表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

山ン本怪談百物語

笑うお姉ちゃん

作者: 山ン本

夏のホラー2020で書いた短編作品をまとめております!

読んでくれたら嬉しいです!

https://ncode.syosetu.com/s8754f/


 買い物帰りの電車で体験した出来事。


 昼過ぎの静かな車内。私はスマートフォンを見ながら、今晩の献立について色々と考えていた。


 「ママっ!ママっ!」


 隣に座ってる3歳の娘が、私の服をぐいぐいと掴んでくる。


 「どうしたの?」


 娘は両足をバタバタさせながら、私の後ろにある窓を熱心に見つめている。


 「ママっ!お姉ちゃんがいる!」


 娘が意味のわからないことを言い出した。


 「ママをからかわないで。電車の外にお姉ちゃんがいるわけないでしょ?」


 「ホントだよ」


 しばらくすると…



 「うわぁ…!」


 「おいおいっ!」


 「嘘でしょ?」



 同じ車両に乗っていた数人の乗客たちが騒ぎ出した。乗客たちは、私たち親子の方をじっと見つめながら、運転室のドアを叩く者までいる。気になった私は、ゆっくりと後ろを振り返った。


 「………あっ!」


 窓の外、電車の窓に若い女性が張り付いていた。女性は娘に向かって微笑むと、小さく手を振った。娘も女性に向かって、笑顔で手を振っている。



 どちゃっ!!!



 電車がトンネルに入った瞬間、肉が叩きつけられるような音と同時に、女性の姿が消えた。電車の中が真っ暗になった。



 「ぎゃあああああああああああああああああああっ!!!」



 トンネルを抜けると、電車の窓が真っ赤に染まっていた。



 女性はとある橋から線路に向かって、飛び降り自殺を図っていたらしい。どういうわけか、女性は電車の上に落ちてしまい、滑り落ちそうになったところで力を振り絞りながら電車の窓に張り付いていたのではないか。事情聴取中に警察官たちが話してくれた。


 凄まじい速度で走り続ける電車にしがみつくなんて、普通では考えられない。女性は生きたかったのか、それとも死にたかったのか…


 「ねぇ、お姉ちゃんいたでしょ?」


 私は娘を強く抱きかかえながら、家に向かって歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] お姉ちゃん、ちゃんといましたね。すぐいなくなりましたが。小さき少女の心に傷が残らずよかったです。
[良い点] 電車の窓に張り付いて笑う女性も怖いですが、その人がトンネル内で轢死体になったら、更なる強烈なトラウマになりそうですね。 血と脂で赤く染まった車窓を想像すると、ビジュアル的にかなり来る物があ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ