クリスタル・ロード 0169 飛び込み訪問
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「それにしても、いったいなんで暴走なんてしたんだ」
今は休戦中、それぞれの陣地へ戻り兵士の治療や休憩、食事中である。
グロフ達も携帯食を齧りながら休んでいる。
「ゴーレム使い達のミスなのか、それにしてもずいぶんお粗末な操作だが」
憮然としてダルシアスがつぶやき、グロフが頷く。
リーシャ達は味方の治療中で離れている。
「フレアの水魔法で一応助かったがな、あれでおおざっぱでさえなければ・・」
それには苦笑してしまうが、あの魔力は捨てがたい。
細かい制御を覚えたら、かなりの戦力になるだろう。
アイリスやリーシャにも言えるが、それぞれの持ち味を生かせればかなり強力だ。
「ただいま~~」
「やれやれですわ」
「かたずけ、終了」
リーシャ達が戻ってきた。
「お疲れ様、さてこれからどうしますかね・・戦闘再開ですか?」
「うーん、こちらの被害は少ないが向こうが問題だ、多分終了か延期だな」
グロフが渋い顔で頭を抱えている。
ゴーレムに飛ばされていた兵士もいたし、重傷もいそうだからそうなるだろう。
そこへ蹄の音が近づいて来た。
「全員撤退準備をしろ、今日はこれで終了だが延期かは不明だ、後に連絡する!」
父さんが言いながら通り過ぎていく。
副隊長が言うなら決定だろう。
皆がざわざわと帰り支度を始めるが、なぜかそれとは別の騒ぎが遠くから聞こえた。
「なんだあれは!」
「おい、ありゃ・・・ 」
「やばいぞ、ドラゴンだ!!」
ドラゴン、翼竜だ、それが数匹翼を広げこちらに向かっているのが見えた。
近づくにつれて大きさを感じさせ、空が暗くなるほどの物だ。
それが低空飛行で真上まで来て、風切り音を響かせながら滑空していく。
地面まで震える音と兵士たちのざわめきを巻き上げながら再び上昇して遠ざかる。
攻撃は無くほっとしたが、何であんなのが来たんだ?
**************
戦闘は結局中止となり、延期なのかは定かでない。
翌日、領主の館にて会議が開かれた。
「ゴーレムもドラゴンも大国の差し金だろうね」
首都から戻っている領主が眉間にしわを寄せてつぶやく。
周りの部下達は黙って聞いている。
「グリーン公国、対戦相手は慣例で形式さえ踏まえればいいんで、邪魔する意味はないだろう? 事を荒立てれば自分らが危ういし」
確かに、対戦を言い出したのは向こうで、反対派がいたって国内で妨害の方が無難だと思う。 戦力でこちらが上なのは充分わかっているはず。
「要は大国が黙ってられないからだね、我が国に味方が増えると更に強くなる、そして自分達を脅かす国になるのではと、ね」
「ドラゴンは同じ国ですかね?」
「違う国かな、妨害して目立つことをすればまずいし、あれは様子見程度だろうけど
人が乗っていたのではないかな」
「自分は一人いたのを確認しました、目立たない服でしたが」
部下の一人が発言したが自分は全く気付かなかった・・人が乗っていたのか。
戦闘が止まっていたから原因を確認しに低空飛行したかな?
「つまり二大国が手を出してきたし、あと一国も来てるだろうね、スパイがもう入ってるかな~ 、ほっとくはずが無いからそのうちわかるよ」
「あ~~ それとですねゴーレムの暴走後乗り込んできたグリーン公国の兵士ですが、その件で公国から謝罪の手紙と贈り物が届いております」
外務大臣からの報告で領主が苦笑した。
「ネビィ君にやられた彼か、肋骨骨折で治療中だそうだ・・こちらからも見舞い品を贈っておこうか、頼むよ」
「あいつ、あれでも貴族の息子だそうだぞ、でも短気ですぐバカをやるとかで身内からよく怒られるそうだ。 問題児だな」
隣のグロフが囁いて来た。
問題児なのか・・・ 誰かに似ている気がする。
でも何でそんな事を知ってるんだ、他国の事なんて。
「こちらもスパイを放ってあるんだと、あの国にな。会議の前に聞いたんだ」
と、ドアの外がざわついている。 前にもこんなことがあったような?
またトラブルだろうか、騒がしくなってきた。
ドアが開いて人が入ってきた。
「勝手に入っては困ります!」
「いいんですのよ、私は外務大臣の代理ですから、 皆さま初めまして!」
なにか華やかで元気な乙女が入ってきたが、誰だ?!
静止を気にせずドレス姿で胸を張ってツカツカと進んで来る。
歳は16ほどだろうか、細身でウェーブのかかったプラチナブロンドの髪が揺れる。
「うちの兄が粗相をしでかしたそうで、謝罪に参りましたわ! ごきげんいかが!」
謝罪に来たにしては妙な態度で、皆あっけに取られている。
うちの・・兄?
あれの妹? この子が?
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