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「記念写真」事件


「挑戦ですか!」


「そう……例えば、料理コンテストに参加してみたりとか……」


「田植先輩はすでにお子様ランチに関して色々挑戦していると思うんですけど、もっと料理部に革命を起こしてくれるなら! 私は後輩としてついて行きます!」


「ついてくよ田植ちゃん!」


「ついてくよ」


「私も頑張ろうと思います」


「一生ついて行きます。 あ、でもそれだと結婚……そうすると過程を経た上で……」


「あ、ストップ阿田さん」


 その続きは良くないし、前に続きをきいたからな。


 それにしても、僕は本当に優しい後輩に囲まれているんだな……感動のあまりお子様ランチプレートいっぱいに涙を流しそう。


「ところで田植先輩!」


 浜辺さんが、僕の方を見ずに、僕のカバンを見つめたまま聞いてきた。


「なんだ……?」


「田植ちゃんこれ……」


 萌門さんの様子も変で、やはり僕のカバンに視線が行っている。


 どれどれ。カバンに汚れでもついていたのかな。


って……うああああっ!


 なんだこれ!


 僕が半開きのカバンから見えたものは……心当たりのないものだった。いや心当たりはあるがカバンに入れた覚えはない。


 しかも手を伸ばす前に木屋戸さんがそれをとってしげしげと眺めた。



 いつの間にか僕のカバンに入っていたものは、僕がみかんをお姫様だっこしている写真だった。


 犯人はお子様ランチ適年齢の子供でもわかる。


 花凛!!!


 どうして速攻で写真を印刷してカバンに勝手に入れたんだよ! ていうか放課後になるまで気づかなかった。運が悪い……。


「中見先輩、なんか付箋もくっついていますけど、なんて書いてあるんですか?」


 木屋戸さんが持っているその「記念写真」を覗き込んでいる中見さんに阿田さんが尋ねた。


「ええとね……、『お兄ちゃんへ。記念写真さっそく印刷したよ。びっくりさせようと思ってカバンに入れたよ! 花凛より』と書いてあるわね」


 僕は今日の夜ご飯を、花凛だけ特別メニューにすることに決めた。グリーンピースご飯におかずはグリーンピースだけ。


「へえ〜田植ちゃんって面白いね」


「面白くない……。それは画像加工だ。妹は小5だけど……そういうのが得意で……」


「すごいですね! お子様ランチを極める先輩の妹は、画像加工のプロでしたか!」


「そうなんだ……」


「あ、言っておくと信じてませんよ!」


「……」


 僕は転校することを視野に入れねばと感じた。


 五人の後輩たちに「記念写真」を隅々まで眺められている間、僕は調理室の大きな机で頭を抱えていることしかできなかった。


お読みいただきありがとうございます。


三章始まりました。

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