クリスタル・ロード 0168 流れ渦
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ゴーレムは爆発と共に飛び散って破片が兵士達へと向かう。
「水の加護!!」
遠くからの叫び声と共に辺り全体に魔力が広がり水のカーテンが何重にも現れ、ゴーレムを囲んで破片を遮った。
破片はバラバラと落ちていき、兵士に当たらずに済んだようだ。
しかし水のカーテンはすぐに消えず、だんだん大きくなり厚みを増して滝のように?
何だか無駄に魔力を使っている気がするのだが・・・・
この魔法は多分フレアだろう。
そして滝のような水の壁が一気に崩れた。
周りの兵士たちが巻き込まれて流され、叫び声が方々で上がる。
そしてこちらにも鉄砲水のような流れが来た。
「「おわっぷ」」
*******
流れが収まったとき、皆当然ずぶ濡れである。
フレアがグロフ達に怒られている。
「何ですの、私のおかげで破片が当たらずに済んでますのよ」
「アイリスたちに任せた方が被害が少なかったと思うがな」
「全くだ」
「なんですって!」
怒りながらフレアは後方へと離れて行った。
リーシャとアイリスは怪我をした兵士たちの治療に回っている。
当然戦闘は休止中である。
双方一時退却という事になっているが、いつ再開できるか未定だ。
戦場はずぶぬれで非常に滑りやすく、ぬかるみも出来ている。
戦場で雨天も有り得るが、無駄に体力を使うのでできれば避けたいことだ。
「これは一体どうなってる、誰がやったんだ!!」
遠くから声が聞こえて来たが、今度はフレア達ではない。
誰だろう?
「この辺だな、責任者は誰だ?! 予定と違う事をしやがって、やったのは誰だ!」
ごつくて小さめの馬に乗った威勢が良く若い兵士が来たが、これは敵兵だな。
休止中とはいえ敵陣に一人で来るとは・・ 何なんだ。
「これ、やめんかバックマン! 元はこっちのゴーレムの暴走だ、文句を言うやつがあるかバカモン!」
今度は少し大きな馬に乗った年嵩の兵で二人ともごつい体だが背は低めで、自分より少し大きい程度で金属の鎧を付けて長めの剣を背負っている。
「俺がこの部隊のリーダーだが、何か用かな」
グロフが睨みつけながらドスをきかせて穏やか?に聞く。
相手は顔を近づけて話す。
「さっきの事を説明してもらえると、ありがたいんだがね」
「おい、やめろ バックマン! 、申し訳ないうちの者が・・」
上官らしいのが若い兵の襟首を掴んで引っ張りながら頭を下げる。
問題有りの若手に手を焼くのはどこかで見たような気がする。
「なんですの!? 私の魔法に文句がおありなのかしら、ええ!? 」
こちらからも手を焼く人、フレアが出て来た。
リーシャ達が手綱を離してしまったからだ。
「私のおかげで重傷者が出ませんでしたでしょう、わかっているのかしらあなた!」
「流されてケガしたのがいるし、ずぶぬれで泥まみれだぞ」
「兵士がそんなことで何を言っているのかしら、みみっちい方ね」
「何だと!!」
そいつは剣を抜きかけた。
「やめろ、バカモン!」
しかし上官が言い終わる前に自分が仕込み棒を向けている。
刃を出してあり、そいつの喉に突き付けた。
「抜くなら自分が相手だ、剣士なら相手が違うだろうが!」
「く・・・・」
バックマンと呼ばれた男は剣を抜きかけたまま顎を突き出して固まっている。
つい殺気が出てしまったのを感じ取ったのか、冷や汗が出ている。
「ほら来い、バカが!」
上官が場を和ますように苦笑して襟首を掴んで引きずっていく。
皆もやれやれと言うかのように笑みがこぼれていると、空気が変わった。
10mほど離れた所でそいつが手を振り切り、一気に間を詰めて来た。
走ったようには見えない、正に飛び込み、何という速さか!
一瞬で目の前に現れて剣が振り下ろされる。
棒でかろうじて受けるが凄い力で下ろされていく。
体がねじられるように棒が押され、力負けしそうだ・・が、どうするかと思ったとき体が自然と反応し、そのままひねって剣を流しその回転のまま相手の体の下に入る。
足は相手の重心の向こうへ、いわゆる位取りで棒の手元で相手の鳩尾を打つ!
「ぐはっ」
骨に少し当たったか、ゴキンとの音と手ごたえがあった。
そのまま体を持ち上げて投げると背中から落ちて行った。
周りからおお~っと声が上がる。
勝ったけど、今のは危なかった。 あれほど早い踏み込みは初めて見た。
そして思い出した、自分が使った技を。
今のはずっと前に・・・前世で身に着けた秘技だ、昔々の技、『流れ渦』。
全身傷だらけになりながら習得した技、あれを覚えていたのか。
放心して立ちつくしていると背中を叩かれた。
「よく勝ったな、やられたかと思ったぞ」
グロフが笑顔で言って、ダルシアスは黙って頷いている。
人物紹介
アイリス:幼い魔法使い、天才レベル
リーシャ:幼馴染
フレア:元貴族の魔法使い、パワーはあるが細かい制御は苦手
グロフ:冒険者、大柄な槍使い
レフ: 冒険者、剣士
ダルシアス:獣人の傭兵




