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クリスタル・ロード ~失われない大国の王を目指して~ 【22000PVを感謝します】  作者: 前田  裕也
2 目覚めの章

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146/200

クリスタル・ロード 0146  またお祭り騒ぎだ

今は大変な状況である。


領地と領主が国王に狙われ、隣町の領主はその一端で死んだ。

今度は国王が死にかけてうちの領主も狙われている。

場合によっては戦になるのだ。


そうなるとこちらは強力兵器を出さざるを得ない。

他の貴族達がどう動くかわからないが、勝ったとしてもかなりの死人が出る。


それに内乱で国力が落ちれば他国が攻めてくることも有り得る。

ますます犠牲が出るだろう、そんな状況なのだ。


それなのにどうだ? これは何だ?!


今、自分の眼前ではお祭り騒ぎが起きている。  


賭けだの弁当の売り子だのの声が響いて、酒を飲んでいるのもかなりの数だ。

皆ここの状況をわかっているのか?

戦の直前なんだぞ!!


「な~~に 難しい顔してんの? あ、緊張してる? クスクス」

ジョーイが、にやけながら隣に座るが、酒臭い。

手にはジョッキがあり、膝の上にはおつまみの皿が乗っている。


この人もか、抑えようとするが溜息が出てしまう。


反対の隣にフレアが座るが、こちらは大きな皿に食べ物を山ほど抱えている。

「一杯買ったよ、食べましょう はい、あ~~~ん」

フォークに刺したエビを差し出してくる・・・ これを食べろと?   


さっきからお菓子の山を抱えたリーシャが前で睨んでるんですが。


「お、ずいぶん買ったな、俺にもくれ ほれ子供にはジュースがあるぞ」

レフとグロフがやって来て助かった。

「こっちはウインナーとハム、チーズだ、 いい品だぞ!」

リーシャを座らせてその両側に二人が陣取る。


わざとなのか知らないがいい配置だ。

リーシャを抑えておいてくれ。


前に置かれたお菓子を真っ先につまんで口に入れる。

大きいので噛むのに時間がかかるほどだ。

隣でフレアが「あ!」と言うが、聞こえないふりをしておく。  


つまみを咥えたジョーイがニヤニヤと二人の顔を見つめる。

 

グロフは涼しい顔でハムを咥えてビールを飲んでいる。

レフは色々手を出して混ぜるように食べているが、あれで美味いのだろうか?

味は気にしないタイプなのか?


「それじゃー いいか~~~!! 皆そろそろはじめるぞ~~~」


ギルド長の大声が裏庭に響き、会場が熱気に溢れ皆が集中している。

どこから持って来たのか太鼓や鐘が鳴らされる。

前にも見た光景だが、どこだったっけ?


なぜこの街はこうなんだ、緊張感が無いのか・・・・・ ?


「それでは~~ 一回戦を始めま~~す、対戦者は~」  

あれはギルド受付の小さい方の人だ。

 

いつものように笑顔で、おっとりほのぼのとした声が響く。

観客の3分の1ほどが緩んだ顔で見つめている。

あれはファンの人達らしい。


名前が告げられると「お、俺か!」と、レフが立ち上がった。

一回戦からとはせわしないが、食べたばかりだし酒が入っているのに大丈夫か?

しかも残ったビールを飲み干しているし。


「よっしゃ、行くか~~!」

剣を抜いて担ぎ前へ出ていくと歓声が上がる。

「絶対勝て~~~~!!」  

隣でジョーイが叫んで実を乗り出しているが、こっちも酒を飲んでいる。


相手は誰だろうとそちらを見ようとすると、フレアの持ったエビを口に入れられた。

まだ持っていたのか?!

しかもグイグイと口に押込んで来る。


対戦相手が見えないので伸び上がるとフレアに頭を抑えられた。

「ちゃんと噛まないとダメよ、ほら」

くっつくように体を寄せてくるので、リーシャがお菓子を持って見ている。


二人とも試合が始まるのにどこを見ているんだ。

急いでエビを噛んで飲み込もうとするが、お菓子を持ってリーシャが迫っている。

グロフは構わず試合を見ているようだが、なんとかしてくれよ。  



カ~~ンと鐘が鳴らされて、試合が始まった。

二人のせいでよく見えないが咀嚼(そしゃく)しながら身を伸ばす。


レフの相手は細身の長身で、鞭の先に刃物を付けたような武器で、初めて見た。


器用に振り回しながらリーチの長い攻撃をしてくる。


手足が長い分なおさら有利のように見える。




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