プールには恋する紅葉
優しさが小さな手から伝わってきて、JSの手をなんとなくずっと握ってしまっていた。
その手を離すと、みかんも浮き輪から手を離した。
解放された浮き輪は小さな音を立てて元の形に戻る。
僕は立ち上がって、JSにお礼を言った。
「ありがとう。あのおねえさんも普通に戻ったからだいじょうぶだよ」
「そっか、よかった」
JSはにこっと笑って、それが可愛すぎてこっちがまた足をとられそうになった。
つまりあまりの可愛さに自分の体が柔らかくなってしまったということ。
バランスをまた崩しかけて、右におっとっととなった時。先ほどまで僕がいた位置に何か人が飛んできた。
みかんだった。
なぜか飛んできたみかんはそのままさばーんとプールに飛び込む形となった。
ピピピピピピピピピピビー!
監視員のお姉さんの笛がなる。
当然すぎる。
ていうか、心優しいJSをはじめとして、たくさん周りに小さい子がいるんだから。その人たちの手本となるような行動しないとダメじゃないかよ。
どうして飛び込んでしまった。
プールサイドにけほんけほんずるずる言いながら上がってきたみかんは叱られていた。
あーあ。
しばらく、みかんがしょぼんとしてうなずいているのを見ていると、監視員さんはこっちを向いて、
「君もだめ!」
「はい……?」
僕なんか悪いところあった? もしかして幼い女の子の手を握ったから? それとも、監視員さんの太ももいいなあって見てたから? どちらも事実だからその二つについて言われると困るな……。
「君! 彼女が抱きつこうとしているのによけちゃだめじゃない!」
「ん?」
意味がわからない……と思いきやわかってしまった。
「みかん……僕に抱きつこうと……」
みかんを見ると、しょぼんとしている顔はうつむいたままで赤くなりすぎていた。
そう、こちらもある意味紅葉。
「あ……でもよけたつもりはないです……後ろからなので気づかなかっただけです」
「言い訳しないの! 男の子はプールに来るとたくさん女の子の水着姿が見れるように適応して女の子半径二メートル以内感知センサーがつくんでしょ」
「つきませんよ……」
なぜいきなりそんなんになるんだ。ていうかそれだと混んでるプールだったら反応しっぱなしになるな。大変そう。
「とにかく! 思う存分いちゃいちゃしなさい!」
そう言って監視員さんは持ち場に戻っていった。
ちなみに、未来と柚川は、若干遠くのところにちゃぷちゃぷ入ってて、僕とみかんを楽しそうに見つめていた。