クリスタル・ロード 0107 再戦
「ワイバーン!?」
「やばいぞ、どうする?」
皆で戦えばなんとかなるだろうかと思うが、そうすべきなのか?
「仕留めますか?」
「あれの目当ては焼肉だろう、匂いにつられたせいだと思う」
グロフはさすがに冷静に判断する。
「では獲物を置いて退却しますか?」
「その方がよさそうですね、荷物をまとめましょう」
「ああもう、せっかく美味しい肉が食べられると思ったのに!」
そう言いながら焼けたエビを咥えている、早いな。
フレア達が荷を持って準備を手早く済ませ、焚火を消した。
「良し行こう、撤退だ!」
「ああ~~、お肉が~~~っ」
まだ言ってるよ、しかもカニを持ってるし。
「また捕ればいいさ、ここは獲物が多いから」
皆で藪に入り、隠れながら離れることにする。
ワイバーンに見られなければ問題ないだろうし、他の獣もそちらに気を取られている。
100m以上離れた辺りであいつは降り立った。
焚火の近くで獲物をバリバリと食う音がしている。
「もう~~~、 横取りだ~~!」
「そういうな、もとはと言えば俺達がナワバリ荒しだろうから」
「あれと戦うのはリスクが高いですね、獲物を渡して済むならその方が」
ジャンヌがあれを見つめてつぶやく、優秀な戦士の目をしている。
強いからとむやみに戦いを選ばぬ面はさすがだ。
仕方なく皆で更に離れ、ワイバーンが小さく見える程度になる。
風下なので匂いで寄ってくることも無いだろう。
「この辺まで来たらもう大丈夫じゃない? あれだけ食べたら満足でしょう?!」
「ですよね~ 今度は私達の分をとりましょうよ」
「もう少し離れてからな、念の為だ」
池からだいぶ離れてしまったが、川が有り幅が数mで魚がいそうな渓流だ。
「魚がまた捕れますね~」
「それより肉がいいよな、食べ損ねたし肉を先にしよう」
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猪や牛のような魔物の肉が十分に取れた。
風下で焚火をしているし、風魔法で匂いを上空に拡散させているそうだ。
もう寄ってこないだろう。
おかげで安心して食べることが出来た。
「ふう、食べた~~~」
「やっと満足しましたね~」
「うん、美味かった、 残った肉は持って帰ろう」
「え~~、全部食べちゃうんじゃない?」
「まあ、食べたらまた捕ればいいさ」
「そうだな、ここに宝など有るのかと思ったが、ここは食料が宝物のようだな、肉に魚に、果物、多分麦なども良く育つだろう、土壌が良いんだな?」
「水も良さそうですよ、魚が多いし、澄んでいる」
これほど良い場所は本当にめずらしい。
「そうですね、ここが領地なら豊かな国となります」
『そうだ、お前たちにはもったいない場所だ』
その時、仲間ではない男の声がした。
「「「「「「「!」」」」」」」
皆がそちらを見つめる。
木々と藪の陰から黒っぽいフードの男?達が現れた。
今度は3人で、真ん中の男はよく見ると紫の衣服だ。
みな顔はフードの陰となって見えず、相変わらず不気味ないでたちである。
「お前達が来るところではない、ここは我々にこそふさわしい」
紫のフードで両腕を下げてやや俯いたようにそのものは話した。
まるで幽鬼のような姿だ。
他の者達は胸の前で両手を合わせて黙っている。
彼らは部下なのか?
「どうする?」
レフがグロフに囁く、すぐに戦うか様子を見るかだろうが・・・
以前の事もあるから、待っても好転するとは思えないが。
「ワイバーンならともかく、これから逃げても良い事は無いな」
そうして戦いが始まった。




