クリスタル・ロード 0128 そして試射へ
「有ったか!、 よく見つけてくれた」
領主が満面の笑みである。
さっきまでの緊張した顔が、うそのようだ。
「使い方は大体わかりましたので、後は試射をすればよろしいかと」
グロフが代表して伝えた。
領主は頷きながら兵器を回り各部を食い入るように見つめている。
「うんうん、大きいし丈夫そうだし威嚇の効果はまあまあだと思う、これで威力が有れば大成功しそうだ、何とかそう願いたいね」
「今まで見つけた物からすると、問題無いと思いますよ、それに他にもありますし」
「そうです、時間があれば他の物も使えるようになります」
レフも話に加わり追加すると、領主は安心したようだ。
「問題はどこで試すか・・ですが」
「そうだねえ、遺跡を壊してはまずいし・・・ 領地の外まで運ぶかな?」
「他の領地に見られますが、問題無いですか?」
「いいさ、どうせ威嚇が必要なんだ、失敗に備えて他の武器を用意しといてくれ」
「わかりました」
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そして試射の為、領地の外へ運ぶことになりその間に別の兵器を用意の為、リーシャは護衛付きで残ることになった。
護衛にはレフやジャンヌ、フレア、クリーグ氏が入っているので大丈夫だろうが、あのレックスも運搬役でいるので何か引っかかる。
でも外でトラブルが起きた場合、遺跡の方が安全だろう。
自分は試射へと向かう・・どれほどの威力か確かめたいので。
遺跡は領地から離れているのでそこから少し運べば荒野がある。
そこまでは大型の馬車で目立たないよう運ばれる。
グロフやジョーイ達と共に、あとは領主直属の兵士が商隊に扮して向かう。
「邪魔されませんかね」
ついそう言ってしまう・・他領地の商人だの国王だのが狙っているそうだし。
「邪魔したくてもせんだろうな、向こうも威力が気になるはずだからな」
なるほどそうか、手を出す危険も考えているかな?
「威力が小さい方が問題だよな、威嚇効果が弱くなっちまう」
レフが苦笑する・・・その場合はすぐ次の武器を出さないと。
半日ほどで到着となった。
いよいよ試射だ。
使い方はグロフがしっかりメモしてあるそうだから、ここに杖が無くても問題ない。
操作は彼がやってくれる。
兵士が周りを固める中、領主が注目し準備が進む。
弓のような兵器は高台に据えられ、標的は300mほど先の枯れ木となった。
そんなに届くかと思うが、余裕が有るらしい。
グロフの指示により彼以外は岩陰に伏せて待機となった。
衝撃や破片に備えてだそうだが・・・衝撃? ここまでか? 本当だろうか?
でも領主も指示通り伏せている。
それ程の威力なら威嚇効果満点ではあるが、さてどうなるか。
「なんかワクワクするね~」
などとお気楽な声が聞こえて来た、ジョーイだ。
「し~~~~~~っ」
レフが指を口の前に立てて黙らせるが、彼もニヤけている・・全くあの人達は。
「じゃあみんな、準備いいか? やるぞ!」
グロフが緊張した顔で見回す。
「ではいいぞ! 初めてくれ! 各自待機!!」
領主から号令がかかった、自分も含め全員が頭を低く構える。
「ではいくぞ! 3、2、1、発射!!」
台のレバーをグロフが引くとガシンと鳴って、次の瞬間もっと大きな音で作動した。
体が浮きそうな振動と音で体を叩かれたようにドム!と発射音が響いた。
あたりに土煙が広がり、平たい箱が凄い勢いで飛んで行った。
風切り音が聞こえる。
そして箱が分裂し、水平に広がって行き・・・横一列となった。
鳥の群れようだが、乱れが無く見事に揃っている。
そして中心は標的に向かって、命中した。
そこに光があった。
火柱のような、と言うより太い雷のような、それが横一列で同時に落ちたようだ。
目は眩み焼き付いたような凄い光で、鼓膜が破れそうな音だ。
少ししてそのあたりから土煙がやって来る。
「頭を上げるな! まだ伏せてろ!!」
グロフが叫んで兵器の陰にすぐ伏せると、次の瞬間台風のような風がやってきた。
伏せていても髪を引っ張られ、体が浮き上がりそうな強風が体の上を吹き抜ける。
「いたたたた!」
ジョーイの声が聞こえる。
小石が飛んできて確かにこれは痛い! 結構大きな石も飛んで行き冷や汗が出る。
このでかい兵器が動き出すかと思うような強風だが、動かなかった。
当然とでもいうかのようにそれは鎮座している。
これも凄い技術のおかげなのか。
ようやく風が収まってきた。
長く感じたが1分ほどだったのだろうか、皆緊張がほぐれてきて息をついている。
ジョーイの細い体でよく飛ばなかったなと思ったら、レフが腕を掴んでいた。
「あ~ びっくりした!」
「全くだ」
「本当に! これほどとは・・・」
威嚇の効果は満天だろう、過剰とも思えるほどだし。
領主も起き上がっているが、放心しているように黙っている。
「大丈夫ですか? お怪我は?」
兵士たちが一応聞いているがケガはなさそうだ。
皆、砂にまみれているが擦り傷程度で問題ないだろう。
ややふらつきながら、領主がグロフの元へ来た。
「素晴らしい、これは凄いよ」
この人らしい軽い笑顔になった・・・ 試射は大成功だ。
問題はこの後なんだが。




