クリスタル・ロード 0160 新・強化魔法
「この杖の魔法と、この世界のとは魔法の体系が違うそうなの」
「うんうん」
今は魔法塾の練習場にてリーシャからの講義中である。
「それでね、今までそこを話し合って融合させたんだけどね、普通の魔法は自分に蓄えた魔力を使うけど、これは周りの生物の魔力を分けてもらうから・・・」
魔法の事はよく知らないし、使ったことが無いので今一つ実感がない。
塾で少し聞いた程度でしかも最近は欠席がちになっている。
「ね、聞いてる?」
リーシャに睨まれた。
「もちろん聞いてるよ、続けて」
少し機嫌悪そうにこちらを見つめるが、背筋を伸ばして真剣に見つめ返す。
「だからね、魔力が少ないとダメというんじゃなくて、使い方次第で戦力になるから単独で使うことができるんだ! 補助魔法じゃないから! わかる?」
「うんうん、なるほど~」
補助魔法じゃないとはミミーからも聞いたなと思う、対抗してるかな。
「定期的に身体に呪文を書き込まなきゃならないけど、数日おき程度で足りるから」
「書き込む? ペンで?」
「詠唱を込めるの、体にね、痛くないから大丈夫 ♪」
「はあ~~」
力を溜めておくようなことか、なるほどそれなら自分でも使えるか。
「じゃあ試そうか、実践しないとね」
塾の壁や木に小さな出っ張りを付けてあって、そこが練習場所だという。
「これを登ればいいのかな」
その程度なら魔法無しで出来るけどね。
「登るんだけど、ジャンプだけでね 手を使わず」
「ジャンプだけか・・」
まず魔法無しでやってみると、気合を込めて・・・
「よっ」
タン、タン と、勢いよく2段、3m近くまで行ったが壁から離れてしまう。
手を使わずだとバランスが悪い。
「そうなるよね~~ 、 だからこの魔法を込めるとね」
ゴニョゴニョと短めの詠唱をするが、普通の詠唱と少し違うようだ。
「いいよ、始め!」
言われて膝を曲げると力がみなぎった。
1段目を過ぎるような勢いで上がり、慌てて蹴ると2段目を超えて上がる。
もう屋根より上に体が出ている。
そこから体が落ち始めるので屋根を蹴ると木に向かって上がっていく。
体が軽いし安定している。
「おお、これは ! ・・・」
そこからさらに上へと思って蹴ると、枝なので少し揺れバランスが崩れる。
別の枝に当たりそうになって、掴んでかわしたが枝が折れた。
体が落ちていくが支える枝が無い。
5mほど下の地面へ落ちて転がった。
ケガはないが少し衝撃がある。
登るときは体が軽いが、降りるのは少し重いかな。
「まだ上がるための魔法だけだからね、ネビィなら問題ないよね? 後で降りる方も魔法を掛けられるようになるから」
「うんうん、取りあえずはバランスやジャンプ方向だな」
「それは練習しないとね」
これは身軽さを付ける魔法だな、しかも付き添いなしでできるのは良い。
ではと、練習を続ける。
それから数時間練習をしたが、さんざん落ちて転がったので服も体も汚れまくった。
「あら~、 二人ともずいぶん汚れたのね」
フレアが練習場所に来るなりそんな事を言った。
二人? リーシャは汚れていないはず・・・・ と思ったら汚れている、なぜ?
「えへ、私も同じ魔法を練習してたから、向こうで」
自分の練習に夢中で気付かなかった。
リーシャは他の事をしてるとばかり思ってた。
「だって、私も出来る方が良いと思って、一緒に行く時あるだろうしね」
そうか、補助魔法で無いから二人が同時にも別々にも使えるか。
崖を登るときはリーシャも出来る方がいいし、もっともだな。
「しょうがないわね、二人とも私が洗ってあげるからちょっと待ってね~」
え? フレアの魔法はおおざっぱだとさんざん言われたのでは・・
しかし詠唱は短く、即発動した。
「ウォッシュ・スパイラルー !!」
案の定、プールのような水量での渦巻きに二人とも飲み込まれ、さんざん掻き回されることとなって、綺麗にはなったが溺れ死ぬかと思った。
おかげでリーシャ共々(ともども)ずぶ濡れである。
「まあまあ、二人ともずぶ濡れね~ 誰がやったか察しは付くけど・・」
フレアは説教の為、リーシャは風呂で温まる為、リーシャの母さんに連れて行かれることに あ、フレアは耳を掴まれて痛そうだ。
「ネビィもお風呂に入りなさいね~~」
二人を連れて行きながらふり向いてそう言った。
確かに自分も風呂に入らないと風邪を引きそうだ。
「クション、 う~~~」




