クリスタル・ロード 0163 不穏な気配
「北東の方角に災いあり」
ミミーが呪術でそんな事を言い出した。
「ほんとに? あてになる?」
「なるよっ、さんざんしごかれてるんだからっ」
むくれてしまった。
信じないわけではないけど、占いの類はどれほどあてになるかと懐疑的だ。
「杖が言うには方角だけでは不正確だって、距離や日時もわからないと」
リーシャの杖は遺跡で見つけた【意志を持つ特別製】なのだ。
その力は超文明の遺産ともいうべき強力だが不明な点もあり、調査中だ。
「それはそうだけど、いいのっ! これでも役に立つから」
どれほど役に立つか不明だし、その情報に惑わされるのもまずいと思うがそれは言わないでおこう。
ミミーだって良かれと思いしている事だろうし。
今、畑の横の地面にミミーが魔法陣のような図を描いて、占い中なのだが。
「魔法陣じゃないし、占いでもないよっ」
「呪術円陣だっけ、名前はともかくもっと正確ならいいんだけどね」
「前に渡したペンダントより正確だし探知範囲が上だよ、あれは簡易型だから」
「ところで今のは領地内程度? それとも国家レベル?」
「う~~ん、 多分国境辺りまで・・・かな」
「微妙な範囲だな、広いような狭いような・・・・」
「多分国家レベルだよ、かなり手ごたえがあったから、ホントだよ」
「うん、杖も多分国家だろうって、遠くから気配がするって言ってる」
黙って聞いていたリーシャまでそんな事を・・・
「ほら聞いた? 聞いた? そうでしょホラホラ!」
「はいはい」
しがみ付くように言われたってなあ、結局何が起こるのかわからないんだが。
しかし、それが当たっているように感じたのは数日後と、思ったより早かった。
「宣戦布告されました!」
そんな報告が領主(代行)の館に伝わってきたのである。
マジですか?!
・・・・・・・・・・・・・・・・
宣戦布告、それは戦を仕掛ける前の連絡である。
これが行われず、連絡なしの事もある・・いわゆる不意打ちだ。
布告をすれば戦の前に「待った、降参!」も有り得る。
それに「話せばわかる! 交渉に応じる!」 の場合もある。
つまり「戦にするぞ、いいのか、いいのか?」 が、布告の意味だ。
それが行われた。
だがどこから? 四大国か・・と思ったら違うらしい。
北と東の大国の間から後方に存在する小さめの国、グリーン公国。
大国ならまだしもなぜそこが・・・ うちの国の武力の噂は伝わっているはず。
「それで、領主が情報屋に調べさせたら・・・・ 妙なしきたりのある国でな」
父さんが領主の館にて皆に説明するには、確かに妙な国だ。
「ようは芝居なんだ、段取りの形式だそうでな、ただ従うのはメンツが許さんから戦って負けたから潔く従うとしたいわけだな」
「うわ~~」
などどあちこちから呆れた声が上がる。
たしかにめんどくさい国だ、もしそれを知らなかったら本気にするところだ。
「四大国はもう知ってるらしい・ 大きい所には伝えてあるが他へは伝えんと」
それもメンツなのか、まったくしょうもない国だ。
こっちにも伝えないと殲滅するところだぞ。
「あの~~ 会議中すみません、公国からの使者がお見えですが」
ドアを開けて衛士がそう言った。
・・・・・・・・・・・・
「貴国は大国の仲間入りを果たしたそうで、おめでとうございます」
開口一番そう言った。
「首都へはもうご挨拶を済ませてまして、こちらにもと思いましてな・」
大国になったから伝えに来たと、まったく食えない国だ。
「できましたら双方の被害を極力減らすようにと望んでおりますので、ぜひともお願い申し上げます」
全く勝手な事をほざいているが使者が帰った後、幹部達が言った。
「殲滅してやりたいところですが、そうもいきませんね」
「まったくだが、領主も殲滅とは言わんだろ」
自分もそう思う、あちらは「味方になるから芝居をよろしく」と言ってるのだから。
殴るわけにはいかない。
領主からの指示が来てすぐに戦の準備が始まった。
国を挙げての戦争芝居だ。
監督、脚本 国王(領主)
演出 領主代理
演出補 自分
公国との合作で、製作費はほぼ向こうもちだ。
ケガ人がなるべく出ないことを祈ろう。




