みかん⑧
「そっか~お子様ランチを頼んでる凛太といると恥ずかしくなっちゃうってことね」
「そうですわ……」
私は、コツメカワウソコーナーの近くにある海が見えるテラスで、未来と未羽とホットドッグを食べていた。風もなく落ち着く気候だけど、人は結構いる。
「私、この前お子様ランチ食べたよね! お姉ちゃん」
「未羽はそれで普通なの。みかんと一緒にいるのは、みかんと同い年の彼氏だからね、高校二年生なの」
「ふーん、そのみかんさんの彼氏って、こないだお姉ちゃんがふられた人?」
「ううううううっつ」
未来がソーセージをくわえたまま苦しそうにする。そして私は、申し訳ない気持ちや情けない気持ちが出て来るのを防ぐかのように、ホットドッグの最後の一口を食べた。
「よし、私復活。ふっかつ。おっけ……で、話戻すとね、みかんは、凛太のこと応援したいと思ってるの?」
「それは、もちろん思っていますわ……だけど、私が変にみられるのは嫌というか……」
「じゃあ、正直に、凛太にそういうといいよ。応援していることも含めて」
未来はまっすぐで素直だけど、柔軟性もある。だから、正直に言ってそして、凛太を嫌な気持ちにさせない方法を提案してくれた。
「未来の方が、凛太のそばにいるみたいですわね」
「私は振られたんだから。そんなこと言わない」
「はいですわ……」
「凛太はお子様ランチ大好きかもしれないけど、もう一つ確かなことがあってさ」
「……」
「みかんのことが相当好き」
「そう、ですわ?」
「うん。自信をもって。砂浜散歩して、さっと手をつないでからの抱き着いたりすれば完璧」
「そ、それはさすがに自信ないですわ……でもありがとうですわ」
「ううん」
「今度、また、卓球の応援しますわ。かけ声とかも前よりちゃんとやりますわ」
私は立ち上がって海風を受けながら言った。
「ほんと、ありがとう!」
未来の顔からは、苦しさはとっくに消えていた。きっと私も消えていた。