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にぎにぎと半透明の袋


 ちなみにみかんが僕を凍らせたのは僕が思っていた理由とは少し違う理由だった。


 みかんは、


柔らかい→太っている


 だと思ったらしい。


 プールからの帰り道の途中、駅前でスポーツショップを見つけた途端みかんはものすごい力で僕の腕を握って引きずり出した。


 未来と柚川は助けてくれるどころかささっと「じゃあね」と言ってピピと改札の中に入って行ってしまった。


 浮き輪はこんな強い力で握られていたのか、かわいそうだったな。僕の腕も浮き輪のように細くなっている気がする。


「さて、凛太が買ってくれるということで、どのトレーニンググッズを買おうかしらですわ」


 そう言いながら握力トレーニングのにぎにぎするやつを手に取るみかん。


 多分痩せることに繋がらないしそれ以上握力強くなったら大変だからそれは戻そう。


 というかみかん太ってないんだよな。なぜそういう勘違いをした。



 

 困ったな……。しかし、勘違いを正そうとすれば先が見える。


『じゃあ、どどどどどど、どんなところが柔らかいと言ったのですわ?』


 これに正直に答えてしまうのも、また問題だろう。


 だからみかんが太ってないということをひたすら言い続けていたのだが。あんまり聞いてくれなくて疲れてしまった。




と、そこに、


「おお! みかんとたうったうこと田植じゃないか」


 たうったうネイティヴスピーカーの兄、万佐樹が現れた。


「……すごいなみかん! それ握れるなら握力五十近くあるんじゃないか?」


 みかんが握っているお試し用のにぎにぎを見て、万佐樹は驚いていた。


「万佐樹はなんか買いに来たのか……?」


「あ、今日はウエアとか色々買ったぞ。結構俺ここ来てるんだ。色々売ってるしな」


 万佐樹が袋を僕の目の高さくらいに上げてみせる。


「あそうだ」


 袋を下ろした万佐樹が言った。


「俺あれから、お子様ランチ何回も作ってさ、昨日ついに、万実音に、たうったうのとおんなじくらいおいしいって言ってもらったんだ」


「おお、……そうか、すごいな、おめでとう」


 僕は素直に万佐樹のお子様ランチの成長を喜ぶつもりで言ったのだが、なぜか万佐樹が持っている袋のような、半透明な気分になった。


 嬉しそうな万佐樹は続けた。


「そうだ。俺、出ることにしたんだ。今度ある、料理コンテスト。田植も出る予定だろ?」


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