クリスタル・ロード 0165 怪しい模擬戦・開戦
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「さあて、殺ったるぞ~~っ」
「殺しちゃダメだろうが! 勢いで言うな」
ここは国境の平原、小高い丘が左右遠くにあり、正面は敵国(芝居だが)兵士が勢揃いで、こちらはそれを迎え撃つ体制である。
レフの雄たけびをグロフが制するが、この二人は相変わらずいいコンビだ。
今日、いつもと違ってレフは盾を持っている。
「ん、これか? 殺しちゃいかんから盾で殴ろうと思ってな、剣だとついグサッと」
殺しそうになると・・・ 相変わらず頭より体が動くタイプだ。
「俺が持たせたんだ、この方が良いだろ」
「はい、確かに」
「何だよ二人とも!」
「じゃあ、私達は向こうだから離れるね~~」
ジョーイ達は弓部隊としてやや後方からの攻撃となる。
「おう、外すなよ! しっかりな」
「「だから、当てたらダメなんだって」」
「当てたいですわ、思い切り大当たりさせたいですわ!」
これはフレアだ。
「なんだよ、お前の所属はもっと後ろだろ」
「そうだ、早く配置に付け」
「この私があんな後ろなんて、許せませんわ! 前線に出るべき人材なのに!」
「今日は芝居だから、特に!ダメなんだ、いつまでごねてるんだ」
「誰かに連れて行ってもらうか」
そこへリーシャ達がやってきた。
「あ~~ いたいた、やっぱりここに」
「フレアさん、勝手に離れるのは軍規違反ですよ、さあ戻りましょうね」
リーシャ母さんは魔法部隊の隊長なので、フレアさんとて従わねばならない。
「フレアさん、もう始まりますから早く、早く」
「うんしょ、うんしょ」
リーシャとアイリスが背中を押してフレアを連れ戻す。
「私は前線が良いのに、人材の使い方を再考すべきですわ~~!!」
「なんて往生際の悪い奴だ」
「フレアが前線だと味方が巻き込まれるだろうが・・自分をわかっていないな」
芝居でなくても前線だと問題ある人材らしい、困った人だ。
そしてトカゲ部隊は最前線、走るだけなら早いので先陣を切って突っ込み交戦はせずに敵陣を駆け抜けて盛り上げる予定となっている。
段取り通りに済むのか、偶発的衝突にならないか不安はあるが領主の判断なので仕方がない。
「さてネビィ俺達は騎馬隊だ、馬に乗れ、 トカゲ隊のすぐ後だぞ」
「はい」
段取りは文書で届いているそうだが、相手と大っぴらに打ち合わせや訓練はできないので連携がまともにできるか不安がある。
こちらの模擬戦はさんざんしたので問題ないはずだが、向こうはどうだろうか。
慣れているからと手抜きしていないだろうな。
段取り通りにできないと衝突になるやもしれない。
偶発的衝突というやつで・・・・・・
「こうなったら後方からだって大魔法を放って敵の本体を壊滅させてやりますわ!」
「勝手に攻撃してはいけませんよ、フレア」
後ろからそんな声が聞こえてきた。
こちらにも偶発?衝突を起こしそうな人がいる、なんとかしてほしい。
「戦いってのは予測してない事が起きるもんだ、ネビィ、そこをまとめるのもリーダーの務めだろ」
心を読まれたようにグロフから言われたが、顔に出ていたか?
「その通りだな、指導者はあらゆる事態に備えておくべきだ」
獣人・ダルシアスが、甲殻馬にのって隣に付く。
蹄の音が重々しい。
甲殻馬と言うのは一般的呼び方で、獣人の間では違うそうだが覚えにくい名だった。
丈夫さ、重さが取りえで、速度は馬程度でトカゲの方が早いが、体当たりに強い。
ゴーレム相手でも引けを取らないそうだ。
「来たなダルシアス、頼りにしてるぞ!」
「うむ、実戦になっても問題ない、 采配をよろしく頼む」
以前より太く重そうな棒を持ち、ドスンと地面を突く。
遠くからカ~~ン、カ~~ン と、鐘の音が響いて来る。
開戦準備の合図だ、いよいよか。
そこへひずめの音が響いて馬が掛けて来た。
「気合は入っているかみんな、実戦と思って向かって行けよ・良いな!」
これは父さんだ。
「大丈夫ですよ、副指令! そのつもりでやります、殺さない程度で」
グロフがニヤリとする。
「そうだな、ケガ程度は覚悟してもらわんと!」
獣人は棒を構えて力を込めた。
「よろしい、では皆準備せよ! ネビィ、派手に立ち回れ!!」
「はいはい」
そして開戦合図のラッパが鳴った。
先陣のトカゲ部隊が動き出し、すぐに速度を上げて土煙を巻き上げる。




