プリンを作ろう
ああ。自分がお子様ランチを食べているわけでもないのにこんなに幸せなことがあるだろうか。
僕は美味しそうに口をいっぱいにしてもぐもぐ食べている小学生たちを見る。
小学生のもぐもぐは可愛い。口の周りにちょっとついてたりするし、小さな口がスプーンをぱくっとするし、コップに口をちょんとするし。
最近は男子の間で放課後サッカーが流行っているらしく、試食に来てくれたのは全員女子。
あ、別にそこはまじで幸せな原因ではないから。
隣で何も作ってないのに幸せそうな羽有は知らないが。
で、いたのかって感じの隅でパソコンをしている稲城は幸せそうには見えない。
ちなみにこの場所。調理室の隣の小さめの第二調理室みたいなところなので他のクラスメイトはこの部屋に居ない。
もういろんな意味でガラパゴス諸島並みの孤立だ。
そして女子小学生たちとの離島でのパラダイス……。
「……ということでパラダイスだったんだね田植ちゃん!」
「そう……。しかも小学生は……率直に感想を言ってくれるから……改善点も見えて来たぞ」
「なるほど。つまりは田植先輩は。女子小学生の率直さを愛してやまないという気持ちですね」
中見さんは冷静に僕の気持ちを分析してくるな………。でも現代文の小説の記述回答みたいにすると改めて怪しさが際立つ……。
「それで、今日の活動はどうしましょう?」
浜辺さんが猫とお魚のエプロンを後ろで結びながら聞いてくる。
「そうだな……今日はデザートのプリンの試作でもしようか……」
「プリン……ぷりぷるプリン、とろけるプリン、伝説のかがやくプリンです」
伝説のかがやくプリンが何かは知らないが、阿田さんはとりあえず顔を輝かせている。プリンが好きなのかな。