表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/95

過去②


「ただいま〜」


「あらおかえり。楽しかった?」


 今日はママがおしごと休みの日。


 じどうかんに行かず、友だちとのやくそくもないので私はまっすぐいえにかえった。そして、一ばん言いたいことを言う。


「ねえママ! ここなちゃんといっひょにここかよいたい!」


 私はランドセルからここなちゃんからもらったチラシを取り出した。


 ママはそれを見て……一気にかおがくらくなった。


「……みかん」


「なあに……? どうひたのママ」


「通うのはちょっと無理、かも……」


 ……なんで? って言おうとして、私はだまった。


 小学二年生でもわかる。


 ここなちゃんは、中学じゅけんというもののために小二なのにじゅくに行っていて、すごくあたまがいい。


 そして大きな家にすんでいる。


 私はマンションの中の小さなへやにすんでいる。


 私は、ママのうしろからチラシをのぞきこんだ。


 一レッスン、五〇〇〇円。


 五〇〇〇円はとても高いということを私はしっていた。


 りんたがいっしょうけんめいおこづかいをためて買おうとしているサッカーボールがたしか二〇〇〇円くらい。それが……えーと、二こ買えて千円あまる。一回ならうだけでそんなに……。


「あ、ママ。別にいいのやっぱり」


 私はそう言ってとなりのじぶんの小さなへやに行った。


 


 夜。私はテレビを見ていた。


 ここなちゃんの家は、うすっぺらいのだけど、うちのはぶあつい、あと小さい。


 でも、私が一人で見るのにはこまらない。


 私はプリンキュートがきらいだ。


 そのかわりに見ているアニメは、『ジュエリーアニマル』というアニメ。


 私はそのしゅじんこうの女の子につよく、あこがれていた。おじょうさまでたくさんごうかなデザートをたべている。かわいいふくをきている。


 そして、だんすのせんぞくコーチがついていて、ダンスをれんしゅうしていて、そしてダンスでどうぶつの心をうごかし、世界をすくう。


 いいなあ……。


 私もあんなおじょうさまになりたかった。


 CMにはいり、げんじつにもどされる。


 明日ここなちゃんになんて言おう。


 ここなちゃん、わたしをばかにするかもしれない。「し」も言えなくて、ダンスきょうしつにもかよえなくて。


 CMがおわった。


 

『私、ダンスが好きですわ。世界をダンスですくいますわ』


『それでこそおじょうさまです。さあ、こちらへ』


 そうして今日もへん身して、ダンスをおどり、世界のもんだいをかいけつする。


 そしておともだちがたくさんできる。


 どうして、私よりもこのしゅじんこうはこんなにしあわせなの……?


 私はいつのまにか、このしゅじんこうに、「ずるい」と思うようになっていた。


 なみだがでてきた。へんなあたたかさのつらいなみだだった。


 


 なみだがかわいた時、私はきめた。




 私はうそをつくことにした。

 

お読みいただきありがとうございます。


100ポイントを超えました。本当にありがとうございます。作者の筆力とテーマと更新力から考えて無理だと思っていたので大変嬉しいです。


これからも読んでいただけたら嬉しいです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ