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クリスタル・ロード ~失われない大国の王を目指して~ 【22000PVを感謝します】  作者: 前田  裕也
2 目覚めの章

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クリスタル・ロード 0140  呪い返し

呪術士のグラナダさんから、もっと離れろと合図が来た。


何だろう、敵兵だろうかと思いつつ小走りで向かう。


「来るよ!」

小さな声であの人が言った。


紫の炎が城の直前で広がったように見えて、そこから戻り出し速度を上げた。

「やはりね、呪詛返しだ!」


炎が横にどんどんと広がりながら向かって来る。

炎が家を超えるとき、燃え上がっている家もある・・ 火事のようだが?

これが呪い返しの被害なのか。


しかし普通の火災とは違う様で、実際に燃えてはいないのか?    


炎が最初の位置まで来たとき更に広がって、風が吹きつけて来たが冷やりとして鳥肌が立ち、さらに嫌な気配が伝わった。

湿り気が有るような、沼の近くにいるような匂いまでする。


皆イヤーな顔をする。

自分もだ、これが呪い返しか・・離れているので実害は無いが気分が悪い。


「来たね、だけどこれからだよ、返しを受けて次の呪詛が発動する!」


次の? だから魔石を2つづつ置いたのか?

また炎が上がったが、今度はさらに大きく暗めの青緑で渦巻いている。


が、大きくなっただけで動かない・・・ ?


「ん? おかしいね」   

グラナダが渋い顔で見ているが、まだそのままだ。

予定では城に向かって移動するはずだが。


「おい、囲まれてるぞ!」

レフが叫び、グロフやジャンヌが反応して外側を見ると、黒衣の者達がいた。

いつの間にか近くまで来ている。

気配を感じなかったのは、向こうも隠蔽術を使ったからか。


人数は向こうが多い・・・。

しかもこれだけとは限らないか?


黒衣達の中に少し大柄なのがいて、近づいて来るのが見えた。


「よ・う・こ・そ 、呪いの罠の中へ・・・ 待っていたよ、よく味わってくれ」


そう言って片手を上げるとその後ろから戸板が運ばれてきた。

戸板? 乗っているのは何だ? 暗いがよく見ると人のようだ。

一方が上げられ、戸板を立たせると・・人が(はりつけ)になっているのか!


「君らをもてなすための肉だよ、晩餐会の始まりだ!」


戸板は一枚では無かった、その後ろに数枚があるのが闇の中に見えた。


「生贄かい、まったくえげつない事を!」

グラナダが老いた顔に、更に皺を浮かべて言った。


「では私は退席するがね、ゆっくりして言ってくれ、それではな」


大仰に手を振りつつ離れて行くあのしぐさは・・  国王か?!

何度か見た事がある・ 顔は見えなかったがそうだ!    



戸板から黒々とした煙が上がり始める。

これも呪い返しなのか?  先ほどより嫌な気配と匂いが伝わり気分が悪い。

黒衣達は戸板を立てたまま離れて行くと、煙が迫って来る。


「生贄で効果を上げるとはやはりあの王は、いけ好かないね」


「どうします? 強引に突破しますか?」

グロフが槍を構えるが・・相手は呪いなのだ、どうやって?


「やれやれ、これは使いたくなかったがしょうがないね・・ 少し待ちな」

懐からアイテム?を取り出し周りに並べていく、6個だろうか?


「一つ幾らするやら、希少品だよ、もったいないね~」

などと言う間に煙に囲まれて、ますます匂いがひどく気分が悪い。   

吐き気がしてきた。


「呪詛神へ奉納いたす、お受け取りとお聞き届けを願い候、 発っ」


すると全身がけば立つような悪寒が広がり、先ほどの動かなかった炎が震え、たけり狂う様に渦を巻きつつ煙を吸い込み、城へと進み始めた。

同時に戸板が黒くなって消し炭のように崩れていく。


これは呪詛返しが破れたのだろう、素人にもそれはわかった。


勝ったつもりでいた国王は今どうなっているだろう?

そして黒衣の者達は? 姿が見えなくなったが・・・・・・。


「みんな、引き上げるよ、急ぎな!」


呪詛の余波を受けてか、皆顔色が悪く足がふらつきリーシャはと見ると口を抑え、何とか耐えているようなので、体を支えて歩調を合わせた。

リーシャの母さんも反対側で支える。


フレアは両手で口をおさえ、グロフに背中を押されて走っている。

「みんな遅れるなよ、もう少しだ・走れ!」


街の外まで離れる頃、かなり大きくなった炎が城を包むのが見えた。


グロフやジャンヌ以外は息が切れ、足がふらついている。

自分は何とか息を整えた。



「ふう、私をこんなに走らせるとは・・殺す気かい、まったく!」

あの人の指示で動いたのだが、誰のせいだろう?


追手が来るかと思ったが、誰も来なかった。  

向こうにとって予定外だったのか、呪詛返しに忙しかったのか?


「みんなお疲れさん、後は効果待ち・だね」




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