みかん③ めんどくさくなる決意をいたしましたわ
未来の友達は二人とも三回戦まで行ったが、負けてしまった。けれど、二人ともやり切った表情をしていた。
その二人の応援も終わって、帰り道。
バスの揺れに逆らうことなく一緒に揺れてぽかんとしている凛太を私は眺めていた。
なんか……変な感じ。
未来の友達の応援に来る時も、どこで会ったのか、凛太と未来は二人一緒に来た。
未来はなんか清々しい感じだったけど、凛太はいつもよりさらにぼーっとしている度合いが高かった。
これは……。
これは、二人で何か普通でないことが……!
「凛太。未来となんかお話、したのですわよね?」
私がそう言うと、凛太はつり革から手を滑らせ、そのままバランスを崩して座席に突進。そこに座っていたのは花凛だから問題ないんだけど。
「話したな……そりゃ、長い間いて……話さなかったら……変だろ」
花凛に倒れかかったまま凛太が言う。
「そうですわね……」
うーん、どうやって聞き出そう。なんかいい方法は……。私は脳を高速回転させる。もう前みたいに物理的に高速回転はしない。
「実は……未来から……告白された……」
……ん? 凛太がすごく小さくそう言ったと同時に、回って踊っていた人たちが息を合わせてぴたっと止まったかのように、私の頭の中の全てが止まった。
そして私も凛太と同じくつり革から手を滑らせ、そして座席とは反対側に倒れた。
通路に尻餅をついて、駄々をこねる子供のような体勢になってしまう。
そしてそのまま、私は凛太の言った意味を考えた。
未来は凛太のことが好きで、それを凛太に伝えたということ。
うん。未来はなんか凛太のこと意識してそうだったし、想定内ということにしよう。胸に手を当てて落ち着け私。ダンスの前にもやってるから落ち着くの簡単なはず。ふーふーはうふー。
で……凛太は……。
なんて答えたの?
バスの中でそういう話するのもあれだし、電車の中もあれだから、今日も凛太の家に遊びにいこう。
そこで私は……おもちゃが欲しいのと言って駄々をこねる子供なんかと比にならないくらい、めんどくさい人になってやるんだから!
花凛がまるで、『第二回、彼氏を問い詰める彼女編(拡大スペシャルでも足りないよ)スタート!』と言いそうなくらいに。
私はバスの通路にお尻をつけたまま、窓の外を流れる少しどんよりとした午後の街並みに向かってそう誓った。
でも……もし、凛太が未来にオッケーの返事してたら……幼馴染を問い詰める幼馴染……。
うわああ……。そんなんじゃ、やだ。
私は凛太の彼女がいい。私は凛太が大好きなの!
心の中でそんなことやその他諸々を叫んでいると、
「着いたから降りる……」
凛太がずっと尻餅をついていた私に手を伸ばして来た。
その手を握って、
「しがみつきますわ……」
と、小さくつぶやいた。
それは凛太に聞こえていたらしく、凛太は、
「バスに……しがみついていたいくらい……乗っていたいのか……」
とか言って、また変な空気読めない人になってる。
だから私は、バスから降りても凛太の手をしばらく握ってアピールをした。
だけど残念ながら、通じてなさそうだった。