クリスタル・ロード 0152 ささやかなお祝い
そして国王は死んだと報告があった。
情報屋からなので世間一般はまだ知らないだろうが。
あの3人は火魔法で火葬にして目立たぬように埋葬した。
墓石はもちろん無い。
祝勝会を盛大にしたいところだが、領主から目立たないようにと警告を受けている。
近隣諸国への心象が悪いからだろう。
王が死んで大喜びではあからさまな反乱になってしまう。
立場上仕方なくと、示す意味もあるのだ。
自分と父さん、ジャンヌ、ジョーイとフレア、リーシャには領主から報奨金が出た。
「俺達は?」とレフが言うが「俺達は何もしてないだろ!」とグロフに睨まれた。
ジャンヌとジョーイには自分も特に感謝している。
「領主様に頼まれてしただけだから」とジャンヌは淡々としているが、あれが無ければ危うかったのだ。
「私は大変だった~~っ 、人質に当たっちゃうかと冷や冷やしたよ~~~」
「本当にお疲れさまでした、そしてありがとうございます、フレアさんとリーシャも」
「おれだって熱い胸で応援をだな・・」
「お前は黙ってろ、な、な?」 グリグリ!
「いててて」
まだやっているがほっておこう。
ささやかな宴会を自宅で準備なので色々買いこみに行く。
家から馬車を持ってきたので大荷物でも大丈夫だろう。
ヘロヘロになっているジョーイをフレアが引き連れて色々買いこんでいるので自分もリーシャと共に酒や果物、肉も選ぶ。
そこへ疲れた顔の呪術師弟子ミミーが来た。
「あ~~、ネビィだあ、なんか久しぶりだね~~~」
ジョーイのようなヘロヘロになっていて、足元が危うい。
「だってさんざん師匠にこき使われてたんだよー 疲れた、眠い、お風呂入りたい」
「帰ったらすぐ沸かしますから、今は買い物なんで」
寄りかかって来るミミーを支えながら馬車へと導く。
心なしかリーシャの目が険しいので馬車で休んでいてもらう。
師匠さんはまだ帰らないのだろうか?
「師匠は遺跡の研究に夢中だよ、私は一応手伝いが終わったから」
レフ達は肉と魚の大きなのを担いでいるが、どこで買ったのだろう。
「卸売りから直接な、知り合いがいるから安いんだ!」
「俺達に報奨は無かったが今までの給金や遺跡の宝があるから、祝勝会だし、ここは大盤振る舞いしないとな」
荷物を馬車に積み込む為に戻るとミミーは荷台で寝ている。
皆馬車に乗り込んで、買い物はほぼ終了だ。
「あとはパンとお菓子を買うから店に寄ってね」
リーシャから言われて馬車をゆっくり走らせる。
「それにしても国王が逝って後継ぎの息子達が新王になるのかね?」
「どうかな? 呪いのせいで息子達も体調悪いだろうし怯えてるんじゃないか? あの屈強で悪辣な王さえやられたんだ、皆逃げてもおかしくないだろ」
「そうですねえ、今、後を継いでも自殺行為ですよ、 貴族は損得が第一で次がプライドですから逃げる方が有り得ますね」
フレアが長い髪を指に巻き付けながら考え深げだ。
「だけどよ他国に助けを求めるんじゃないのか? 今までの付き合いがあるよな?」
「他国の王もただではやりませんよ、それなりの得が無いと・・ あの息子達ではそ
れほどの外交力も実績もありませんから、無理でしょうね」
厳しい見方ではあるが、正しい判断だろうな。
現王が頑張りすぎた、息子達をもっと鍛えていれば繋いで行けたと思うが。
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家でのささやかな祝勝会に、いつものメンバーの他にジャンヌとギルド長とアイリスも招待している。
ギルド長はアイリスとジャンヌのエスコート役だ。
アイリスが来たのでリーシャが大喜びで迎える。
ジョーイがジャンヌを席に導き隣に陣取っている。
ちなみに会場は屋外、畑の脇のテーブルだが焼肉の煙があるのでこの方が良い。
ギルド長はグロフ達がジョッキ酒を出して接待をしている。
父さんは領主と色々話があると遅くなるそうなので、先に始めることになった。
母さんはリーシャ母さんと何やら盛り上がっている。
二人、酒やシチューで話が進んでいるので父さんは忘れられているがまあいいか。
「なーに、またジュースなんて飲んでるの? ワインぐらい飲みなさい! もう大人でしょホラホラ」
フレアがほろ酔いになって寄って来る・・ワインの瓶とグラスを持って。
「リーシャでさえ飲んでるのよ、男の子が飲めなくてどうするの?」
またリーシャ飲んでるのか、アイリスに飲ませてないだろうな? あの家は大酒飲みだからな~ いかんな~。
「ほら飲んで、さあ一杯!」
絡み酒だな、まあいいけどね・・・・
「はいはい、少しぐらいは飲めますよ」
「よーし、今夜は飲み明かすぞ~~ 覚悟しろよ~~っ!」
そんなに飲む気なのかい、 なんか荒れてないか?
「フレアさん、王家の事ですが今後どうなると思います? ここだけの話で」
そう聞くとフレアの表情がピクリと変わった。
「そう・・ね、息子達は注ぐのは無理だし、実質の王はうちの領主になったしで、そうなるとメンツを保ちつつ王位を譲る事になるでしょうね」
王位を譲る? そんなことがあるのだろうか?
自分は政治的駆け引きや外交が苦手なので、よくわからないが有り得るのか?
「あの王には側室の娘がいたはずね、まだ幼いかな? それはともかく・・・」
娘が? それは知らなかったが、娘を王に・・じゃないか。
「その子とうちの領主をくっつけてしまえば! OK」
は?




