クリスタル・ロード 0175 本物登場??
あたりが騒がしい? でも女性達は口を閉じている・ なんだ?
叫び声? 剣を止めて音に集中すると木々のざわめきと枝の折れる音もする。
羽音? それに足音、地響きもだ。
この辺は強い獣はいないはずではと思うが、この音は小物ではない気がするぞ。
「お、おい、この音って・・」
「大型獣じゃない?、もしかして」
「そ、そんな気が、ねえ」
「まずいな、みんな撤っ・」
グロフが言い終わる間もなく大木を跳ね飛ばして現れたのは、ドラゴン、しかも大型のドラゴンが低空飛行で、と、それに続いて恐竜?のような岩のごとき体の獣。
ドラゴンが追われているのだろうか。
しかしドラゴンの方は怯えているようには見えないし、こちらの方を見つめている。
「ド、ドラゴン?! 本物!、ドラゴンソードを試していたら本物が現れたよ!」
「これはドラゴンを倒せとの神のお告げか?」
「まだ普通の試し切りだけだろ、無理だろうが!!」
「馬鹿なこと言ってないで、何とかしてください」
4人組が騒ぐのも尤もだ、 ドラゴンは魔獣の王で最強レベルと言われる相手。
張り合う獣もいるにはいるが、普通はまず勝てないほどだし争えば周りに甚大な被害が出るのが当たり前のほどだ。
「先生、魔法でなんとかなりませんか」
倒すのは無理でも一時的に拘束でもできれば。
「無理ね、アイリスとリーシャと3人がかりでも・下手に刺激するとなお危ないし」
・・・・ならどうすればいいのか、逃げるとしても隠れる場所は遠い。
ここは見晴らしが良いのですぐに追いつかれるだろうし、背を向けるのは危険なのだ。
それは小さめの獣でもいえる。
グロフもそれがわかっているから逃げろとはもう言わない。
皆で硬直状態だが、なぜかドラゴンも動かずこちらを黙って見つめている。
だが追って来た恐竜型は違った。
こちらを見ろとばかりに牙をむき出し、大口を開け首を振りながら吠える。
するとドラゴンはそちらをふり向き邪魔するなとばかりに咆哮を・した。
その迫力、恐竜の比ではなく声で地響きが起き頭が割れそうなほど響く。
視界がブレてぼやけてしまうほどの凄まじさ、声だけで攻撃になるほどだ。
皆が耳を塞いで叫んでいるが、ドラゴンの声に比べると雀のさえずりかな?
しかしこれは幸運、ドラゴンの気がそれたので皆に避難の合図をして離れることにするとすぐに通じて一斉に走る。
先生達が魔法で補助してくれてるらしく体が軽く早く走れるので、すぐにある程度の距離が取れて一安心だが後ろでは大型獣の戦いが始まった。
地割れが起きそうなほどの衝撃が地面に伝わり、大地震の様で足を取られ転びそうになりながら更に走り遠ざかる。
「まだ走るの~~? もうだめ~~~っ」
「全力疾走はきついですわ、さすがに」
「だから体力付けろといつも言ってるのに」
冒険者の割には体力のない人達が音を上げる。
リーシャ達の方が体力ありそうだが魔力補助のおかげなのか? 若いからか?
「俺はまだ走れるがこの辺まででいいか」
レフが強がりじみた事を言うが黙っていよう。
「魔法障壁を張っておいたから少しは持つはずよ」
「自分も張る」
まだ1000mほどしか離れていないが息が付けて一安心、だが音はまだ響いている。
「なんでドラゴンや大型獣が出て来たんですかね」
「全くだ! この辺にはいないはずだよな、さんざん調べたし」
「他のチームもそう言っていたから問題ないと思っていたが・・・」
グロフ達が事前に調査していたし、自分にも悪い気配は感じないと思ったんだけど、なぜいきなりドラゴンが現れたのか? とにかく驚いた。
「アイリス大丈夫? 疲れたでしょ」
「うん、まだ走れるし魔力充分、平気」
小さいのに頼もしい事を言う・・ 大きい人達がへばっているのに。
「何その目!、最近冒険者業してないから体がなまってるだけよ」
「私、走るのは苦手ですわ」
「少し体力が落ちたかな、少しだけどな」
「鍛えなおさんとダメだな、これから鍛錬増やすぞ」
などと言っているうちにもドラゴン達は暴れ、地響き立てながら取っ組み合い噛みつき炎を吐きと忙しく凶暴この上ない。
今はとどまっているがこちらまで来そうな勢いで落ち着かない。
「ねえネビィ、その剣光ってない?」
唐突にリーシャが背中の剣を指さして言った。
「光って?」
背中だからよく見えないが光っているか?
「光っているんじゃないわね、魔力を放っているのよ」
先生がリーシャの後ろから見つめている。
「うん、魔力がにじみ出ている・・ 中はもっと凄い、とても強い」
アイリスが食い入るように見つめ、瞳が輝いているのは魔力に魅入られているかのようだ。
「それ程の魔力が込められているなら、やはり本物のドラゴンソードなのか?」
「そうね、ようやくそれらしい事になったわね」
先生が期待の篭った目で微笑む。
魔力の事になると目の色が変わるのはさすが魔法担当。
「いきなり目覚めたのはあのドラゴンのせいなのか?」
グロフが言う通り、それしかないだろう。
「そうですね、たぶん」
「じゃあそれ本物なんだ、てっきり偽物かと思った」
「ねえ、それじゃなおさらレフには無理ですよね」
「何でだよ!」
さっきまではただの大剣だったのに今では魔力に疎い自分にもわかる。
剣から熱が伝わって来るようだが温度ではなく、体の中までしみ込むような感覚。
これが魔剣という物なのか。
ドラゴンの咆哮が一段と大きく聞こえてきて持っている剣にびりびりと響く。
「今のうちにもっと離れよう、みんな、走るぞ!」
グロフがそう言って走り出そうとしたその時、剣がまるで燃え上がるように熱く感じた。
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