クリスタル・ロード 0158 採用試験
「檄震剣? そう言ったのか?」
「そう聞こえたが・・」
「そんな流派、あったか?」
周りがざわついているが、まあいい。
後で冗談とでも言っておけばいいか?
相手には冗談かどうかわかるはずだ、本物の剣士ならばだけど。
==== 縮歩! ====
一気に間合いが縮まり、相手と体が接するほどになる。
「ぬっ?!」
だが相手も即座に反応して隙が無いが、構わず打ち込むと棒で防いだ。
だが、ここからだ。
==== 借覇斬! ====
ゴ~~ン! と音が響く、木剣と棒が打ち鳴らされビリビリと振動する。
どちらかが折れるかと思ったが、意外に丈夫だ。
獣人が大きな体を後ずさらせて目を剥いている。
普通の相手なら転倒しただろうが、持ちこたえているのは優れた戦士の証。
「ほう、確かに子供の動きではないな・・」
ドン! と棒を地面に突いて気合を入れなおしている。
「ならば手加減はいらんな! 我も技を尽くそうぞ」
棒を斜めに突いてそこから横へ、前へと素早く滑らせた。
足払いか? 地味だけど効果的だ、ぐらつけば一発を食らうだろう。
だからこちらは構わず剣で弾き、流す、棒を折る気で。
ゴーン、ガーンとあたりに音が響き、手にびりびりと伝わる。
周りの人が顔をしかめ、耳を塞ぐのもいるがこちらはそれどころではない。
棒を地面に突いた瞬間に棒の手元を上から蹴ると片手が外れたので、剣と膝で脇におしながら踏み込んで行きそこから剣の柄で顎を狙うが、届くか?!
だが肘で弾かれた。
が、それは織り込み済みで本命はみぞおちへの頭突きだ。
相手の体勢は崩れかけているので今ならと、さらに踏み込むが気付かれたか腰をひねって躱そうとする。
腰が横を向いた状態で頭突きが・・決まる。
「グッ!」
しかしみぞおちで無いので、今一つの効果だ。
しかも横から反撃の棒が来るが・・離れるか、近づくべきか、 ?
体が、近づく方を選んだ・今度は肩での体当たりを狙い棒を避けつつ踏み込む。
すっかり懐に入ったので決まりそうだ。
==== 檄震体! ====
全身の気を爆発させて当たっていく!
「ふっ」
「オオオオオッ」
別な声がして気の塊が向かって来る、これは?! な・
ドーーーーーン と体に衝撃が来る 跳ね返された? まさか!
体が飛ばされて天と地が逆さまになって? 自分が転がっていた。
相手は棒で体を支えながらも立っている・が、前のめりで今にも倒れそうだ。
「カハッ・・く」
「それまで!!」
審判の声が響いた。
「これは・・・・引き分け・か?」
「勝者、獣人・ダルシアス !」
オオ~~~~ッ と声が上がる・・・ 負けたか。
立ち上がろうとするが、足に力が入らない。
向こうもそうらしいが、かろうじて立っている 息が絶え絶えだが。
「よし、いいだろう! 合格だ、ダルシアス・・だな? おめでとう」
父さんから声がかかる。
しかし彼は不満気な顔だ、棒で体を支えながら憮然として向き直った。
「今のは勝ったうちに入らない」
そんな事を言い出した。
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「これは採用試験で、勝敗は関係ないから・・ 実力がわかればいいんだ」
そう言われて、彼は不本意のようだが何とか受け入れた。
「仕方ない、この決着はいずれ付ける」
だから勝負じゃないと言ってるのに、敵でもないし。
「それと、事前に言っておいたが正規兵ではなく臨時扱いの傭兵だからな」
「わかっている、それでよい」
ようやく息が整い、胸を張って棒で地面をズンと突いた。
何だかグロフよりも逞しくて真面目な人が入ってきた気がする。
しかも強いけど、なんだかトラブルになりそうな予感がするのだが気のせいか?
その後、父さんが檄震剣に関して周りから聞かれて適当な事を言っていたが、聞こえないふりでさっさと帰ることにした。
だが出口近くで衛士に呼び止められ、かごに山盛りの果物を渡された。
「領主代行が新規の商人から色々貰ってな、食いきれないからってみんなに配ってるんだ、お前も持っていけ、ノルマだ!」
この街が羽振り良くなりそうで売り込みに来てるわけだな、いいみやげができた。
リーシャ達にあげよう。




