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クリスタル・ロード ~失われない大国の王を目指して~ 【22000PVを感謝します】  作者: 前田  裕也
2 目覚めの章

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クリスタル・ロード 0148  大男二人の対戦

パイソンというでかい男は太い棍棒を片手で握る。


かなり重そうで、先の方は金具が打ち付けられ、なまじな剣は折ってしまいそうだ。

グロフの槍も太い方だが、まともに打ち合うのはまずいだろう。


パイソンもそう思うのか、ニヤニヤと見つめて軽く棒を振る。

折ると言わんばかりの態度だ。


「さあ来いよ、遠慮はいらんぞ~~」

重いはずの棍棒を楽々振り回し、ブンブンと音が辺りに響く。

観客からおおお~と、ざわつくように声が上がる。


しかしグロフは動じない、落ち着いて相手を見ている。

並みの兵士ならあれだけで気押されるところだが、彼は鍛えられているのだ。  


振り回される棒の隙間を狙うかのように槍を突き出し始める。

それは早く、相手の一振りに付き三度、四度と突いて牽制をしている。


相手が踏み込んでくるとそれをかわすように回り込み、槍を振るう。

パイソンの顔の際まで槍が迫る、が、向こうも際どく避けた。


そして棍棒が振り下ろされるが空を切って地面を打つ。

ドーンと、地響きが観客まで伝わった。

皆、迫力で硬直している。


「いいぞ~~! 迫力~~~! 二人ともやれやれ~~~っ」

ジョーイのお気楽な声援が上がると観客もまた騒ぎ、ドンドンと太鼓がやかましい。


「ふ~~ん、 思ったより手ごたえがあるな?」   

パイソンが少し緊張した顔で言うと手を止めた。


「ふっ そっちもまあまあだな? 振り回すだけの奴ではなさそうだ」


次の瞬間、パイソンは一気に踏み込み上段から振ってきた、速い!

だが一瞬グロフは槍を横から振り棍棒を打った。

棍棒はわずかにそれて地面を叩き、グロフに当たらない。


が、そこから横に振りつつ突いて来て、足を狙っている。


グロフは軽く飛び上がり体をひねって槍を振り出し、首を狙う。

が、パイソンは左手で槍を弾く。

手甲を付けているので切れはしないようだ。


またも観客から溜息のような歓声が上がる。   

これは接戦になりそうだ。

二人とも大柄な割には動きが速いし正確だ。


見てる方さえハラハラしてくる。


当人達はかなり真剣になってきているが、周りはお祭り騒ぎなのが実に痛い。

また賭けが始まっているのでなおさらだ。


今度はグロフが先に仕掛けた。

足を狙って突きと斬りつけの連続で、相手は棍棒で応戦するが重いので振りが遅い。

遅れがちで足が徐々に危うくなり、靴が切れた。


「ぐっ」

顔をしかめて下がるとそこから血がにじんでいる。  

また「おお~っ」と声が上がるが、パイソンは睨むようだ。


「小細工か? つまらんことをしやがる」


「そうか? なかなか痛そうだがな?」

グロフは平然と言う。

そして睨み合った。


「しょうがねえ、本気でやるか・・・ 死にたくなきゃ逃げろよ」

ゆっくりと息を吐いた後、体が大きくなった気がして気配が変わった。

これは、ハッタリでないようだ。


次の瞬間、棍棒がブレた。

手がぼやけるほどの速さで振るわれ、地面が揺れる。  

土埃がそこら中に上がるほど地面を打ち、削り、凄い速さで攻撃される。


今までの数倍の速度だ。

客たちのほとんどには見えないだろう。

これは上級者の戦いで、既に領域が違うのだから。


二人の姿もぼやけてきている。


皆あっけに取られて騒ぐのを忘れている。

ジョーイさえもが酒を持って固まって見ているだけだ。


レフもだいぶ腕を上げたが、グロフも数ヶ月でかなり上げている。

特に速さと正確さが付いている。

以前なら負けていただろう相手だ。   


接戦が続いているが、これはどちらに傾くだろうか?


しかしなかなか決まらない。


と、地面が荒れてきているのに気付いた。

棍棒が当たっているせいかと思ったが、・・・あれは槍の跡なのか?

グロフの槍が勢い余って、では無いか?


パイソンの足元が怪しくなってきた。

足を取られているか、踏み込みが伸びず、体が流れていく。


そして、甘くなった一瞬グロフが突きを放って喉元へ迫る。

踏み込みは十分、そして決まる?!


だが、槍の先は砕け散った。   


棍棒に打たれ、穂先も飛んでいく。


歓声が上がり、太鼓や鐘の音が辺りに響く。

これは・・・・・・パイソンの勝ち・・・・のように見える。


だが、今のは、     寸止めだ!

止めなければあいつは喉を刺され、死んでいた。


棍棒を当てるのが一瞬遅かった、が、ほとんどの人には見えなかっただろう。

これは、 どうなるか?


審判役?は、いるのか? 

「え~~~っと、今のはパイソンで? 」

戸惑いつつ言っていると、ギルド長が苦笑しながら出て来た。

やはりあの人には見えたようだ。


「あ~~、今のはだな・・・」

説明しようとするとそこに兵士が走って来る。



「敵襲だ!!」

兵士が全員に聞こえるように叫び、場が硬直した。




新連載始めました。

「異界の刀鍛冶 ~1日5分だけ最強勇者!!~ 」  です

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