封筒の中の招待券
家庭科準備室を出た僕は、可愛すぎる後輩たちと別れ、教室に向かった。
もうすぐ昼休みが終わる頃のはず。
と思っていたらちょうど予鈴が鳴って昼休みが終わった。ちなみに予鈴は一般的なチャイムの音ではなく、よくわからないメロディ。
予鈴が鳴ってから授業が始まるまでの10分間は人によって使い方が大きく違う。
大半の人は、この10分間も昼休みだと思っているが、まじめな人は次の授業の準備を始める。
僕はというと教室ではやることもない人なので、この10分間を短い昼寝に当てると決めている。
教室の自分の机につき、教科書を三冊重ね、その上に持参した子供用ランチョンマット(お子様ランチのイラストが描いてある)を被せる。
そしてそこ突っ伏して寝るわけだ。
高さ完璧。
柔らかさに乏しいが、まあ先ほどとても柔らかそうなおっぱいの活躍を見れたのでプラマイゼロとしよう。
つん。
僕の頭の中に回転寿司のごとく様々なバリエーションのお子様ランチが流れてきた時、誰かに優しく突かれた。
僕はわかる。みかんが仮に僕の教室に来ていて僕に用があったとしてもこのような起こし方はしない。つまりみかんではない。
教室で唯一まあ話すかなっていう羽有はぬいぐるみ作りに没頭していた。彼は六時間目の終わりまでおそらく立ち上がらないだろう。とすると……誰だろう?
目が覚めてしまってお子様ランチはどこかに流れてしまったので、僕は頭を上げた。おでこにランチョンマットがひっついてきたのではがす。その様子がおかしかったのか笑い声がした。
そうだ。この声は昨日めちゃくちゃ聞いたな。
「柚川か……」
「そう。名前覚えててくれてよかった。はいこれ」
柚川が封筒を渡して来た。
そういや柚川今日は水着じゃないな。制服だ。まあそうじゃないとおかしいんだけど。
開けて見ると、ダンス部の発表会の招待券だった。
「みかんがね、発表会に凛太が来ると緊張しますわとか、料理コンテストも文化祭もあるから凛太も忙しいから今回はやめておきますわとか言い始めてうだうだしてるから、もう私から渡しとくね。ちゃんと来てね」
「おお、もちろん行く……」
何が何でも行くに決まっている。
僕は招待券を改めて眺めて、それをしまってから、昼寝の続きをすべく再びお子様ランチを頭の中に流した。