クリスタル・ロード 0145 ギルド・トーナメント
自分の剣を持ってギルドの裏へ向かう。
ぞろぞろ大勢が向かうが仕事が無く暇を持て余していたのか、皆気合が入っている。
剣を振り回して仲間に窘められているのも数人見える。
ギルドの裏は練習場があり広く数十人が同時に使えるほどで、日頃から使っている人さえいて常に誰かがいるが、今日は満員となった。
報酬が出るのだから当然だ。
かくいう自分もしばらく剣を振っていないので、気合が入る。
誰とやろうか? レフ達もいいけどたまには違う人とする方が上達すると思う。
彼らもそう思っているようで、全体を値踏みするように見つめている。
あそこのでかい人か、それとも細身で早そうなあの男か?
変わった武器を持っているのがいるな、三叉の短めの双剣とは面白い。
あれにしようかと思って近づこうとすると・・
「あ~~~っ てめえ、見つけたぞ!」
と、嫌な声が聞こえた。
振り向くと、やはりあのレックスだ。
なんでこいつが出てくるのか? 剣を2度折ってやったのに懲りない奴だ。
「ちょうどいい、勝負だ! 戦え、今度は正々堂々だぞ!」
こいつは何を言っているのか?!
前のは正々堂々では無いとでも言う気か? こいつの頭はどうなっているのだ。
誰かこいつを領外へ捨ててきてくれ。
「お前からの謝罪の剣は受け取ってやったぞ、安物だが許してやる、だから勝負だ」
この野郎は・・・ あれは割といい剣なんだぞ、お前にはもったいないほどの。
全くこいつは身の程知らずな奴だ。
かわいそうかと思って贈ってやったのにあの言いぐさとは・・・
このバカは死なないとダメなのだろうか?
今度はあいつを真っ二つにしてやろうかと踏み出す。
「おい! ちょっと待ちな!」
他から声が掛けられた。
「なかなか強いガキってのはお前か、”歩く凶器” の息子だってな、面白い!
レックスは俺の弟分だから、代わりに躾けてやるぞ!」
「おい、何だよ、やるのは俺だぞ邪魔すんなよ!」
「お前はあっさりやられたろ? だから俺様がやってやるさ よく見てろ!」
棍棒を持った逞しいスキンヘッドが鋭く見つめてくる」
こいつはレックスよりだいぶ強いのが気配でわかる。
あいつと戦うよりずっといいな、よ~し、やろうじゃないか!!
「待ちなよ!」
また止められた、 今度は誰だと思ったらグロフだった。
「子供相手にでかいのが出てくるとは・・大人気無いな!」
「全くだな、俺もいるぞ」
今度はレフだ。
「俺達はネビィの家に雇われているからな、代わりにやるぞ」
「ああ? お前らかよ つまらんな」
「なら俺達も入るぞ、勝ち抜き戦だ!」
「そうだそうだ、自分もやるぞ」
他の人達まで言い出した、知らない人等だが皆力が有り余っているらしい。
「誰かトーナメント表作れよ!、参加者は集まれ、受付は誰だ?」
「では、私が受付を!」
ジャンヌさんが記録ボードを持ってきている。
「ほほう、トーナメントか、面白い! わしもやるかな?」
ギルド長までそんなことを言い出した。
仕事をしないでいいのかね? 知りませんよどうなっても。
自分もやる、自分もだとどんどん参加者が増えているが、仕方ないその一人に入る。
いつ自分の順が回って来るのかわからないが、それまで試合を見ていよう。
そう思っていたら今度は賭けまで始まって誰が勝つかの予想となった。
皆色々勝手な事を言っているが、さっきの男の名が何度か出ている。
後は自分とグロフなど数人だ。
レフは・・・大穴扱いか? もしかしたらと言われ彼はむくれている。
魔法の試合は無いのかと思っていたら、フレアや先生(リーシャ母)が始めたか?
別なグループで参加者を募っている。
裏庭は徐々に二分されてきた。
う~~~ん あちらの試合が気になりだした。
リーシャも出るのだろうか?
先生が付いているだろうから危険は無いと思うが、大丈夫かな?
だんだん騒がしくなってくると、今度は売店の準備まで始まった。
何かだいぶ前に見た光景だが、どうしてこの街はこうなんだ!
お祭り騒ぎか?!
でも今のうちに食べておくかとパンとソーセージを買っておく・・・多めに。
「おお、美味そうだな、俺にもくれよ!」
レフが寄ってきた、こうなると思って多めにしておいたのだ。
グロフは肉と酒を持ってやってきた。
リーシャ達は庭の反対側で食べている。
あちらは魔法のトーナメント準備だ。
「よっしゃ~~~、 皆準備はできたか? じゃあ始めるぞ!」
ギルド長が怒鳴るように号令をかけると、一瞬静かになってから叫んだ。
「「「「よっしゃ~~~」」」
「やるぞ~~」
「優勝~~~~~!!」
「「「「「「おお~~~っ」」」」」
皆で拳や剣を突き上げた。




