他言するなよ、極秘としよう」
グロフが言うと皆がうなずく。
「ここで覚醒して良かったね、外だとすぐ噂が広まりそうで」
「ドラゴンが来たのは驚きでしたけどね」
「全くなんでいきなり大物が出るのか、人騒がせな」
「大物同士の縄張り争いかな、とんだ災難だがな」
大型獣、それもドラゴンまでいる場所とは・・・・・
それに勝手に狩猟することになって問題ないだろうか、ギルド長や領主に報告しておかなければならないな。
「でもこれでずいぶんお金入るよね~ 、私達そろそろ家買える? ねえ?」
「そうですね、共同の家で各一室広めでゆったりと・・ 」
「悪くないけどな、遺跡に住む事も出来るらしいぞ」
遺跡? そう言えば居住区が有ったけどあそこに?
「そんな話になっていたんですか? いつのまに」
しばらく遺跡調査から離れていたので知らなかった。
「遺跡の管理や警備の仕事が有るからな、家を提供してくれるそうだ」
「でもお仕事含めてか~~ 、何か疲れない? くつろげないよ」
「そうだな、環境は良いし安全だが」
グロフが酒を注ぎながら同意する。
フレアが貰ってすぐに一気に半分ほど飲んで、微笑む。
「くつろげる点ではネビィの家の間借りの方が良いですわ、お風呂も有るし」
「そうそう、大きなお風呂いいよね~」
「風呂があんなに良い物とは思わなかったよな、体を洗うだけかと」
「全くだ、仕事中でも入りたくなる・・あれは良い」
お風呂が評判良いのはなんだか嬉しい。
家を持ちたいのはわかるができればずっとうちにいて欲しく思うから。
しかし引き止めるわけにはいかないし。
「アイリスもネビィの家のお風呂入りにおいでよ、広くて気分いいよ」
「うん、行きたい、ギルドのは狭くてぬるい」
「じゃあギルド長に話しておこう、許可くださいって」
リーシャ達は食事を終えてお菓子をつまんでいる。
リーシャお手製だろう、最近はアイリスもお菓子作りを学んでいるそうだし本当に姉妹のように仲がいい。
しばらくすると日が傾き夕焼けの気配がしてきた。
ここは遺跡の中ではなく日が見えるが、今でもどこの地域か不明なのだ。
他の大陸かもしれず、これも遺跡の謎として不可解な事だ。
「さて、そろそろ帰るか、明日から素材回収だぞ」
「ネビィは剣の事を色々聞かれそうだな、参加は無理か?」
「領主次第ですが、多分そうなるかと」
「アイリスは出られる? ギルド長が心配するかな」
「でも出る! おじさん連れてくる」
「あ~、ギルド長は調査の名目が有るから来そうね、それならいいか」
リーシャ達の話に先生が納得している。
またドラゴンが来はしないだろうがギルド長がいれば安心だろう、あの人は強いから・・何せ元凄腕だし、アイリスの為なら体を張るだろう。
それにしても皆が無事でつくづく良かった。
そして翌日、やはり領主による聴取が長々と続いた。
終わったのは夕方、日が傾き始めた頃だ。
領主の館を出るとぐったりとして体が重い・・ 昨日のあの剣で疲れているのにまるで犯罪の取り調べのようだった。
領主はともかく側近たちは鬼か。
そもそもあの威力の再現はできなかったのが痛い。
多分ドラゴンとの対峙あってこその発現なのだろうとの結論になったが、自分が責められてもいかんともし難い? だよな。
そのうちドラゴンに向かって突撃を命令されそうな気がする。
お前達がやれよと言いたい。
そんな事を考えながら通りを歩いていたら、声を掛けられた。
やっと涼しくなってきましたね、皆さん体調崩していませんか。
自分は夏バテでしばらく不調でした。
お気をつけてください。




