クリスタル・ロード 0177 炎の余韻
炎の色から真っ白な光となり、世界が白い。
眩しいぐらいの白さで何も見えない。
轟音で満ちていた世界だが、徐々に音が小さくなっていく。
そして静寂が訪れ光だけとなった。
ここはどこだろう、魔物達はどこへいったのか、そして皆はどこだ?
光りがやや弱るとうっすらと動く何かが見え始めた。
魔物・・・ではない・・・・穏やかな動き、何だろう?
声? 小さな声が聞こえて来た。
グロフ達だろうか?
なんて言っている? 耳を澄まして、何とか聞き取れるかどうかの声。
「 ・・・・ どんな人に渡るだろうかな、・・ 貴族か、あるいは有名剣士か、それとも好事家だろうか、大事にしてくれるといいがな」
大事に? 何を?
「 ・・・ 俺より、お前の事が心配だよ、どんな扱いをされるだろうか、金に換えられるだけじゃないか? しまい込まれて日の目を見ないかも・・ 」
お前とは誰だ?
「悪人に渡ったらどうするか、そうならないよう方法は無いだろうか・・・・ 」
悪人? 渡る?
何の心配をしているのか、誰だ? グロフ? レフ? お宝が見つかったか?
宝より取りあえず命の心配をすべきだと思うが。
「・・・ いっそ俺の手で封印するか? ・・ その方が良いのか・・・ 」
封印? 危険な物なのか、ならばその方が? ギルドに任せるとか・・
「・・・・・・・ お前はどう思う?・・・ お前の意志に従うよ・・・」
自分? 自分が聞かれているのだろうか?
自分に扱いきれないなら・・・・ ?
「封印も・・・・やむなし・・・・かな? ・・・・」
声が聞こえなくなっていく、だんだん小さくなり聞き取れない。
誰が誰と話しているのか? それだけでもわかればと思ったが、わからずじまいだ。
そして光が弱まり徐々に色が付いて来る。
元の風景、見晴らしの良い原野、しかし木々が倒れ煙を上げ辺りは焦げ臭く、あの大型獣が倒れている・・・それも近くから遠くまで数十頭・・・体が裂けて焼けただれ、炭化し煙をなびかせて・・・。
かなり遠くを逃げていくのが一頭、二頭? 他は死んだのか。
皆は? 皆はどこだ?
慌てて見回すと、後方数十mに伏せている一団が、こちらを向いて頭を上げた。
無事だったようだ。
ほっとして息を長く吐いた。
自分は剣を持って腕を横に伸ばしたまま立っていた。
腕は痺れ硬直し、足ががくがくと痙攣のように震え倒れそうになるが堪える。
ゆっくりと腕を下ろし、剣を地に付けようとするその時、気付いた。
まだ大きい物の気配がある。
あのドラゴンが、生きている。
100mほど離れた所に翼を広げ、無傷でこちらを見つめている。
ドラゴンには当たらなかったのか?
それともまるで効かなかった? あれほどの威力なのに?
まだあれと戦わないとならないのか? 既に体が限界なのに?! どうやって?
それを見透かしているかのようにドラゴンは悠然とこちらを見つめている。
圧倒的な余裕の態度で。
全身から嫌な汗が吹き出し体が震える。
呼吸が苦しい、 目がかすんで痛み、腕が、足が引きつり重い。
その時、ドラゴンがまた大音響での咆哮をした。
びりびりと辺りが振動し、体に痛いほど響き気が遠くなっていく。
そして倒れそうになった時、ドラゴンが飛び立った。
一気に高空まで上がり、遠ざかって行く。
離れる?
逃げた? まさか、向こうが圧倒的に優勢なのに? なぜ?
見逃された? どうしてだ?
それ以上考えることができぬまま、気が遠くなって体が倒れていく。
地面が近づく・・・ 草地だからケガは無いかと思いつつも止められない。
そして何も見えなくなった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あ、起きた!」
何か良い匂いがする。
料理か? 肉? シチューだろうか。
近くでレフ達が食事の支度をしている。
ここは・・・ あの場所だろうか? 林の中だが・・・入り口の近くか?
近くに馬車が止まっている・・・・迎えが来たのか?
「食べられる? もう平気?」
リーシャがスープを持って来て聞く。
「ケガは無いはずだけど、具合悪くない? どこも痛くない?」
全身が痺れ引きつってはいるが、ケガではないようだ。
「ああ、大丈夫みたいだ、ありがとう」
「良かった、はいこれ・ あのおっきな獣の肉だよ、柔らかくて美味しいの」
あれが? 固そうに見えたが・・・ 美味いのか?
「まあ食ってみろよ、本当にうまいぞ! 山ほどあるんだ、しばらく食えるぞ」
「あれ達だけじゃ食いきれんて、素材も有るしかなりの金になるぞ」
レフとグロフの話に皆がうなずく。
「本当、凄い量ですね・・ 回収を頼まないと、すぐ手配しますね」
「ね~~、 久しぶりの大物だよね、爽快~~っ !」
「ご飯いっぱい、美味しい」
「アイリスも頑張ったもんね~ 、 たくさん食べてね」
ドラゴンの事をみんな忘れているのだろうか。
最後の咆哮はすさまじかったと思うが・・・・しかし疲れて話す気になれなかった。
黙ってスープを飲むと体にしみ込むようだ。




