表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/95

高速回転


 料理部の活動を終えて家に帰ると、なぜかみかんの靴がすでにあった。


 ダンス部の練習終わって着替えてから学校を出て……早すぎる。


 相当急いできたのかな……。


 少し不思議がって自分の靴を脱いでいると、


「お兄ちゃん! 大変! みかんと帰りに会ったから一緒に帰ってきたんだけどねー、みかんがずっと踊ってるの! どうしようお兄ちゃん」


 花凛がアイスを落とした子どものようにわたわたしてこっちに来た。


「よくあるじゃないか……ダンスでこだわりたい部分があったりすると……家でも外でも踊ってることがある」


「なんかでもいつもと違うよ! とにかくお兄ちゃん来て!」


 花凛に手を引かれ、リビングに入ると、みかんが高速回転していた。なんだどうした? 花凛の言う通り確かに変だ。


「今度のダンスは……なかなかハードだな……」


「あっ、凛太!……ああっ、あっ、目が回りますわ……」


「そうだろうな……」


 みかんはよろよろとこちらによろけてきて、僕に飛び込んできた。っていっても万実音ちゃんよりは大きいから僕は抱きつかれたような格好になってしまった。


「大丈夫か……?」


「大丈夫ですわ。これで今日最も凛太にくっついた女の子になりましたわ」


 言われてみれば、胸やお尻が……いやそれ以外も。なんだこのもっとうもれたいと一瞬思わせるような感触……。


 万実音ちゃんの時とは違って、離れようと思えば離れることができたのかもしれないが、頭がそんなことを考えることができない状態になっていた。


「はーい、カップ麺お子様ランチ味のの出来上がりだよ。そこまで」


 花凛が僕とみかんをおいしょと離した。三分もくっついてはいなかったと思うが……。


「お兄ちゃん、まあとにかくみかんの激しいダンスを止めてくれてありがとー」


「おお、止めたというか止まった……のだが」


 みかんは椅子に座って頭を抱えていた。目がものすごく回っているのか辛そうだ。


「やっぱり…目が回りすぎてるじゃないか……」


「凛太頭なでなでしてくださいですわ……」


「それでなおるとは思わないが……」

 

 今日のみかんは確かに少し変わった調子だ。


 僕がみかんの頭に手を伸ばすのと、みかんが「凛太ぁ」と振り返るのが同時だった。


 僕の手はお子様ランチのおにぎりバージョンを作るにあたっておにぎりを注意深く握る時のように、みかんのほっぺをそっと手で包んでいた。


 あ、そしてここでさっきの感触が再来した。


 みかんのほっぺの上で僕は思わず指を小さく動かしてしまった。


 花凛は結構大きめの声で、


「はーい、カップ麺お子様ランチ味特大バージョンの出来上がりだよ」


と言ったのだと思うが、僕には小さくしか聞こえなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ