クリスタル・ロード 0174 どのへんがドラゴン・ソード ?
的が揺れてレフへ向かい構えから剣を一閃。
だが浅い! 切っ先で10cmほどしか切れていない。
「ちょっと待て、いま的が変な動きをしたぞ、逃げられた」
「それはそうですよ、実戦じゃ相手がよけて当たり前なんだから」
先生が冷めた顔で言うとレフの顔が渋くなる。
「そりゃそうだがこれは試しなんだから」
「弱音を吐くな~~、それでもベテラン冒険者か~」
「そうそう、大人なんですからねえ、頑張っていただかないと」
ジョーイとフレアがまたも冷やかすとますます渋くなる。
「お前らはよ~ 、黙ってろよな~~」
「無理なら俺が代わるぞ、普段は槍だがドラゴンソードも興味ある」
グロフまでも冷やかし始めた。
黙って見守れないのかと思うがたぶんこれで気が合うパーティなのだろう。
「よっしゃ次来い、今度は決めるぞ」
「ほんとかしらね」
次は少し大きく揺れて左右にぶれながら向かって来た。
が、レフは素早いフットワークでついていき剣を振り的を一部切り落とした。
「お~っ 当たった!」
「今度は当たりましたね~~っ」
「本気を出せばな、 でもあの的少し硬いぞ、手が痺れた」
「あ~、言い忘れたけどあれ軽石を入れてあるから、手ごたえあるわよ」
先生が脇から注釈を付けた。
カルイシ? 水に浮く石ね、石にしては柔らかい物か、骨の代わりかな?
妙に手間をかけてると思ったらそんな事をしてたのか。
「何でも来いだ、さあどんどんよこせ全部切り刻んでやるぞ!」
「じゃあ今度は二つで、リーシャも頑張ってよ」
「はい」
今度は的が二つになって縦横に揺らしながら変則的な動きをさせると、レフは的を躱しながらもなんとか切り付けようと動く、が、やはり浅くなって中心を外している。
「甘い甘い、レフ、それじゃ実戦なら反撃されてるぞ」
「く、くそ! やはり大剣は勝手が違う」
更に的が増えて4つになると汗だくになり動きについていくのがやっとになった。
「ハイ終了、アイリスもお疲れ様」
小さなアイリスも大変だったはずだがよほどしっかりとして、やや紅潮しているがまだ余力がある顔だ。
レフは息が乱れてかなりへばっている。
「まあ頑張った方じゃない?」
「もっと鍛えていただきたいですわね」
「このやろ、勝手な事を言いやがって! ・・・ げほっ、ハア・・」
「じゃあ次はネビィだな?」
「お、お前はやらないのかよ」
「俺は槍の方が良いしな、剣は性に合わん」
「てめ、さっきと言う事が・・ 逃げやがって!」
息を切らしながら剣を手渡してきた。
柄に熱がこもっていて少し熱いぐらいになっている。
「アイリスも疲れたろ? 少し休憩しようか」
「大丈夫、まだまだできる!」
きりっとそんな事を言い胸を張る・・ 小さいのに気合が入っている。
ずいぶん鍛えてるのだろうか。
「アイリスがするなら自分も」
リーシャまで気合を入れて杖を構えている。
この二人はライバルなのか? 仲の良さが互いに切磋琢磨か。
「あらあら、二人とも頑張ってるわね~ じゃあ私もそうしないとね」
「ほんと小さい子が頑張ってるんだからレフも体力付けてよね」
「そうですわ、大人の男の威厳をですね」
「くぬやろ、 二人とも言いたい放題だなまったく」
自分も頑張らないと叩かれそうだ、何とかいい所を見せないといけない。
鍛錬は続けているので体力は十分なはずだが、大剣の扱いはやや不慣れだ。
重さは魔力で消してくれるがサイズはそうはいかないからな。
しかし長物なら父さんの仕込み槍のもろもろをさんざん使っている・・ 正統派の武器ではないが。
「さて、ネビィ君はどうかな? 少年勇者来たよ~」
「レフより期待できそうなのはなぜかしら、小さいのに不思議ですわ」
「お前ら、黙ってろよほんとに」
座って観客となっている4人のうち3人が騒々しくて気が散りそうだが集中せねば。
気を引き締めて柄を握りしめる。
「じゃあ先生達、お願いします」
先生はニッと笑って杖を上げた。
「リーシャ、アイリス、いいかな~ 気張って行こう!」
「「はい」」
的が動き出し向かって来た、 が?
え?! 的が、5つ? 3つじゃなかった? いつのまに増えた?
「的の数は期待の大きさだよ! ファイトっ 」
「そうですわね、小さな体で大きな期待ですわ」
「俺は小さいのかよ!」
騒がしい人達は置いといて、ランダムに動く的に集中・・ この手の訓練もさんざん父さんにやらされている、おかしな武器か軽い剣を持たされてだけど。
大剣を使うのに適した剣技は、 ・・・ 旋徒流というのが有ったな、ずいぶん昔に覚えた流儀だが、あれを使うか。
大上段に構えて隙があるように見せながら、横に振りだったな。
「ん?」
グロフがまず反応をした。
真面目に見ているだけあって何か感じたのだろう。
そして剣を体ごと回し重心が剣と体の間に・が、基本の、旋風歩!
「ふっ」
ブオンと音と共に体が振り回され腕が引っ張られ、足はかろうじて回転に合わせ進めながらも滑らぬよう力を込めるが、体がもつのかわからぬほどの負担がかかる。
しかも的の動きを見ながら太刀を制御しなければ。
舞踏剣よりも体力を使う剣技、竜巻の動きのようにだ。
「「おおっ!!」」
グロフとレフが声を上げるが女性達はポカンと見つめる。
風切り音で聞こえないせいかもしれないと集中し、的を切り付けると4つの的は真っ二つになったが一つは端を斬った程度だ。
「む? 浅いな、惜しい」
グロフが前のめりになってそう言ったとき、周りがなにか騒がしいのに気付いた。
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