叔母上の介抱
■天文12年(1543)1月15日
甲斐国 山梨郡 躑躅ヶ崎館 三郎私室
「あぅあう?〜(どうする?)」
「あーい…(知らなーい…)」
「うーあっ…あぅゔ(おいおい…何でやねん)」
「頼重様…」
戦国時代に転生?されてから数日が経ったわけですが目の前で少女が泣いています…。
どうしたら良いのでしょうが全国の皆さん。良い案はありませんかな?お便りお待ちしております。宛先は甲斐国の躑躅ヶ崎館へ送ってください。
さてさて冗談はともかく泣いている少女は亡くなった人の名前を呼んでます。その名前は諏訪頼重。
信濃の四大将の一人で名門の諏訪家の当主だった人物で俺の目の前には少女と亡くなった諏訪頼重との子供である寅王こと後の千代宮丸が木で出来た木馬につかまり立ちをして俺の問いに答える。いや答えたのかわからないが、返事をしてくれたのだろう。だって鑑定で言葉を見たが「知らなーい」と訳されている。寅王くん…君のお母さん泣いているよ?いいの?俺も心配なわけよ。仮にも自分の親戚の叔母さんだからね。歳は若いけど。
寅王は木馬にまたがりながらユラユラと動かし遊び始める。
……。
…………。
こやつ大物になるかもしれない…。いやなるなw
というか、どうしたらいいんだ?
現代では母さん、婆ちゃん、姉以外に女性と話した事すら無いし当然付き合ったことも無い俺にどう対応すればいいのかわかるはずもない。一番の身内である兄であり俺の父上である晴信さんは色々と忙しいし、夫の頼重さんは生まれる前に死んでるし、子供の寅王は遊んでるというか子供だから無理だろうし、約2年の結婚生活で夫が亡くなるのは例え政略結婚で結婚させられてもこんなに悲しんでいるということは、もしかしたら政略結婚ではあったが両人とも好きになったのだろう。
頼れる人が居ないです。仕方がない、やってみるだけやってみますか!
「あっうっ!(必殺!)」
ゴロゴロ…
ゴロゴロゴロ…
ゴロゴロゴロゴロ…
叔母上のところまで寝返りをしながら辿り着く。
「頼重様……頼重様…」
離れてみていても分かったが近くに来るとかなり精神的に弱っている感じですねコレは。
「あぉう?(大丈夫?)」
「より…しげ……さぁまぁぁ…」
あらら、叔母上の目元から涙が溢れてくる。
ヤベェ…、更に少女を泣かしてしまった。幼子にして…女の子を泣かすなんて…。俺って罪だぜ…
あー、どうしたらいいんだ。
「あぅ〜(楽し〜)」
いやいや、寅王くん楽し〜じゃ無いよ!どうにかしてよ!
「うあ〜あう…あっ(無理〜無理…わっ)」
うん頼りにならんな。仕方がないどうにかして泣き止ませないとな。
「あぅあぅ(叔母上〜)」
叔母上に変化は無し。
「あ〜あぅ〜(お姉さん〜)」
少しピクッと動いたがそれ以上は変化は無い。
少し嘘を言ってみるか…
「あっ…あぅう…うぁあぅ〜あ。あぅゔ?あーっうぁああっうううあだぁあだう(俺…はよ…頼重の生まれ変わりだ。いつまで泣いている?可愛い顔が台無しだぜ)」
ガバッ!
おっと、びっくりした。いきなり抱きついてきた!
頼重の生まれ変わりと言った瞬間、禰々が勢いよく三郎を抱き上げ抱きしめる。
「こんなに……近くに頼重様が…。私、禰々は嬉しいです。今まで気づかなかったなんて、戦続きでどうにかなっていたんですね私。しっかりしないとだめですね。すいません頼重様…」
叔母上ってエスパーかなんですか?冗談のつもりで言ってみたのだが…。なんか通じているし、メチャクチャ喋るじゃん。怖っ!
えっと…生まれ変わりどころか余り諏訪頼重って知らないんだよね。だってさ、武田信玄の信濃攻略の前座みたいな武将だよ?あぁ、もし好きな人がいたらごめんね。それと子孫の方すいません。謝っておきます。すいません。
「あぅあ…あぅうあ(鑑定 亡くなった人物)」
・諏訪頼重すわよりしげーー
1516〜1542年 8月31日
【諏訪氏19代当主。信濃四大将の1人。上原城城主。諏訪大社大祝。武田勝頼の外祖父でもある。1530年に父の頼高が亡くなり祖父である頼満から後継に指名される。隣国の甲斐、武田氏とは頼満・頼高の頃に敵対していたが1535年に和睦、1540年には武田氏の当主である武田信虎の三女・禰々を娶る。2年後には嫡男の寅王が生まれる。1541年に信虎と信濃四大将の1人、村上義清と連携して小県郡に侵攻、治めていた海野棟綱を隣国の上野国に追放した。晴信(信玄)がその年に信虎を隣国の駿河を治める今川家に追放して当主となった武田晴信は敵対していた関東管領と結んだ諏訪家を本格的に攻め信濃攻略に着手、諏訪庶流の高遠頼継ら反抗勢力と結んだ。合戦に敗れ、甲斐連行されて東光寺に幽閉され自刃した】
頼重さんの情報が出た。何というか悲惨な運命だったな。まぁ、叔父であるが江戸時代には諏訪満隣の子孫が大名となってるし武田よりは家を残したという点では賞賛すべきだろう。
「あぃ〜あぉうあ〜(そうです〜頼重ですよ〜)」
先ほどの暗い顔ではなくまるで別人のような明るい顔になっており笑顔でこちらの頬を人差し指でツンツンと押してくる。
プニプニ…
プニプニプニ…
プニプニプニプニ…
プニプニプニプニプニ…
えっと…これっていつまで続くんですか叔母上!
頬が痛いのですが意外と…。
まぁ、これで落ち込んで来月に亡くなったりはしないだろう。恐らく精神的からくる病死か自殺だろう。精神が病んでいると亡くなってしまうことが多いと聞いたことがあるからな。武田一族として身内が亡くなるのは悲しいから、少しでも長生きをさせてあげたい。
天文14年(1545)1月5日
■甲斐国 山梨郡 古府中 躑躅ヶ崎館
あっという間に2年の月日が経った。言葉も話せるようになった。この2年間、叔母の禰々さんの精神的ケアーをしながら現状を把握を出来る限りした。これで具体的な行動が立てることが出来た。
…このままでは俺は死ぬかもしれないからな…。
死んだ原因は身体弱いから夭折したのだろうか?それとも流行り病?それとも暗殺または毒殺?
まぁ悩んでても仕方がない、取り敢えず引き続き身体を鍛えることに専念しようまだ4歳だ。
それと叔母上である禰々様は忠実通りに死なないで生きている。俺が赤ちゃんなりにスキンシップをとってなんとか気持ちを取り直して元気になってくれた。やっぱり血の繋がってる家族は1人でもいた方がいいからね。
「今日も頑張っていますね三郎殿」
まだ少女のあどけない顔を残している女性が木刀を振っていた三郎の後ろにいた。
「あっ!叔母上」
三郎は慌てて手を止めてお辞儀をする
「三郎殿?叔母上ではなくお姉上と呼びなさいっていってるでしょう?」
頬を膨らませて拗ねる禰々。
「しかし、私の姉上は梅姉上(黄梅院)ですので…」
「それでもです。私が夫、頼重と死別して落ち込んでいる所を三郎殿が生まれたばかりなのに励ましてくたお陰で今があるのです。私なりに三郎殿の叔母ではなく姉上のようにしたい気持ちがわからないのですか!」
禰々が三郎の元へと擦寄る。なぜ怒る?
「い…いえ、わ…分かりたくはありませんが…。しかし事実上叔母上なので…」
「しかしではないのです。今日こそいいですね!姉上と呼んでください!」
「えっと、は…い……」
断ることも出来ないくらいの剣幕で禰々叔母上が話すので頷くしかなかった。
さて禰々叔母上…ではなく禰々姉上が来て話が逸れたが身体を鍛えて駄目だったらその時だ。
死ななければ確実に歴史はに自分の名前が残る可能性が高くなる。
自分の知識を活かして川中島の戦いで信玄の弟、副将武田典厩信繁叔父上と山本勘助を討ち死にさせないようにしなくてはならないし、長篠の戦いも武田四天王の3人を討ち死にさせないようにしなくては。
……それに俺には金色のコントローラーがある。残念ながら万能な食べ物、きびだんごがあれば向かう所敵なしなのだが…。
しかし何故コントローラーなのかは全くわからない。どう見てもこの時代の物ではなく、転生する前の時代にあった最新版のコントローラーだ。しかも他の人には見えないらしい。
確か俺は最後に歴史シミュレーションゲームをしてた記憶が最後の記憶として覚えている。
突然目が痒くなり擦っていたら画面が光出したのだ。何らかの理由で最後に手に持っていたコントローラーと一緒に転生したらしい(笑)
色は白だったけどね。
だけどこのコントローラーは手にした感覚や形は使い慣れたあのコントローラーであり、操作方法も同じであった。色以外は普通。
俺は慣れた手付きで主人公のデータを選んで閲覧してみる。
名前・【武田三郎】▶︎
所在地・【躑躅ヶ崎館】▶︎
所属・【武田家】▶︎
西暦1543年1月5日生まれ。
と表示されており自分の顔の画像もあった。因み横にある▶︎はこれを押すと説明が出る。
意外となかなかにイケメンな顔立ちの4歳児だ。よしこれで人生勝ち組かなw
このコントローラーで俺は、今俺が居るこの世界はゲーム世界、戦国シミュレーションゲームへと転生してしまったのだと気付いたから良かったもののまぁ、ゲームの世界の戦国と現実はあまり変わらないが、とにかく今は自分の身体を鍛えることに専念しよう。
感想、意見等ありましたらよろしくお願いします。