5話目(大人)2:おとなのじじょう
ためしに雑貨屋さんに行ってみると、まだ人の気配がする。
ガラス越しに男性の人影を認め入店してみると、知らないひとだった。
「アオ君じゃないのか・・・」
「うちのアオを知ってるんかい?」
この店を少しまかせていただけだ、と言われた。
それからアオは身体が弱くて、今病院にいる、と。
この男性が何者なのか、と言うと、アオ君の親戚らしい。
病院をたずねたいと言ってみたが、「えんりょしてくれ」とのこと。
ただ、見た目にそぐわずひとの好いらしく、電話をかけてくれた。
しばらく話をして、私の目を見て、かぶりを振る。
電話を切り、「家のもんがダメだってよ」と苦々しそうに言った。
「アオのためにこの店まだ少し続けるから、また来いな。あんた名前は?」
「アヤカです。彩るに簡単な花って字で、『彩花』」
「なんだ、『アヤ』じゃないか!」
「ん?愛称は『アヤ』ですよ」
「なるほどな、アオから聞いた。お前さんをみそめたらしい」
「へ・・・?」
「なにとぞ、よろしく!」
差し出された手を思わずにぎり返し、強めの握手。
「あの・・・夢・・・とか・・・」
「分かる分かる。家のつとめなんでぃ。そうそう口にしたらいけねぇぞ」
「私が代筆する理由は?」
「書面なり文献なり、やがて献上されて物語になる」
「・・・なんだか素敵」
「お嬢さんは悪夢担当はしねぇから、ぞんぶん普通の状態でいてくれ」
やっぱり大人の事情で、夢のことを書いてもらいたいけど口にはしてくれるな、って。