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みかんたちのダンス

「なななな……完璧すぎる気がする……」


「だね〜すごかったね〜」


 牧本たちのダンスが終わると、すごい拍手が響いて、また幕が閉じた。


 僕はダンスのことはあんまりよくわからないけど、確かなことは、心を動かされたということだ。だからすごかったんだきっと。


 雑な考えだけど結構正しい気がする。


 こちらを振り返っていた未来が口を開いた。


「みかん、大丈夫かな〜」


「大丈夫だと思う……絶対にみかんはきっとみかんたちでつくったダンスをする」


 僕は、ものすごく楽しみな気持ちだった。


 失敗しないで欲しいなとかは、考えない。


 みかんたちのの全力に心を吸い込まれる用意をするだけだ。


 ホールは人の出入りも最小限で、とても静かだった。


 一人一人お客さんが座っていて、前に幕があり。


 そして、次はみかんたちがステージに上がって。


 動画でいいやと思っていた自分がどれだけ間違っていたかがよくわかる。


 あたりがだんだん暗くなっていった。


 すぐそばの未来の顔も見えなくなる。


 そして、幕が開くと、中央にみかんが立っていた。


 音楽が始まった。


 学校で練習しているのが聞こえたこともあるし、聞いたことのある曲だ。


 静かな波のようにフォーメーションが変化し、そして、だんだんと曲の雰囲気が明るくなるのに合わせて、動きが大きく、リズムにのったものになっていく。


 完璧だ。少なくとも僕は完全に自分の身体が曲のリズムにのった。


 ここからはみかんの顔は見えない。


 しかし、みかんの気持ちはみかんの動きでわかる。


 みかんだけじゃなくて、みんな一緒だ。


 間違いなく、楽しんでダンスをしている。


 たとえさっきまでちょっと嫌な雰囲気だったとしても、たとえここが競争の場であったとしても。


 そう、それでも、みかんたちが今楽しんでいるのは。

 

 みかんたちがずっと、これまで頑張ってきたからだと思う。


 ぱらぱらと手拍子が始まる。


 僕も手拍子をした。未来の手も動いていた。みんなの手が動いていた。


 前の方の席で、一人めちゃくちゃのりのりの人がいるのが影でわかった。


 ついでに誰かも影でわかってしまった。


 多分花凛だ。いつも一緒だと、影でもわかる。


 そしてその盛り上がりをずっと保って、タイミング完全ぴったりなフィニッシュ。


 みかんたちは、一瞬だけ息をはいたように見えたが、すぐに手を振って、舞台袖に消えていった。



 周りが明るくなって、人が少し動き始めたくらいに。


「いつまで固まってるの」


 未来にそうつんつんされるまで、僕は舞台を見つめ続けていた。


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