クリスタル・ロード 0014 弓兵 !?
胴体を消し飛ばされ翼だけが焼けながら落ち、羽がばらばらと舞い上がり、それも燃えながら消えていく。
おおおーっと歓声が上がり、上へと100m以上に伸びた炎の柱が広がり薄れていき、空を赤く染めていった。
「すごい!」
あの大きなのを消し飛ばすとは、Aクラス魔法?
皆、あぜんと見つめている。
振り返るとリーシャの母さんがうなだれている ・・え?
「もうだめ」
ゆっくり前へ倒れて来る。
ちょ、ちょっと 慌てて体を支えるが、重い! 失礼かと思うが重い。
力の抜けた人はこんなに重いのか。
しかしその時まだ残っている小さめの魔物の一体が、こちらに向かっているのが見えた。
皆油断したのか、すり抜けられた猪のような魔物が突進してきた。
ちょっと、今、手が離せないんですが!
まずい!
そう思ったとき、どこからか矢が飛んできてその魔物を貫き、紙一重で通り過ぎて後ろへズシンと落ち、転がって行った。
「は? 今のは・・」
ジョーイさんとは方向が違うようなと見回す・・2階の窓?、屋根?、・あ
天窓から乗り出して大きな弓を構えた・・あれはジャンヌ・ダルクさん?
あの人、受付では? ・・・・・。
カラーン・カラーンと今はゆっくり鐘が鳴っている。
非常事態の解除だそうで、残っていた魔物達は逃走中で冒険者が追いかけているが、もう小さなのしか残っていないだろう。
リーシャの母さんはギルドのソファで眠っている。
「魔力の枯渇だね、しばらく寝ていれば治るよ」
ジャンヌさんが付いていてくれて、そう言った。
「あの、さっきはありがとうございました、 おかげで2人とも助かりました」
「ああ、役に立てて良かった」
少し悲しそうに見える なぜ?
そこへ4人組がやってきた。
「ねえねえ、この人知り合い? さっきの魔法すごかったねー」
弓を背負ったジョーイが聞く。
「この人はうちのご近所さんで・・」
まだ寝ているけど。
「Aクラス魔法でしたね、このギルドにいましたっけ?」
御嬢様が言う。
「ジョーイさんの弓も凄かったですよ、あんな撃ち方初めて見ました」
「え・見てた? あれ恥ずかしいから見られたくなかったんだけど・・」
「別にいいだろ、スカートじゃないし」
レフが言う。
「そうだな、問題ない」
とグロフ。
ショートパンツですもんね。
「そ・れ・で・も・!」
顔を赤らめたジョーイが言う。
「変わっているが、良い弓だね 少し見せてもらえるかな」
そばにいたジャンヌさんがジョーイに手を差し出した。
え? はい、どうぞと弓を渡すと、しげしげと見つめてい感心しているようだ。
「機械式かな? これは強度を変えられるとか?」
「ええそう、このレバーで・・」
指さすと、なるほどとうなずいて弓を構えて弦をゆっくり引くとギリギリと音が立った。
「あ、今、[最強] のままで・・」
ジョーイが言ったが、そのままさらに引く。
「え!?・・・」
ぎりぎりとゆっくり引き続け、フルに引いたところでぴたりと止まる。
まるで彫刻のように型が決まった。
ジョーイが目を見張っている。
数秒してゆっくりと戻すと弓を返して言った。
「ありがとう、強くていい弓だ」
嬉しそうに言う。
「え、はい、どうも・・・」
ジョーイはあっけにとられている。
ジャンヌさんがギルドの仕事に戻っていくと、ジョーイが放心したようにつぶやいた。
「これ、[最強]だと男でも引ける人少ないのに・・」
「俺は無理だぞ」レフがむくれたように言う。
「自分は何とか引けるが、弓は苦手だからな」
「凄い人ですね、元,弓兵でしょうか?」
逞しい人とは思ったが、まさかあれほどとは・・・。




