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第1話  日常の崩壊1

2011年 晃京都内


 時は過ぎて都内一角。

とある学園の教室に数十人の生徒達が授業を受けている。

内の1人は眠そうな目で机に肘をついていた。


「「ふわぁ」」


視界の横に自分の髪の毛の線がボンヤリと映る。

そういえば、髪も切っていなかった。

銀色の髪が肩までかかり、美容院に行く機会を逃して

そろそろ校則違反で何か言われそうだ。


俺は神来杜(からいと)聖夜(せいや)

18歳の高校生で住んでいる。

と言っても、同じ毎日で変わらない生活だ。

周りの連中も同様、それぞれ普通に過ごしている。


教師のペースに負けじとノートに書き写す生徒。

動物のイラストを描きながらノートに書く生徒。

両腕を組んでこっちを見ている生徒。

ペンを鼻と口の間にはさむ生徒。

達筆に書いている生徒。

こっそりとスマホをいじっている生徒。

漫画を読んでいる生徒。

求人情報の本を見ている生徒。

テキストの間に恋愛小説をはさんで読む生徒。

手鏡で自分ばかり観てる生徒。


さして珍しくもない、どこにでもある光景。

たいていなら受験シーズンで切羽(せっぱ)詰まるはずでも、

自分は家の仕事を継ぐだけだから、

あまり気を高まらせることもなく今を送る。

周りもずいぶんとマイペースなのが多く、

ほんの少し先に日をまたいでゆく。


2011年12月24日


 太陽が覆われるように隠れ、曇りが見えるイヴの日。

今日はイベントの手伝いで学園にいる。

ここ昴峰学園(ぼうほうがくえん)はクリスマスに催しをする習慣があって、

一般も参加できる飲み食いや憩いの場を設けていた。

本来なら冬休み突入のはずだけど、

(おきて)とばかり準備に勤しむべくは生徒。

で、飾り付け係を受け持って手伝わされていたのだが。


「聖夜、これも持っていってくれ!」

「はい」


担任の福沢先生に指示されて飾りを運搬。

段ボール箱2つを両腕で抱えて運ぶので前が見えず、

足場だけを意識しながら進む。

今表の中庭には人が多いから裏に回って持っていく。

冬の風が入り込んで人気のない道。

すぐ校外の側をゆっくりと進んでいると、

突然、荷物が衝撃を起こし転んで尻餅をついてしまう。

前から何かがぶつかったようで、確認すると

灰色の人型が立ちふさがっていた。











「なんだ・・・これ?」


理科室の標本にあるような人体の骨だった。

何かに支えられているのではなく地上に立っている。

いや、立っているだけでなく動いていた。


「うわああああああっ!?」


思わず叫ぶ。

声で近くにいた生徒数人も気が付いたようで、

いつの間にか校内にあったのか分からない。

しかし、現れたのは目前の(むくろ)だけに限らなかった。


「何か来るぞ!?」

「ガイコツの群れだ!」


向かいからさらに4体来る。

飾り付けの物じゃなく、本物みたいな色合いだ。

あやふやで不気味な動きをしながら

引っ()き、()みつき、殴りかかってきた。

しかし、どういう訳か全てが自分に近づいてくる。

まるで地獄の亡者でも現れたのかと、

混乱寸前になるところだった。


「これを使って!」


1人の女子生徒がこちらに何かを投げつける。

折りたたみ式の銀色のナイフだ。

相手にとどくリーチの短さがおぼつかないが、

四の五の述べる猶予なんてない。

打開するため、無我夢中(むがむちゅう)で振りかざした。


「ここから出ていけェ!」


一心不乱に斬る。

骨組はバラバラになり、関節どうしが地面に落ちていく。

意外にあっさりとした(もろ)さで勢い余って重心を崩す。

前を見直すとそれらは意思が切れたように動かなくなった。

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