表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/95

過去⑤


 りんたが、サッカーボールを買えるとうれしそうに話していたつぎの日。


 私は、ダンスでしっぱいしたとき……ううん、ちがう、それよりもずっとあせっていた。


 みんなに、ダンスシューズをもってないこと、どうやっていいわけしよう。


 今かんがえているいいわけは、とくちゅうのダンスシューズだから、とどくのにじかんがかかる、というもの。



 でもこれだと、いつまでも、ごまかすことはできない。


 だけどこれいがい、思いつかなかったので、私はいいわけとして、これをさいようすることにした。


 

 

 私は、いきをととのえて、がっこうに入った。


 そしてじぶんのげたばこをあけた。


 え?


 私はおどろいた。


 だって、そこに、ピンクのあたらしいダンスシューズが入っていたから。あと手がみが一まい。


 手がみをよんでみた。




 みかんへ


 ダンスをがんばっているのでおくります。


 ダンスのかみより




 そっか。ダンスのかみさまがくれたのか……。


 ……そんなわけなかった。


 ダンスのかみさまは、きたない字だった。だけどやさしい字だった。


 そして、りんたの字だった。



 

 私は、さいきんのりんたとのかいわを色いろ思い出した。そして、私が、クラスのわの中にいるとき、ときどきりんたと目が合うことを思い出した。


 私は、ダンスシューズをもらって、みんなへのいいわけがひつようなくなるなんておもわなかった。


 

 私は、きょうしつへといそいだ。


 きょうしつには、ここなちゃんとダンスクラブのみんながいた。


 私がいきおいよく入ったから、みんなこっちをむいた。



「あのですわ……私、ずっとうそをついていましたわ」


 りんたからの手がみをにぎり、私はそう言った。


 私はみんなに、しょうじきにはなした。おじょうさまでないことや、ダンスきょうしつにかよえないこと、「し」が言えないことも。

 

 うそつきの私なんか、みんなあっというまにきらいになるとおもった。


 だけど、みんなゆるしてくれた。



 

「でも、みかん、おじょうさまにあってるから、しゃべり方はそのままでいいんじゃない?」


 ここなちゃんは私に言った。


「うん。わたしたち、もう、みかんのおじょうさまバージョンになじんじゃったしー」


「え? そうなのですわ?」


 

 そうして、私はみんなのやさしさにすくわれた。


 ダンスシューズは、私のたからものになった。


 そして、りんたを見ると、ダンスのほんばんまえより、むねがどきどきしてとまらなくて、あとなんかあたまがぽわ〜っとするようになった。まるで、ダンスのあとのつかれたときに、あますぎるチョコレートをたべたときのように。


 

 私はりんたへのおれいをかんがえていた。


 今は十二月のはじめ。


 バレンタインとかではないけれど。


 わたしは、りんたにチョコレートをつくることにした。


お読みいただきありがとうございます。


次話からデートの続きに戻ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ