クリスタル・ロード 0159 呪術強化
「果物を貰ったよ~」
家についてカゴに山盛りになった果物を見せると、うちの女性陣が喜んだ。
一人を除いてだが・・・
その一人は ミミー、 呪術師さんだ。
「それ、もう見たくない~~~!」
他領から来た物なので、呪いや毒が無いかを調べさせられたのだそうだ。
あの厳しい師匠の命令で、数日間そればかり。
「ここの果物の方が良い、ブドウやイチゴ貰っていい~?」
良いと言うと喜んで飛びついている。
他の人達は少し珍しいのでもらった果物を分けている。
「あ、これ甘~い」
「これ少し酸っぱいけど、さわやか」
「これ、フワフワ、柔らかーーい!」
おおむね好評だ、これからこの果物が入って来るんだろう。
ここはいずれ王都のように栄え、賑やかになる。
「あ、ネビィ 私きっとネビィの戦闘力をアップさせられるよ」
ブドウをほおばりながらミミィが、そんなことを言い出した。
「呪術の応用でね~ 師匠にも確認したから多分大丈夫!」
「え、本当に?」
戦力アップはありがたいけど、子供の体だとなおさらそう思うが。
「え? それ私も!」
今度はリーシャが反応した。
「私も魔術で強化できると思う、空を飛ぶのだって!」
「こらリーシャ、それはまだ早いって言ったでしょう!!」
リーシャ母さん(魔術の先生)から横やりが入る。
「え~~ だって~~~っ」
「もう少し考えてからじゃないと危ないから! 跳躍補助にしておきなさい!」
「うう~っ」
もしかして、ミミーに対抗心・だろうか?
二人が強化を考えてくれるのはありがたいが、ややこしいことになりそうな予感。
他の人等は食べながら二人をちらちらと見ているが、面白がっていないか?
「ネビィ、後で試そうね! 絶対強くなるよ」
「わ、私もするから 少し時間のかかるのもあるけど・・」
そう言ってからバクバクと食べ始めた。
エネルギーを蓄えているのだろうか? 魔力には食事も大事とは聞いたが。
「戦闘力アップの魔法なら、私だって!」
今度はフレアが言い出した。
「ちょっと待て、お前は止めておけ、大雑把なのは危険だ!」
「そうだな、フレアのは他人に使うべきでない、自己責任だ!」
レフ達から止めが入る。
「何ですか二人とも、失礼ですよ 私はベテランです、大丈夫!」
「どの辺が大丈夫なんだか」
「俺達もフレアとの付き合いはベテランだよ!」
ジョーイは黙って食べ続けている。
こんな時に止めるのは二人の役目なのだろう。
・・・・・・・・・・・・・
そして準備が整った。
魔法塾練習場で、自分とミミー、リーシャ、リーシャ母、その他(見物人)
「今日は練習だから周りに色々置くけどね、実戦では身に着けるか武器に仕込んでだけど、そして戦闘結界を発動すると・・」
蜃気楼のようなものに囲まれて妙な気配があるが、これがそうなのか。
剣が軽くなったような、重いのに勝手に動くような手応えは初めてだ。
「これが斬撃強化ね、それにこうすると打撃強化、これで敏捷強化! こうだと防御強化だし」
言うたびに感じが変わり、体が軽くなったり周りが遅く感じたりと色々だ。
「全部を同時強化より、切り替える方が呪力を効率よく使えるからね!」
「へえ、これは良いな 自分で発動できるのか」
「そう、補助魔法とは違うから、単独で使用可なんだ」
リーシャがむくれたように黙って見ているが、大丈夫だろうか。
飛べる魔法かはともかく、呪術とは違う体系だろうが両方使えるのか?
リーシャの考えている方も使えなければまずい よな?
ミミーは枯れ枝を束にしたものをいくつも用意してある。
「ほらこれで、試して試して!」
仕方ない、今はこちらに集中しなければ。
敏捷強化と斬撃強化を使うとして・・・・・
「こうかな?」
フェイントを入れつつ間合いを詰めて、斬撃! 一瞬で束が切れた。
これは良いな、自分でも驚くスピードとパワーだ!!
これなら戦闘力が倍以上か?! と思って。
あ、
リーシャを見るとご機嫌斜めになっている。




