クリスタル・ロード 0173 続ドラゴン・ソード
やっと体調が回復してきました。
「これがドラゴンソード、ねえ？」
「どこが普通の剣と違いますの？」
「重さ・と色か？」
「確かに重いんですよ、これ。 でもそれ以外だと・・・・」
８人皆で剣を囲んで見つめているが顔をしかめるだけで結論が出ない。
議題は「これ本当にドラゴンソード？」 だ。
国宝扱いされていた割には見た目の今一つな剣である。
おどろおどろしく瘴気を放っていたり神聖な輝きでもあると良かったのだが、一言で言うと 「地味」 な剣であるから。
「見てるだけじゃわからんな、とにかく試してみるべきだ」
「ようし、なら俺がまず使ってみよう！ 獣狩りだ！ なるべく大型のをな」
「レフが？ 大丈夫？ こんな大剣使ったことないよね？」
「ですわね、いつも軽い剣で速さ重視なんだから」
体格で言えばグロフに合いそうだが彼は槍使いだ。
「剣は向いてなくてな、子供の時に少しやった程度で」
「じゃあ他はネビィしかいないぞ」
皆の視線が集まる。
剣の腕は自信あるが、子供の体で大剣は・・・荷が重い・・かな？
「大丈夫、私が支える」
アイリスがそんな事を言い出した。 アイリスが支える？ 自分より小さな体で？
本人は大真面目のようだ
「魔力で身体・強化や、重力制御！ まか・せて」
小さな子がたどたどしく言うのは可愛らしいが、魔力が凄いのは確かだ。
魔法の先生より潜在能力は有るらしい。
「魔法で強化なら俺だってドラゴンソードを使えるよな？ だよな？」
「腕が違うと思いませんこと？」
「だから領主様だって剣を託そうと、ねえ？」
「まだ負けたわけじゃないぞ、押されてるけどな、俺だってまだまだやれる！」
「やる気があるんなら一応候補として、ネビィと交代でやろうか」
お～し、とばかりにレフが大剣を持ちやっぱり重いなとつぶやきつつ振る。
「まずここいらで試そうか、広いし安全だし、獣狩りは後でな」
「じゃあ私が的を造るね、枯れ枝や葉が有るし」
「あの小川に粘土も有りそう」
「じゃあ私は小石を集めようかしら、少し手ごたえあるように」
ジョーイやリーシャ達女性陣が的づくりを始めたので、男達は邪魔な灌木などを片付け周りの安全を確認する。 木に登って見渡すが獣は見えない。
「この辺は野ウサギ程度しかいないからな、二か月ほど調べたんだ」
そう言えばグロフ達が事前に調べてあったんだ。
自分がいない間に調査を進めていたようだ。
「森の奥だと熊やもっと大きなのもいるからな、お楽しみだぞ」
「なあ、燃えるよな！ 肉も山ほど食えるし」
グロフとレフがかなり乗り気で、冒険者魂が再燃か？
やはり兵士の仕事よりこちらが向いてるのか、皆機嫌がいい。
すぐに大きめのヌイグルミ程度の的ができ、こちらの準備運動も済んだ。
「じゃあ始めようか、アイリスよろしく頼むな」
しかしアイリスはリーシャと的づくりの粘土塗りで手が泥だらけだ。
「その前に手を洗おうね～」
「ちょっと待って」
さて準備完了！ 剣を抜いて構え・・ようとしたらレフに取られた。
「俺が先！ 俺から！」
剣を両手で抱えて離れて行く。
「大人気ないですわね、レフは」
「ね～～～」
フレア達からひんしゅくを買いながらもレフが先に試すことになった。
的は雪だるまのような単純な物を木からぶら下げてあり、その前で剣を構えた。
「じゃあアイリス、準備いいかな？ 頼む」
「うん！」
先生とリーシャの前で詠唱が始まり、他のメンバーたちも見守る中魔法が発動。
剣がブレたようにぼやけて見える。
「おおっ？！」
持っているレフが驚いて剣を凝視している。
「か、軽くなった！ 凄い」
ゆっくりと振り始め、だんだんと速くなる。
大剣に慣れていない割には良く振れている。 大振りではあるが速い。
「レフ、腰が入ってないぞ！」
「剣に振り回されてるよ、負けてる負けてる」
「お前らは黙ってろよ！！」
仲間にからかわれながらも頑張っているが、本当に頑張っているのはアイリスだ。
重力制御というのがどうするか知らないが、集中して杖を振り詠唱を続け剣を軽くしているのだ。
「少し慣れて来たからそろそろ的を相手にするぞ」
「じゃあ私が的を動かすわね」
「なら私が細かい動きで補助しま～す」
「二人がかりかよ」
先生とリーシャが的を動かすことになった。
慣れていないうちは動く的は意外に難しく空振りはよくあるんだ、これが。
大きく的が揺れ始めた。 低い位置では膝あたりだが高い所は頭よりずっと上だ。
「よっしゃ、来ーい」
上段、肩のあたりに剣を構えて待つ。
アイリスの杖も止まった。
登場人物
リーシャ ネビィの幼馴染
先生 魔法の先生、リーシャの母
アイリス ギルド長の姪
レフ、グロフ、フレア、ジョーイ パーティメンバー
