29話目 貝のカラ
3月6日
レオンハルトの人々の生計は「絵」らしい。
ひと昔前は老人が若者に描き方から売り方まで教えてくれていた。
なにかの手違えでいざこざになり、青年たちが老人たちを殺めてしまった・・・。
・・・海は碧く広く美しく、さざ波に耳を傾けると「バカヤロー」と叫びたくなった。
と言っても、裸足だったら痛いだろうなと思える程、うじゃうじゃと浜に白い貝。
今回はアオ君が「少しだったら」と手伝ってくれるらしい。
「デートもかねて」と、少し嬉しそうなアオ君。
麻袋に手ですくった貝殻を入れる・・・それだけ。
すぐに袋いっぱいになり、レオンハルトに光の扉を使って移動。
そのあと貝を焼いて冷まし、砕いて粉にする。
その粉にする作業も手伝ってみて、
「骨が折れるな」とぼやくと、
「早く休むんだ。ここは我我が作業しますから」と言われた。
・・・どうやらレオンハルトの人々には、
「難儀:なんぎ」みたいな私の言い方が噛み合ったらしい。
案外とおひよよしな人達か、私を少し受け入れてくれてきているのか。
残りの時間をアオ君とセールとレオンハルトの女子たちの雑談に使った。
普段見かけなかったのは、どうやら女子は絵の練習をしていたらしい。
「絵の描き方を教えてもらいたかったら、風習通り『夜の営み』をしてもらうぞ」
老人たちにそう言われて、女子たちが男子たちに泣きながら相談したら殺し合い。
(ここでは老人って50歳くらいらしい。寿命も60くらいだって)
薬草園の薬草が枯れたのは、老人達の味方をした青年派閥のしわざ。
その者たちは結局、私がこちらに来る前に刑に処されたらしい。
「だから『あいつら』の血を引いている子達は、のけものにされているのよ・・・」
と、女子がぽつりとつぶやいた。
あの砂漠との境界線に住んでいる子供たちは、
産んだ女子たちからしたらしてもレオンハルトでは『犯人の子供』らしい。
泣きはじめた私の右手をそっとにぎってくれたアオ君は、指から指輪を抜いた。
目覚めても、あの老人達の血を引く無邪気な子供達の笑顔がよぎって涙が出ていた。




