一つのプレートに
僕たちは、あらかじめ決めた通りに役割を分担して、予定通りに調理を進めた。
結局、ハンバーグがメインの王道お子様ランチを僕たちは作ることにした。
今回はデザートも同時に提出なので、プリンも同時進行で作る。
プリンは浜辺さん中心で進んでいる。
今まで、お子様ランチ以外にも、というかお子様ランチ以外のたくさん料理をこのメンバーで作ってきた。
だからチームワークはばっちりだと思う。
僕は無表情でサラダに使う野菜をすごいスピードで切り刻んでいる木谷戸さんをみた。
僕も集中しないと。
よし、いつも通りの心のこもったお子様ランチを作ろう。
僕はハンバーグを握ることに神経を集めた。
いつもであれば食べてくれる人の顔を思い浮かべるんだけど。今日は顔は知らない。
だけどきっと誰かが食べる。
顔を知らない人のために料理を作るという経験は、今まであまりしたことがない。
去年の文化祭くらいだろうか。
それでもとにかく、美味しいって思ってもらえるように、そして今まで食べてくれた人たちに感謝しながら作らないと。
時間制限はあっても、もともと時間制限を意識してメニューを決めて試作を繰り返していたので、あまり時間に追われているという気持ちにはならなかった。
ハンバーグを焼き始めると、いつもの、お子様ランチにふさわしい匂いがしてきた。
「ソースも完成しました先輩」
中見さんが手袋をはめたまま、冷静にぐっどのポーズをする。
どんどんとお子様ランチを構成する料理ができていく。
今までの経験を一つのプレートに収める。
この流れが、やっぱり好きなんだな僕は。そう実感した。